ゴールドシップ産駒 弱い説は本当?G1馬と適性で解明

データ分析

こんにちは、YUKINOSUKEです。

「ゴールドシップ産駒 弱い」というキーワードで検索されたということは、きっとPOG(ペーパーオーナーゲーム)での指名や、一口馬主での出資を迷われているんじゃないでしょうか。あるいは、「G1馬は出ているのに、なぜか世間では『当たり外れが大きい』とか『弱い』って言われるんだろう?」と、そのギャップに純粋な疑問を感じているのかもしれませんね。

その気持ち、すごく分かります。確かに、POGのメイン期間である2歳戦ではなかなか勝てず、晩成型が多い印象は私も持っています。産駒全体の勝ち上がり率を見ると、キズナやエピファネイアといったリーディング上位の種牡馬たちと比べて物足りなく感じてしまいますし、ダートのレースに出てきても「これは厳しいかな…」と思ってしまうイメージも強いですよね。

一口クラブの募集馬リストを見ても、残念ながら未勝利のままキャリアを終えてしまった馬たちも目立ちます。こうした一つ一つの事実が積み重なって、「ゴールドシップ産駒はアベレージが低い=弱い」という体感的な評価に繋がっているんだと思います。

ですが、その評価は「半分は事実だけど、半分は大きな誤解」というのが私の見解です。

なぜなら、オークス(G1)を制したユーバーレーベン、父と同じ宝塚記念(G1)を勝ったメイショウタバル、そして障害G1の絶対王者マイネルグロンと、平地・障害の両方でトップクラスの馬を輩出している事実は揺るがないからです。

データを深く、正しく見ていくと、彼らは決して「弱い」のではなく、「父譲りの圧倒的なスタミナが問われる特殊な舞台でこそ輝く、極めてピーキー(極端)なスペシャリスト集団」だということが見えてきます。

この記事では、「ゴールドシップ産駒 弱い」説がなぜ広まってしまったのか、その具体的な理由を分析しつつ、G1馬の実績やAEI(収益性)といったデータが示す彼らの「本当の適性」と「POGや一口馬主で狙うべきポイント」について、私なりに徹底的に掘り下げてみたいと思います。

  • 「弱い」と言われる3つの理由
  • ユーバーレーベンなどG1馬の実績
  • 晩成・スタミナ型という真の適性
  • POGや一口馬主での狙い目

「ゴールドシップ産駒 弱い」説とG1実績

「ゴールドシップ産駒 弱い」と検索すると、どうしても「当たり外れが大きい」「アベレージが低い」といったネガティブな情報が目につきますよね。確かに、POG期間中に勝ちきれなかったり、未勝利で終わってしまう馬がいるのも事実です。

ですが、一度立ち止まって考えてみてほしいんです。本当に「弱い」種牡馬が、世代の頂点を決めるクラシックレースである『優駿牝馬(オークス)』を制覇できるでしょうか?

さらに言えば、父がG1・6勝のうちの2勝 を挙げた伝統のグランプリレース、『宝塚記念』を産駒が勝つことができるでしょうか?

しかも、驚くべきことに彼らの活躍の舞台は平地だけにとどまりません。障害競走の最高峰である『中山大障害(J.G1)』をも制覇しているのです。

「弱い」という一言では到底片付けられない、「最高峰の舞台で勝ち切る力」。それこそがゴールドシップ産駒の本質かもしれません。まずは、その「弱い」という先入観を真っ向から否定する、輝かしいG1での実績 から、具体的に見ていきましょう。

G1馬輩出という事実(ユーバーレーベン等)

ゴールドシップ産駒の評価、そして「弱い」という世間のイメージを決定的に変えたのは、やはり2021年の優駿牝馬(オークス)を制したユーバーレーベンの存在ですよね。

産駒として初の平地G1制覇が、世代の頂点を決めるクラシックレースだった というのは、とてつもなく大きな出来事でした。しかも、当時はデビューから無敗の桜花賞馬ソダシが1番人気に支持される中、ユーバーレーベンは3番人気ながらも見事な末脚で差し切り勝ちを収めました。

東京競馬場・芝2400mという、日本ダービーと同じクラシックディスタンスでの勝利は、父ゴールドシップから受け継いだスタミナの紛れもない証明です。

さらに凄いのは、この勝利が決してフロック(まぐれ)ではなかったこと。ユーバーレーベンは、POG期間中である2歳時からすでに世代トップクラスの能力を示していました。

ユーバーレーベンの2歳時実績

  • 札幌2歳S (G3):ソダシとタイム差なしの2着
  • 阪神JF (G1):ソダシから0.1秒差の3着

このように、2歳女王ソダシと互角の戦いを演じていたんです。早期から活躍できる素質も見せつつ、父譲りのスタミナで最も重要な2400mのG1を勝ち切った。この一勝で、「ゴルシ産駒でもクラシックを勝てる」ということが強烈に印象付けられました。

ちなみに、この勝利は1995年のダンスパートナー以来となる「キャリア1勝馬によるオークス制覇」という歴史的な快挙でもあったんですよ。まさに、「弱い」どころか大舞台での勝負強さを持った馬を輩出できる証明となったわけです。

宝塚記念制覇!メイショウタバルの実績

そして、記憶に新しいのが2025年の宝塚記念(G1)を制したメイショウタバルですよね! ユーバーレーベンが「産駒初のG1制覇」と「クラシックでの強さ」を証明したなら、メイショウタバルは「古馬のトップ路線でも戦える」こと、それも父が最も得意としたレースで証明してくれました。

父であるゴールドシップが2013年、2014年に連覇を達成した、まさに「父の庭」とも言える伝統のグランプリレース 。そこで産駒がG1を勝つなんて、競馬ファンとしてはやっぱりドラマを感じずにはいられません。(※2025年は阪神競馬場の改修工事に伴い、京都競馬場2200mでの開催でしたが、その価値は変わりません)

圧巻の逃げ切りと「7番人気」の快挙

しかも、この勝利がまた、とてつもなく強かったんです。

当日は17頭立ての7番人気と、決して高い評価ではありませんでした。さらに馬場は「稍重」。パワーとスタミナがハッキリと問われる、まさにタフなコンディションでした。

そんな中、鞍上の武豊騎手が絶妙なペースでハナを切り、ライバルたちが苦しむ中、4コーナーを回って直線入口で早めに並びかけてきた2着のベラジオオペラを逆に突き放すという圧巻の走り。最後はなんと3馬身差をつける完勝だったんです。

これはフロックでもなんでもない、本物の強さ。まさに父から受け継いだスタミナとパワー、そして成長力が、G1という最高の舞台で見事に開花した瞬間でしたね。

JRAの公式レース解説でも「昨年の毎日杯ではパワーを要する馬場を、神戸新聞杯では2200メートルを逃げ切った経験を持つ。その強みを最大限に発揮し…」と言及されている通り、彼の適性とタフな馬場が完璧に噛み合った結果と言えそうです。

ちなみに、管理する石橋守調教師 にとってもこれが嬉しいG1初制覇。こうしたストーリーもまた、競馬の魅力だなと改めて思いました。

障害G1制覇マイネルグロン

平地レースだけではないのが、ゴールドシップ産駒の面白いところであり、血統の奥深さですよね。平地G1という「横綱」がいる一方で、全く別の土俵である「障害レース」でも「横綱」を輩出しているんです。

それが、マイネルグロンです 。

彼は2023年の暮れに行われた、障害競走の最高峰レースである「中山大障害(J.G1)」を、圧倒的な1番人気に応えて制覇しました。しかも、その勝利はフロックなどではなく、秋の東京ハイジャンプ(J.G2)も制しており 、まさに障害界の頂点に立つにふさわしい圧巻のパフォーマンスを続けてのG1制覇でした。

JRA最優秀障害馬に選出

この一連の活躍が評価され、マイネルグロンは2023年度の「JRA最優秀障害馬」にも選出されています 。これは、その年の障害馬としてナンバーワンであったことが公に認められた証拠です。

マイネルグロンも、もともとは平地レースを走っていましたが、スピード不足でなかなか勝ちきれず、いわゆる「頭打ち」の状態でした。しかし、障害レースに転向したことで、父ゴールドシップから受け継いだ「尽きることのないスタミナ」と「精神的なタフネス」が完璧に開花したんです。

平地で「弱い」と見なされてしまう馬が、適性を変えた瞬間にG1馬、それも年度代表馬にまで上り詰める。これは父から受け継いだ資質が「スピード不足」という弱点を補って余りある形で別路線で開花した、最高のサンプルと言えるんじゃないでしょうか。

なぜ弱いと思われる?3つの理由

さて、ここまでユーバーレーベン、メイショウタバル、マイネルグロン と、平地クラシック、古馬グランプリ、障害G1という、競馬のあらゆるカテゴリーで頂点に立つG1馬を輩出している事実を見てきました。

これだけの実績がありながら、なぜ「ゴールドシップ産駒 弱い」という検索が後を絶たず、そのようなイメージが根強く残っているのでしょうか。不思議ですよね。

G1馬はあくまで「大成功例」であり、いわば「特大のホームラン」です。しかし、多くの競馬ファン、特にPOGプレイヤーや一口馬主として関わる人々がより身近に体感するのは、「アベレージ(打率)」の部分です。

例えば、2025年のJRA種牡馬リーディング(11月上旬時点)で、ゴールドシップは12位(約12.7億円) 。トップのキズナ(1位・約36.8億円) や、エピファネイア(5位・約19.9億円) といったトップサイアーたちと比較すると、「G1を6勝した名馬の産駒としては物足りない」と感じてしまうのも無理はありません。

私なりに、POGや一口馬主ファンの「体感」としてなぜ「弱い」と思われがちなのか、その理由を3つの側面に整理してみました。

「弱い」と評価されがちな3つの理由

  1. G1馬と未勝利馬。極端すぎる「当たり外れ」の大きさ
  2. トップサイアーとの比較による「期待値とのズレ」
  3. POGの主戦場で勝てない「晩成型」の成長曲線

これらが複合的に絡み合い、「G1馬は出ているはずなのに、なぜか弱い気がする」という、独特の印象を形作っているんだと思います。次のセクションから、この3つの理由を一つずつ深掘りしていきますね。

当たり外れの大きさと未勝利馬

これこそが、「ゴールドシップ産駒 弱い」という体感的な印象を生み出す最大の理由かもしれません。まさに「ホームランか三振か」という、その極端さです。

ユーバーレーベン やメイショウタバル のような、G1の舞台で輝かしい「特大のホームラン」を打つ馬がいる一方で、その影には中央競馬で1勝も挙げることができずにキャリアを終える「三振」の馬たちも、残念ながら他の種牡馬と同様に(あるいは、それ以上に目立って)存在します。

これはどの種牡馬にも言えることですが、ゴールドシップ産駒の場合、その成功と失敗の落差が非常に激しいと、多くのファンが感じているんです。例えば、一口馬主クラブの「ウインレーシングクラブ」所属馬のデータ を見てみると、その一端が垣間見えます。

【参考】一口クラブの0勝馬の例

POGや一口馬主で「ハズレ」と呼ばれてしまう馬たちの現実の一例です。

馬名 性別/生年 JRA戦績 ステータス
ウインアンサンブル 牡 (2021) 4戦0勝 中央抹消
ウインサマースノー 牡 (2020) 8戦0勝 中央抹消
ウインヴィオラ 牝 (2020) 7戦0勝 中央抹消
ウインマルシュ 牡 (2020) 3戦0勝 中央抹消
ウインガレオン 牡 (2020) 3戦0勝 中央抹消

※を基に作成。これはあくまで一例であり、同クラブにはG2馬ウインキートス やG3馬ウインマイティー といった活躍馬も多数います。

もちろん、これは一つのクラブのデータに過ぎませんし、成功例もたくさんいます。ですが、POGで指名したり、一口馬主として夢を託した自分の馬が、もしこうした「0勝馬」の側になってしまったら…?

G1での華々しい勝利は「遠い世界の出来事」のように感じられ、「自分の持った馬は弱かった」という手痛い体感こそが、その人にとっての「ゴールドシップ産駒の評価」になってしまいますよね。

これが、「産駒全体が弱い」という評価に直結しやすい最大のメカニズムなんです。アベレージヒッターではなく、典型的なホームランバッター。その「打率の低さ」、つまり産駒の勝ち上がり率そのものが、「弱い」という印象を与えてしまう根本的な原因だと私は分析しています。

POGで勝てない晩成型の特徴

POG(ペーパーオーナーゲーム)を楽しまれている方なら、この感覚が一番よく分かるかなと思います。「弱い」という評価が形成される3つ目の理由は、このPOGの「価値観」と、産駒の「成長曲線」が致命的にミスマッチを起こしていることなんです。

POGの「価値観」とのミスマッチ

POGの主戦場は、ご存知の通り2歳の夏(6月) の新馬戦から始まり、3歳の日本ダービー(5月末)まで。この約1年間のクラシックロードで、いかに多くの賞金を稼げるか、いかに世代の頂点に立てるかが全てのゲームですよね。

そのためには、当然ながら仕上がりが早く、2歳戦からガンガン勝ち上がってくれる「早期完成型」や「スピードタイプ」が重宝されます。キタサンブラック産駒やドゥラメンテ産駒 のような馬たちが、POGでは人気を集めやすい典型です。

しかし、ゴールドシップ産駒は、その価値観の「真逆」を行くタイプが非常に多いんですよね。2歳の新馬戦や夏の早期デビュー で目立った活躍ができない産駒は、POGプレイヤーからは早々に「弱い」「期待外れ」「指名失敗」という烙印を押されやすいんです。

データが示す「遅咲き」の現実

この「晩成傾向」は、これまでの活躍馬のデータを見れば一目瞭然です。POG期間(3歳5月末まで)で彼らがどれだけ活躍したか、という視点で見ると、その厳しさが分かります。

馬名 本格化した年齢/主な勝利 POG期間内(3歳5月末まで)か?
マイネルグロン 7歳 (中山大障害 J.G1制覇) 完全に期間外
メイショウタバル 4歳 (宝塚記念 G1制覇) 完全に期間外 (POG終了直後の4歳夏)
マイネルエンペラー 5歳 (日経賞 G2制覇) 完全に期間外
フェアエールング 5歳 (小倉牝馬S G3制覇) 完全に期間外
メイショウブレゲ 6歳 (万葉S OP勝利) 完全に期間外
ウインキートス 4歳 (目黒記念 G2制覇) 期間外 (4歳春)
ユーバーレーベン 3歳 (オークス G1制覇) 期間内(唯一の例外的大成功)

このように、オークスを勝ったユーバーレーベン は、2歳時からG1で3着 するなどPOG期間内でしっかり活躍してくれましたが、これはあくまで「数少ない例外的な成功例」と見るべきかなと、私は思います。

全体的な傾向としては、POGで求められる「早期完成型」とは程遠い、古馬になってから本格化する、いわゆる「晩成(レイトブルーマー)」が圧倒的に多いんです。

POG指名のリスク

POG期間中に勝てない、あるいはデビューすら遅れるというネガティブな評判が毎年蓄積し、それが「ゴールドシップ産駒 弱い」という検索行動の大きな要因となっているのは間違いないと思いますね。POGで指名する際は、この「晩成」リスクを覚悟する必要があります。

「ゴールドシップ産駒 弱い」は誤解?真の適性

さて、ここまでのセクションで、「当たり外れの大きさ」、「トップサイアーとの比較」、そして何より「POGで勝てない晩成傾向」 が、「ゴールドシップ産駒 弱い」というイメージの正体であることを分析してきました。

でも、それは本当でしょうか? もしかすると、私たちが産駒を測っている「モノサシ」自体がズレているだけかもしれません。

POGという「2歳夏~3歳春」 という非常に短い期間や、現代競馬の主流である「芝のマイル~中距離でのスピード」というモノサシで彼らを測ろうとすること自体が、「当てはめの誤り」である可能性はないでしょうか。

「ゴールドシップ産駒 弱い」という評価は、この「主流のモノサシ」で測った結果生じた「誤解」である、というのが私の考えです。

このセクションでは、そのモノサシをガラリと変えてみましょう。

「POG的な視点」ではなく、「馬主的な視点(生涯収支)」 で。

「スピード」ではなく、父がG1・6勝 で示した「スタミナ」 で。

そうしてデータを見直すと、彼らの「本当の適性」と「隠された強み」がハッキリと浮かび上がってきます。なぜ彼らのAEI(収益性)は「1.44」 と驚異的な数値を叩き出しているのか? その秘密を深掘りしていきます。

産駒の最大の特徴はスタミナ

では、彼らの「本当の適性」とは何でしょうか。それはもう、データを見れば「明らか」としか言いようがありません。それは父ゴールドシップがG1・6勝 で日本競馬の頂点に立った最大の武器、「尽きることのないスタミナ」です。

POGファンが注目しがちな芝1600m(マイル)や2000mといった「スピード」や「瞬発力」が問われるレースで、他の一流種牡馬のスピード馬たちと競り合って「弱い」と判断するのは、あまりにも早計です。彼らの主戦場は、そこではないんです。

まずは、産駒の主な重賞・オープン勝ちの実績を「距離」に注目して見てください。

ゴールドシップ産駒:主な芝・中長距離勝利一覧

馬名 主な勝利レース (格) 距離 備考
ユーバーレーベン 優駿牝馬(オークス)(G1) 芝2400m 世代の頂点を決めるクラシック
メイショウタバル 宝塚記念 (G1) 芝2200m 稍重の馬場を逃げ切り圧勝
マイネルエンペラー 日経賞 (G2) 芝2500m 中山のタフな長距離コース
ウインキートス 目黒記念 (G2) 芝2500m 東京の長丁場ハンデG2
ゴールデンスナップ 万葉ステークス (OP) 芝3000m 京都名物のステイヤーレース
メイショウブレゲ 万葉ステークス (OP) 芝3000m 同レースを産駒で連覇
マイネルグロン 中山大障害 (J.G1) 障4100m 障害レースの頂点

この一覧を見て、どう思われますか?

見事に「芝の2200m以上」という、スタミナが要求されるレースに勝利が集中していますよね。これは偶然ではありません。明らかに血統的な傾向です。

父であるゴールドシップ自身が、G1・6勝 のうち、実に5勝を芝2500m以上(有馬記念、菊花賞、天皇賞・春2回 )で挙げ、残る1勝も宝塚記念(芝2200m) という、日本競馬史に残る生粋のステイヤー(長距離馬)でした。

産駒たちは、その父の特性を色濃く受け継いでいるんです。現代競馬の主流であるマイル(1600m)の高速スピード比べや、瞬発力が問われるレースで劣る姿だけを見て「弱い」と判断するのは、彼らの本質を見誤っています。

彼らの真価は、レース終盤で皆が苦しくなるような、パワーと底力(スタミナ)が問われるタフな展開でこそ発揮されます。まさに、メイショウタバルが稍重の宝塚記念を圧勝 したようなレースこそが、彼らの主戦場なんです。

ダートは走らない?芝適性

「芝の長距離が主戦場なのは分かったけど、ダートで全然走らないじゃないか。やっぱり弱いのでは?」…これも、本当によくある誤解の一つだと思います。

特にPOGや一口馬主で、新馬戦や未勝利戦の選択肢としてダートが選ばれることもありますよね。芝で頭打ちになった馬がダートを試すこともあります。そこで期待通りに惨敗して、「やっぱりダメか」「弱い」となってしまうケース、結構多いと思うんです。

ですが、これは「弱さ」ではなく、明確な「適性の偏り」なんです。

もう一度、先ほど挙げた活躍馬たち—ユーバーレーベン、メイショウタバル、マイネルエンペラー、ウインキートス —を思い出してみてください。彼らの輝かしい実績は、ほぼ100%、芝(Turf)のレースで挙げられたものです。

もちろん、中にはダートを走る産駒もいますし、地方競馬 のダートでコツコツと勝利を重ねる馬もいます。ですが、種牡馬としての本質、特に中央競馬のG1を狙うような「大当たり」の馬たちは、「芝特化型」、それも前のセクションで見たとおり「芝の長距離」と考えるのが自然です。

データが示す「芝」への極端な偏り

これは私の印象論ではなくて、競馬データベースサイトで「種牡馬分析」 といったコーナーを見れば、統計データとしてもハッキリと示されています。

「芝・ダート出走比率」や「芝・ダート別成績」を見ると、出走数自体が芝に偏っているのはもちろん、勝利数や勝率に至っては、芝がダートを圧倒しています。ダートでの勝利は、芝に比べて極端に少ないんです。

これは父ゴールドシップ自身が、G1・6勝 を含む全13勝 をすべて芝のレースで挙げた、生粋の「芝馬」だったことを考えれば当然の血統的傾向ですよね。ステイゴールドの血統ライン的にも、パワー型のダート馬というよりは、芝のスタミナタイプに出やすいんです。

「適性に合わない」敗戦です

例えるなら、長距離マラソンランナーに100m走をさせて「スピードがなくて弱い」と言っているようなものかもしれません。

彼らの適性に合わないダートレースでの1回や2回の敗戦をもって、「この産駒は弱い」と結論付けてしまうのは、彼らの本質を見誤っている、非常にもったいない判断かなと思います。

勝ち上がり率よりAEI(収益性)

さて、ここまでの「当たり外れ」や「晩成傾向」の話は、主に「アベレージ(平均値)」、つまり「勝ち上がり率」や「勝利数」に基づいた「弱い」という評価でした。

POGや一口馬主で最も気になるのはこの「アベレージ」なので、この視点では「弱い」と感じてしまうのは無理もないことだと思います。

アベレージの罠:「勝ち上がり率」と「リーディング順位」

事実、2025年のJRA種牡馬リーディング(11月上旬時点)を見てみると、その「物足りなさ」は数字にも表れています。

順位 種牡馬名 収得賞金 (2025年) 代表産駒
1 キズナ 約36.8億円
2 ロードカナロア 約34.9億円
5 エピファネイア 約19.9億円
12 ゴールドシップ 約12.7億円 メイショウタバル

※データは2025年11月上旬時点のものです。

このように、トップのキズナ や5位のエピファネイア とは総賞金額で大きな差があり、G1を6勝 した歴史的名馬の産駒としては、この12位 という順位は「物足りない」「やっぱり弱いのでは?」と感じてしまいますよね。

本当の価値は「AEI(収益性)」にあり

しかし、種牡馬の本当の価値は、総賞金額だけで決まるリーディング順位では測れません。なぜなら、リーディング順位は「産駒の総数」が多ければ多いほど有利になるからです。

特にゴールドシップのような「ホームランか三振か」というタイプの種牡馬を評価する上で、本当に注目すべきは「AEI(アーニングインデックス)」という指標なんです。

AEI(アーニングインデックス)とは?

AEI(Average Earnings Index)は、出走馬1頭あたりの平均獲得賞金が、全種牡馬の平均値(1.0)と比べてどの程度かを示す指標です。

簡単に言えば「稼ぐ効率」のこと。種付け料(期待値)に対して、産駒がどれだけ稼いでいるかを示す「投資対効果」のような数値で、1.0を超えていれば「優秀」とされます。

驚異のAEI「1.44」が示す真実

このAEIでゴールドシップ産駒を見てみると、その評価は一変します。

各種データベースによると、ゴールドシップ産駒の2025年におけるAEIは…なんと「1.44」という、非常に高い数値を記録しているんです。(出典:JBIS(ジャパン・スタッドブック・インターナショナル)や一口馬主DBのデータを参照)

これは、全種牡馬の平均(1.0)よりも44%も多く賞金を稼いでいる ことを意味します。アベレージ(勝ち上がり率)は低くても、稼ぐ馬はとことん稼ぐため、1頭あたりの「稼ぐ効率」はトップクラスに優秀だ、ということです。

なぜAEIは高いのに順位は低いのか?

この「リーディング12位」というアベレージの低さと、「AEI 1.44」という収益性の高さ。この巨大なギャップこそが、ゴールドシップ産駒の本質を解く鍵です。

理由はまさに「二極化(ホームランか三振か)」。

  • G1馬(ホームラン): メイショウタバル やユーバーレーベン が、何億円という「極端に大きな賞金」を稼ぎ、AEI(1頭あたりの平均)を強烈に引き上げます。
  • 未勝利馬(三振): 一方で、未勝利で終わる馬 も多いため、「アベレージ(勝ち上がり率)」が低くなります。

結果として、「総賞金額」で決まるリーディング順位 は上がりにくいけれど、G1馬を引いた時の「投資効率」は抜群に高い、という特殊な種牡馬になっているんです。

POG的な視点(アベレージ重視)では「弱い」と見えますが、経済的な視点、馬主的な視点(生涯収支)で見れば、「弱い」どころか「投資効率はむしろ優秀」という、全く逆の見方ができるわけですね。

一口馬主での評価と募集価格

「勝ち上がり率が低い」「当たり外れが大きい」…。もしこれが全ての真実で、生産者や一口馬主クラブといった「馬選びのプロ」たちが、本当に「ゴールドシップ産駒は弱い」「アベレージが低くて儲からない」と判断しているなら、どうなるでしょうか?

当然、人気は下がり、馬を売るために募集価格は年々「下落」していくはずですよね。POGでの指名順位も下がり続けるはずです。

ところが、現実のデータ(市場評価)は、その真逆を指し示しているんです。私たち一般ファンの「弱いかも?」という認識と、「プロの評価」との間には、非常に面白いギャップが存在しています。

価格高騰が示す「プロの評価」

一口馬主DBのデータ によると、クラブ馬(一口馬主で募集された馬)の平均募集価格は、G1馬の活躍を受けて、むしろ顕著な「上昇傾向」にあるんです。

募集年(産駒世代) 平均募集価格 募集頭数
2019年産 1,711万円 18頭
2020年産 2,088万円 26頭
2021年産 2,196万円 21頭
2022年産 2,063万円 21頭
2023年産 2,871万円 23頭

※データ出典:一口馬主DB

このデータ、すごく面白いと思いませんか?

G1馬のユーバーレーベン(2018年産) やG2馬ウインキートス(2017年産) が活躍する前の「2019年産」は、平均1,711万円 でした。この時期はまだ「本当に走るのか?」と半信半疑で、一般ファンの「弱いかも?」という認識が価格を押し下げていた、いわば「割安」な時期だったと言えます。

しかし、ユーバーレーベンがオークスを勝った 2021年以降、評価は一変します。そして2023年産では、平均価格が2,871万円 と、2019年比で1,000万円以上も高騰しているんです。これはもう、立派な「人気種牡馬」の価格推移ですよね。

「割安」から「適正価格」へ

「ゴールドシップ産駒 弱い」というGoogle検索の存在 そのものが、実はAEI 1.44 という「稼ぐ力」と、当初の「1,711万円」という市場価格との間にあった「ズレ(=割安感)」の証拠だったんです。

G1馬の登場によって、その「ズレ」が市場に修正され、2023年には2,871万円 まで価格が適正化(高騰)した、と分析できます。

私たち一般ファンが「未勝利馬が多いなぁ…」 とアベレージの低さ(打率)を見ているのとは対照的に、馬選びのプロたちは「G1を勝てるポテンシャル(長打力)」 と「AEI 1.44 という高い収益性」を正しく評価した結果です。

「弱い」という認識は、もはや市場では過去のもの。「G1を狙える価値がある」と適正に評価されてきている、何よりの証拠と言えそうですね。

一口馬主への出資に関するご注意

一口馬主は競走馬への投資であり、元本割れを含む様々なリスクを伴います。この記事で紹介したAEI や募集価格 はあくまで過去のデータに基づく目安に過ぎません。

実際に出資を判断される際は、ご自身の責任において、各クラブが提供する最新の公式情報を十分にご確認の上、慎重に決定してください。

「ゴールドシップ産駒 弱い」の最終結論

ここまで、G1馬の実績、アベレージの課題 、POGでの評価、そしてAEI や市場価格 という経済的な側面まで、様々なデータを見てきました。

これら全てを踏まえて、「ゴールドシップ産駒 弱い」という検索キーワードに対する私の最終的な結論をまとめたいと思います。

私の結論は、「弱いのではなく、極めて特殊(ピーキー)で、測るモノサシを間違えると“弱く見える”だけ」です。

「ゴールドシップ産駒 弱い」という評価は、現代競馬の「主流」となっている、あまりにも画一的なモノサシで彼らを測ろうとするから生まれる、「認識のズレ」なんだと思います。

「弱い」と誤解させる「主流のモノサシ」とは?

  • 時間軸のモノサシ:POGで重視される「2歳~3歳春」 という短期間。
  • 適性のモノサシ:現代競馬の王道である「マイル~中距離」でのスピード。
  • 評価のモノサシ:勝ち上がり率や勝利数という「アベレージ(打率)」。

この3つのモノサシで測れば、彼らの多くは「規格外」となり、「弱い」という評価になってしまうんです。

しかし、彼らを測るべき本当のモノサシは、その真逆のところにあります。

ゴールドシップ産駒の「正しいモノサシ」

  • 時間軸のモノサシ:「4歳~6歳で本格化する」 という晩成の成長曲線(長期投資)。
  • 適性のモノサシ:父譲りの「圧倒的なスタミナとタフネス」。
  • 主戦場(評価)のモノサシ:「芝2200m以上の長距離」、または「障害レース」 という“非主流”の舞台。
  • 経済性のモノサシ:「AEI 1.44」 という驚異的な「稼ぐ効率(長打力)」。

この「非主流」のモノサシで測り直せば、彼らはオークス を勝ち、宝塚記念 を制し、障害G1 で年度代表馬 にもなる「強い」馬たちなんです。

POG・一口馬主の戦略まとめ

以上のことから、POGや一口馬主における戦略は明確です。

  • POGでの指名:基本的には「ハイリスク」と心得るべきです。「早期完成型」が求められるPOGとは相性が悪く、晩成傾向 からポイントにならずに終わる可能性が高いです。もし指名するなら、ユーバーレーベンの再現 を狙い、オークス(芝2400m) 一本に絞った牝馬に限定すべきかなと思います。
  • 一口馬主での出資:「短期的な回収」ではなく、「5歳、6歳での大成」を夢見る「長期投資」の覚悟が必須です。未勝利で終わる「三振」のリスク を受け入れつつ、G1制覇という「特大ホームラン」 を信じて待ち続ける忍耐が求められます。

狙い目としては、やはり芝の中長距離(2200m以上) に適性がありそうな母系の馬。そして、マイネルグロン のように、平地で頭打ちになっても障害転向で大成する「保険(別ルートでの成功)」があることも、他の種牡馬にはない隠れた魅力ですよね。

そういうロマンや極端さ、そしてデータに裏付けられたAEIの高さ 。その全てを含めて、実に父ゴールドシップ らしい、本当に面白い産駒たちだなと、私は思いますね。

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