阪神競馬場の馬場について「どのような特徴があるのか?」「時計が出やすいのか?」「芝やダートの傾向は?」といった詳細な疑問をお持ちではないでしょうか。G1レースが多数開催されるJRAの4大競馬場の一つとして、阪神競馬場の馬場特性を深く理解することは、馬券戦略を練る上で絶対に欠かせない要素です。
「阪神競馬場の馬場の特徴は?」と問われれば、多くの方が直感的に「ゴール前の急坂」を思い浮かべるでしょう。しかし、プロの視点で攻略を考えた場合、それだけでは情報として不十分です。例えば、阪神競馬場の芝コースとダートコースの精密なレイアウト、開催時期によって変わるAコースとBコースの違い、そして近年導入された阪神競馬場のクッション値の正しい解釈方法まで、多角的に分析する必要があります。
また、同じ関西圏の主要競馬場である京都競馬場との違い、すなわち阪神と京都の競馬場の違いを明確に比較することで、各コースで求められる馬の適性が全く異なることも鮮明になります。さらに、あの美しいターフを維持管理する阪神園芸と競馬場との知られざる関係性や、雨天時に馬場状態を左右する阪神競馬場の水はけの秘密といった、一歩踏み込んだ知識もレース展開を読む上で重要なヒントとなり得ます。
この記事では、公表されているデータやコースの構造に基づき、阪神競馬場の馬場傾向を徹底的に分析。そこから導き出される有利な血統や、コースを得意とする騎手まで、馬券攻略に直結する情報を網羅的に解説します。データに基づいた阪神競馬場攻略の鍵を、ここで見つけてください。
- 阪神競馬場の芝・ダートそれぞれのコースレイアウトと高低差
- 京都競馬場との明確な違いと求められる適性の差
- クッション値の正しい見方と馬場状態の判断基準
- 馬場傾向から導き出される有利な脚質、血統、騎手
阪神競馬場の馬場の全体像と基本特徴
- 阪神競馬場の馬場の特徴は?
- 阪神競馬場の芝コースのレイアウト
- 阪神競馬場のダートコースのレイアウト
- 阪神と京都 競馬場の違いを比較
- 阪神園芸と競馬場との関係性
- 阪神競馬場の水はけの秘密
阪神競馬場の馬場の特徴は?
- YUKINOSUKE
阪神競馬場の馬場の特徴と聞くと、多くの競馬ファンが真っ先に「ゴール前の急坂」を思い浮かべることでしょう。確かに、あの坂がレースの勝敗を分ける最大の試練であり、数々の名勝負と波乱を演出してきたことは間違いありません。しかし、阪神競馬場を真に攻略するためには、その坂以外にも知っておくべき複数の重要な構造的特徴が存在します。
現在の阪神競馬場は、2006年(平成18年)に行われた大規模な改修工事によって完成した姿です。この改修は、かつての「おむすび型」とも呼ばれた特徴的なコース形態から、新たに「芝外回りコース」を新設する大掛かりなもので、これにより施行できるレースの多様性が飛躍的に増し、コースの性質も大きく変わりました。
この近代的なコースを深く理解するため、特に重要な特徴を3つのポイントに分けて、その詳細を解説します。
1. ゴール前の急坂(パワーの検定所)
やはり最大の特徴は、ゴール前の直線に設置された急な上り坂です。ここで注意したいのは、芝コースとダートコースでその高低差が異なる点です。
- 芝コースの急坂:ゴール前直線に高低差1.8m、最大勾配1.5%の急坂が設置されています。
- ダートコースの急坂:同様に、直線に高低差1.6m、最大勾配1.4%の急坂が設置されています。
(出典:JRA公式サイト 阪神競馬場コース紹介)
芝の1.8mという高低差は、中山競馬場の急坂(高低差2.24m)に次ぐタフさを誇ります。この坂が特に厳しい理由は、その「位置」にあります。坂が始まるのはゴール手前200m地点からで、残り80m地点まで続きます。つまり、約400m以上の長い直線を走破し、スタミナが最も苦しくなる「最後の最後」にこの試練が現れるのです。
スピードだけで押し切ろうとする馬や、スタミナに不安のある馬は、この坂で明確に脚が鈍り、後続に交わされる場面が数多く見られます。まさに、競走馬のパワーと底力が問われる「検定所」と言えるでしょう。
2. 芝外回りコースの長い直線(持続力の舞台)
2006年の改修工事における最大の目玉が、この「芝外回りコース」の新設です。このコースの導入により、阪神競馬場は全く新しい顔を持つことになりました。
特筆すべきは、その直線距離です。Aコース使用時で473.6mにも達し、これはJRA全10競馬場の中でも、新潟競馬場の外回り(約658m)、東京競馬場(約525m)に次ぐ第3位の長さを誇ります。
この「圧倒的な直線の長さ」と、前述の「ゴール前の急坂」の組み合わせこそが、阪神芝外回りコース最大の難所です。なぜなら、単なる一瞬の瞬発力(キレ味)だけでは通用しないからです。
ゴールまでの距離が長いため、騎手はどのタイミングで仕掛けるか、非常に難しい判断を迫られます。あまりに早く仕掛けると、最後の急坂でスタミナが持たなくなってしまいます。かといって、仕掛けが遅すぎると、いくら素晴らしい末脚(上がりの速さ)を持っていても、物理的に前の馬を捉えきれずに終わってしまいます。
結果として、このコースで求められるのは、トップスピードを長く維持し続ける能力(持続力)と、最後の坂を駆け上がる「パワー」の両立です。このため、実力馬がその能力を発揮しやすく、紛れが少ないフェアなコースとして高く評価されています。
3. スパイラルカーブ(内回り・ダートコース)
急坂や直線の長さに比べると見落とされがちですが、コースの安全性を高め、スムーズなレース展開を促す重要な技術が「スパイラルカーブ」です。これは、芝の「内回りコース」と「ダートコース」の第1・第2コーナーに採用されています(※外回りコースは関係ありません)。
スパイラルカーブとは、簡単に言えば「コーナーの入口よりも出口の半径が緩やか(大きく)になるよう設計されたカーブ」のことです。
この構造には、主に2つの大きなメリットがあります。
- スピードの維持:競走馬がコーナーを曲がる際にかかる遠心力の影響が緩和されるため、スピードを過度に落とすことなく、スムーズなコーナリングが可能になります。
- 安全性の向上:馬群全体が外側に膨れにくくなるため、特に内枠を走る馬が窮屈になるリスクが軽減されます。これにより、よりロスの少ない立ち回りが可能となり、レースの公平性にも寄与しています。
阪神競馬場の特徴まとめ
阪神競馬場は、これら「急坂(パワー)」「長い直線(持続力)」「スパイラルカーブ(円滑性)」という複数の要素が組み合わさることで、日本有数の「タフでフェアなコース」としての地位を確立しています。
このコースを攻略するためには、スピードだけではなく、その裏付けとなる「パワー」「スタミナ」「持続力」といった要素を、予想の前提として最重要視する必要があります。
阪神競馬場の芝コースのレイアウト
- YUKINOSUKE
阪神競馬場の芝コースは、2006年の大改修を経て、JRAの中でも特に戦略性が高いコースへと生まれ変わりました。最大の特徴は、「内回り」と「外回り」という2種類の周回コースが存在し、どちらを使用するかでレースの性質、求められる適性、そして有利な脚質が根本から異なる点です。
さらに、開催時期によって馬場の内ラチ沿いを保護するための仮柵(かりさく)が移動され、「Aコース」と「Bコース」が使い分けられます。この2つの周回ルートと2つのコース設定を組み合わせることで、阪神芝コースは非常に多彩な顔を見せるのです。
内回りと外回りの決定的な違い
2つのコースの最大の違いは、3コーナーから4コーナーにかけての構造、そしてそれに続く直線の長さにあります。外回りコースは、3コーナーから4コーナーにかけて非常に緩やかで巨大なカーブ(半径約682m)を描き、ゆったりと最後の直線へと進入します。一方、内回りコースは同じ地点から分岐し、比較的タイトなコーナー(半径約444m)を通過して、外回りよりもかなり手前から短い直線へと向かいます。
| 比較項目 | 芝・内回り (Aコース) | 芝・外回り (Aコース) |
|---|---|---|
| 1周距離 | 1689.0m | 2089.0m (JRA右回りコース最長) |
| 直線距離 | 356.5m (JRA主要4場では最短) | 473.6m (JRA全場で第3位の長さ) |
| 主なG1レース | 大阪杯 (2000m) 宝塚記念 (2200m) |
桜花賞 (1600m) 阪神JF (1600m) 朝日杯FS (1600m) |
内回りコースは、直線距離が約356mと短いことが最大の鍵です。4コーナー出口の時点で前方に位置していないと、ゴール前に待ち構える高低差1.8mの急坂を考慮すると、後方からの逆転は非常に困難になります。このため、レースの勝敗は「いかにロスなくコーナーを立ち回り、直線入り口で好位につけるか」にかかっており、先行力や、馬群を捌ける機動力(器用さ)が強く求められます。
春のグランプリレース・宝塚記念(2200m)や、春の中距離王決定戦・大阪杯(2000m)も、この内回りコースが舞台です。これらのG1レースがスタミナとパワーを要するタフな消耗戦になりやすいのは、このタイトなコーナーと急坂という組み合わせが、馬の総合力を試すからです。
外回りコースは、対照的に直線距離が約473mと非常に長く、コーナーも極めて緩やかでクセがありません。このレイアウトにより、道中のポジション争いが激しくなりにくく、各馬が自分のリズムでゆったりと脚を溜めることが可能です。しかし、勝負所となる最後の直線は、前述の通り「JRA第3位の長さ」と「急坂」が待ち構えています。
したがって、このコースで勝つためには、ゴールまでトップスピードを維持し続ける「持続力」と、坂を駆け上がる「パワー」が不可欠です。一瞬の瞬発力だけでは押し切れず、馬の総合力が問われるため、「実力通りの決着になりやすい」フェアなコースとして知られています。桜花賞や阪神ジュベナイルフィリーズといった、2歳・3歳のマイルG1がこのコースで行われるのは、若駒たちの将来性を測る上で最も適した舞台だからでしょう。
AコースとBコースの違い(馬場の使い分け)
阪神競馬場では、長期間の開催(通常1開催は8~12日間)によって芝、特に最も馬が密集して走る内ラチ沿いが傷むことを考慮し、芝コースのコンディションを維持するために仮柵(かりさく)を移動させます。これが「Aコース」と「Bコース」の違いです。
- Aコース: 仮柵を最も内側(本来の位置)に設置した、基本となるコースです。主に開催開幕週から中盤(例:第1回阪神開催の1~4日目など)まで使用されます。
- Bコース: Aコースで使用した内ラチから4m外側に仮柵を設置したコースです。主に開催の中盤から後半(例:第1回阪神開催の5~8日目など)にかけて使用されます。
阪神競馬場には、東京や中山競馬場にあるようなCコースやDコースの設定はなく、開催期間中の芝の保護はこのA→Bの1回の変更のみで行われるのが基本です。※積雪などの特殊な事情を除く
Bコース変更の罠:「差し有利」とは限らない!
開催後半にBコースへ変更されると、Aコース使用時に最も荒れた内側の芝(幅4m)が仮柵によって完全にカバーされます。これにより、見た目の馬場は一時的に回復し、クッション性も良化するため、開幕週のような高速時計が出ることもあります。
しかし、これを「内側がキレイになったから、差し馬が外から伸び放題になる」と短絡的に解釈するのは早計です。特に注意が必要なのは内回りコースです。馬群全体が4m外を走ることになるため、実質的にコーナーがよりタイト(きつく)なります。これは、Aコース時よりもさらに内枠の先行馬が有利に、外枠の馬や後方の馬が不利になることを意味する場合があります。
外回りコースであっても、開催後半ともなれば馬場の損傷は内側4mだけに留まりません。Bコースの柵からさらに外側も荒れている場合、結局は騎手たちが馬場の最も良い部分を探り合う「トラックバイアス」の読み合いとなり、必ずしも差し馬が有利になるとは限りません。
Bコースへの変更は、単なる「馬場のリセット」ではなく、「コースの形状と特性が微妙に変化する」重要なイベントであると理解することが、馬券攻略の鍵となります。
阪神競馬場のダートコースのレイアウト
- YUKINOSUKE
阪神競馬場のダートコースは、芝コースの内側に設置されており、1周の距離は1517.6mと、JRAの競馬場の中では標準的なサイズに分類されます。しかし、このコースの最大の特徴であり、最大の難所は、ゴール前の直線に待ち構える「急坂」にあります。
芝コースの坂(高低差1.8m)ほどではありませんが、ダートコースにも高低差1.6m(最大勾配1.4%)のタフな上り坂が設置されています。この坂の存在が、阪神ダートコースをJRA屈指の「パワー型」コースたらしめているのです。
直線距離は352.7mです。これは東京競馬場(約501m)ほど長くはなく、中山競馬場(約308m)ほど短くもない、まさに標準的な長さと言えます。ただし、この数値以上にタフで、多くの馬にとって長く感じられるのが阪神ダートの特徴です。
なぜなら、前述の通りゴール手前200m地点から残り80m地点にかけて、この1.6mの坂を駆け上がる必要があるからです。スピードだけで押し切ろうとする逃げ・先行馬も、この坂でスタミナが切れて脚色が鈍るケースが頻繁に見られます。ゴールまでしっかりと走り切る、持続力とパワーが明確に要求されるコースです。
主要距離:ダート1800mの「2度の坂越え」
阪神ダートの中でも、主要距離として最も多く使われる1800mは、JRA全場のダートコースの中でも屈指の過酷なレイアウトとして知られています。
スタンド前の直線入口付近からスタートするこのコースは、スタートしてすぐに1回目のゴール前急坂(高低差1.6m)を上らされます。まずここで一度、ポジション争いをしながら馬群はスタミナを使うことになります。
その後、コースをぐるりと1周し、向正面の緩やかな下り坂などを経て、最後の直線でもう一度、同じ1.6mの急坂を上ることになるのです。これが「2度の坂越え」と呼ばれる所以(ゆえん)です。
このレイアウトは、スタート直後のポジション争いと、ゴール前の最後の攻防という、レースで最も重要な2つの局面で急坂を要求します。そのため、競走馬のパワーとスタミナを極限まで試す、非常にタフなコース設定となっています。
要注意:ダート1400mは特殊な「芝スタート」
もう一つ、阪神ダートを攻略する上で絶対に知っておかなければならないのが、1400m戦の特殊なスタート地点です。
ダート1400m戦は、他の距離とは異なり、2コーナー奥のポケット地点からスタートします。最大の特徴は、スタートしてから最初の約200mが芝コース(外回り芝コースの一部)となっている点です。
芝の上は、ダート(砂)の上よりも抵抗が少なく、当然スピードが出やすくなります。この「芝スタート」がレース展開に大きな影響を与えます。
芝スタートがレースに与える影響
- 先行争いの激化: 芝でのダッシュ力に秀でた馬(例えば、普段芝の短距離を使っている馬など)が、そのスピードを活かして一気に先行争いで有利なポジションを取りやすくなります。
- 外枠有利の傾向: 通常、ダートコースは砂を被るリスクや距離ロスが大きいため、外枠が不利とされがちです。しかし、阪神ダート1400mにおいては、外枠の馬ほど、スピードの乗りやすい芝部分をより長く走ることができるため、内枠の馬よりもスムーズに加速できるという「外枠有利」の逆転現象が起こりやすくなります。
- ハイペース化: 芝の上を走ることで、序盤のペース(前半3ハロン)が、純粋なダートスタートのレースよりも格段に速くなる傾向があります。
このため、ダート1400m戦を予想する際は、純粋なダート適性だけでなく、「芝スタート適性」や「枠順の有利不利」を通常以上に考慮する必要があります。
参考:阪神ダートコース 距離別レイアウト概要
阪神ダートコースは、他にも特徴的な距離設定がされています。
| 距離 | スタート地点 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1200m | 向正面(下り坂) | スタートから緩やかな下り坂が続くため、非常にスピードに乗りやすいレイアウトです。先行争いが激化しやすく、スピードが重視されます。 |
| 1400m | 2コーナー奥(芝スタート) | 前述の通り、芝スタートが最大の特徴。外枠有利・ハイペース傾向が出やすい特殊なコースです。 |
| 1800m | スタンド前(坂の手前) | スタート直後とゴール前の「2度の坂越え」が求められる、阪神ダートを象徴する最もタフなコースです。 |
| 2000m | 4コーナー奥(芝スタート) | 1400mと同様に芝スタートですが、スタート後すぐにダートコースに合流します。1800m同様に「2度の坂越え」となるため、スタミナが要求されます。 |
阪神と京都 競馬場の違いを比較
- YUKINOSUKE
同じ関西圏の主要なG1開催競馬場として、阪神競馬場と京都競馬場は開催時期が隣接することも多く、馬券検討においてしばしば比較対象となります。しかし、この二つの競馬場のコース特性は根本的に異なり、競走馬に求められる適性も全く違います。
かつて、競馬ファンの間では「坂の阪神、平坦の京都」という言葉が、両者の違いを表す常識として定着していました。これは、ゴール前に高低差1.8mの急坂が待ち受ける阪神競馬場と、直線がほぼ平坦であった京都競馬場を的確に表現したものでした。
しかし、この常識は、京都競馬場が2023年春に完了した大規模な改修工事によって、完全に過去のものとなりました。以前の「平坦コース」というイメージのまま予想を組み立てることは、現在では非常に危険です。
「淀の坂」から「丘」へと変貌した京都競馬場
改修前の京都競馬場の最大の特徴は、3コーナーから4コーナーにかけて存在する「淀の坂」と呼ばれる緩やかな下り坂でした。競走馬はこの下り坂を利用して勢いをつけ、直線距離約404mの平坦なゴール前で、一気のスピード比べ(瞬発力勝負)を繰り広げるのが典型的なパターンでした。
今回の改修では、この「淀の坂」自体は残されていますが、コース全体の高低差(トポグラフィー)が根本的に見直されました。最大の変更点は、これまで平坦だった向正面(バックストレッチ)から3コーナー手前にかけて、新たに高低差4.3mにも達する「丘」のような上り下りが新設された点です。
改修前の京都競馬場全体の高低差は3.1mでしたが、この改修により4.3mへと大きくなり、コース全体がよりタフなレイアウトへと変貌しました。
決定的な違いは「坂の位置」
とはいえ、阪神競馬場と京都競馬場の決定的な違い、すなわち攻略の鍵となるのは、両者の「坂の位置」が全く異なるという点です。
この違いが、求められる競走馬の適性を明確に分けています。
| 比較項目 (芝・外回り) | 阪神競馬場 | 京都競馬場 (改修後) |
|---|---|---|
| 直線の長さ (Aコース) | 約473.6m (長い) | 約403.7m (標準) |
| ゴール前の勾配 | 高低差1.8mの急坂あり | ほぼ平坦 (高低差0.8m) |
| コース全体の高低差 | 約1.9m (または2.4m) | 4.3m (新設の丘を含む) |
| 坂の主な位置 | ゴール前の直線 (残り200m~) | 向正面~3コーナー (残り約1200m~) |
| 求められる適性 | パワー、瞬発力、スタミナの総合力 | 道中のスタミナ、スピードの持続力 |
阪神競馬場は「最後の試練(クライマックス・スロープ)」です。
前述の通り、約474mの長い直線を走った「最後の最後」に、高低差1.8mの急坂が待ち構えています。ここでは、ラストスパートの瞬発力と、そのスピードを坂の頂上まで維持する絶対的なパワーと底力が問われます。まさにラストスパートでの力比べ(底力勝負)です。
京都競馬場は「道中の試練(ミドル・フィルター)」です。
一方、改修後の京都競馬場では、勝負所となる3コーナーの手前、つまり道中で高低差4.3mの「丘」を越える必要があります。ここでスタミナを消耗してしまうと、たとえゴール前が平坦であっても、残りの力(余力)は残っていません。
このため、京都競馬場で求められるのは、道中の坂を器用にこなしつつスタミナを温存できる能力と、坂を下って平坦な直線に入ってから、トップスピードを持続させる能力(あるいは再加速できる能力)です。
予想における注意点
このように、「坂の阪神」と「改修後の京都」は、どちらもタフなコースであることに変わりはありませんが、スタミナを要求されるタイミングが全く異なります。
阪神の急坂をパワーで克服した馬が、京都の道中の坂をこなせるとは限りません。逆に、京都の平坦な直線で鋭く伸びた馬が、阪神のゴール前の急坂で同じ脚を使えるとも限りません。
「坂の阪神、平坦の京都」という古い常識は捨て、両者の「坂の質と位置の違い」を明確に意識して予想を組み立てる必要があります。
阪神園芸と競馬場との関係性
- YUKINOSUKE
JRAの競馬開催において、レースの根幹を成す馬場のコンディションは、年間を通じて非常に高いレベルで維持管理されています。この馬場管理の話題において、「阪神園芸」という名前を耳にしたことがある競馬ファンの方も多いかもしれません。
阪神園芸株式会社は、プロ野球・阪神タイガースの本拠地である「甲子園球場」のグラウンド整備(特に土や芝の管理)で知られ、その卓越した技術は「神整備」とも称されるほど有名です。この日本トップクラスのグラウンドキーパー集団が、JRA(日本中央競馬会)、特に阪神競馬場と深い関係を持っているのです。
ただし、ここで混同してはいけない重要な点があります。阪神競馬場の馬場を「日々管理・運営」しているのは、JRAの職員で構成される「馬場造園課」という専門部署です。
管理主体はJRAの「馬場造園課」
日々の天候や芝の生育状況を詳細にチェックし、散水、芝刈り、肥料の散布、コースのクッション性を保つための作業(エアレーションなど)、そしてレース当日の馬場状態(良・稍重・重・不良)の発表まで、馬場に関する全ての「計画」と「日々のマネジメント」は、JRAの馬場造園課が責任を持って行っています。(参照:JRA採用サイト「働く人の紹介 馬場造園課」)
それでは、阪神園芸はどのような役割を担っているのでしょうか。彼らは、このJRA馬場造園課からの発注を受け、日々の管理業務の範囲を超える、高度な専門技術を要する「大規模な作業」や「デザイン業務」を担当する、重要なビジネスパートナーという関係です。
インプットされたデータベース情報(阪神園芸へのインタビュー記事)によれば、阪神園芸の社内には複数の専門部署があり、それぞれが競馬場と関わっています。
1. 芝の張替作業(造園工事部)
レースで使用され、特に傷みが激しくなった芝を、次の開催に向けて健全な状態に戻すため、オフシーズンには大規模な芝の張替作業が行われます。これは単なる芝刈りではなく、路盤の整備から行う大掛かりなものです。
この高度な専門技術を要する作業を、阪神園芸の「造園工事部」が担当しています。甲子園で培った芝生の造成・管理技術が、競馬場のタフな馬場作りにも活かされています。
2. ゴール板や施設の花装飾(園芸部・デザイン室)
阪神競馬場で開催されるG1レース(桜花賞や宝塚記念など)の際に、テレビ中継でも華やかに映し出されるゴール板周りの美しい花の装飾も、阪神園芸が手掛けています。
これは、同社の「園芸部」が花の選定や管理を行い、「営業部デザイン室」がレースのイメージに合わせたデザインを提案するという、専門部署間の連携によって実現されています。例えば、桜花賞であれば桜色のピンクを基調にするなど、レースの格を視覚的に高める重要な役割です。
JRAと阪神園芸の役割分担
このように、阪神競馬場の美しい馬場は、二者の協力体制によって維持されています。
- JRA 馬場造園課:馬場全体の「計画」「日々の管理」「状態の判断」を行う。
- 阪神園芸:JRAからの発注に基づき、「大規模な芝張替」や「花装飾のデザイン・設営」といった専門的な作業を実行する。
日々の運営はJRA、そして大規模な専門作業は阪神園芸が担うという、この強力なタッグこそが、過酷なレーススケジュールに耐えうる高水準の馬場コンディションを支えているのです。
阪神競馬場の水はけの秘密
- YUKINOSUKE
雨が降った際、馬場がどれだけ速く回復するのか、あるいは逆にどれだけ水分を含んでタフになるのかは、レース予想において最も重要なファクターの一つです。阪神競馬場の馬場は、この「水はけ(排水性)」と「保水性(クッション性)」という、一見相反する要素を高度な技術で両立させている点に、その最大の秘密があります。
2006年の大改修工事で芝外回りコースが新設されたことは有名ですが、同時に馬場(路盤)そのものも新しく築造されました。この改修の大きな目的の一つが、芝の健全な生育と、年間を通じて安定した馬場コンディションを提供することでした。
JRAの公式サイト内「馬場状態に関する基礎知識」のページによると、この時に築造された芝コースの路盤(ろばん:芝の根が張る下の層)は、特定の素材を精密にブレンドして作られています。
阪神競馬場の路盤材(2006年築造)
- 基材 (ベース): 青森県野辺地(のへじ)産の山砂
- 混合材 (改良材): 有機堆肥(木片を主原料とした堆肥)
(出典:JRA公式サイト 馬場状態に関する基礎知識)
ベースとなる青森県野辺地産の山砂は、粒が粗く揃っており、水がスムーズに下へ抜ける高い「排水性(透水性)」を確保する役割を担います。これにより、雨が降っても馬場の表面に水が溜まりにくくなります。
しかし、排水性だけを追求して砂利のようにしてしまうと、芝の生育に不可欠な水分や養分まで失われてしまいます。そこで重要な役割を果たすのが、混合材である「有機堆肥」です。この木片などを主原料とした堆肥が、土壌の中でスポンジのように機能し、芝の生育に必要な適度な「保水性」と「保肥力」(肥料を保持する力)を維持するのです。
ここで注目すべきは、他の競馬場との構造的な違いです。例えば、洋芝を採用している札幌競馬場などでは、馬場の悪化を防ぐために路盤の下に暗渠管(あんきょかん)と呼ばれる排水パイプを張り巡らせ、強制的に排水を行う構造が採用されています。
しかし、阪神競馬場の芝コースは、この暗渠管が(一部の水はけが悪い箇所を除き)意図的に多用されていないとされています。つまり、阪神競馬場の水はけは、パイプによる人工的な強制排水に大きく頼るのではなく、路盤そのもの(山砂と有機堆肥のブレンド)が持つ自然な排水能力と保水能力のバランスによって、その大部分がコントロールされているのです。
「水はけが良い」=「高速馬場」とは限らない!
この「有機堆肥」を混合し、「暗渠管に頼らない」という構造が、阪神競馬場の馬場を読み解く鍵です。これは、芝の生育のために、ある程度の「保水性」を意図的に重視していることを意味します。
したがって、雨が降った場合、カラカラに乾くのではなく、路盤(スポンジ)が適度に水分を吸収します。その結果、時計のかかる、パワーとスタミナが要求されるタフな馬場(いわゆる「重い馬場」)になりやすいという側面を強く持っています。雨が降った際は、「どれだけ水がはけたか」よりも、「どれだけ水分を含んだか」を見極める必要があります。
とはいえ、この絶妙なバランスは放置して維持できるものではありません。前述の通り、JRAの馬場造園課が、日々の天候や芝の生育状況を見極めながら、緻密な管理を行っています。例えば、芝の根の通気性を確保して排水性を高めるための「エアレーション作業」(馬場に無数の穴を開ける作業)や、逆に乾燥が続く夏場にはクッション性を保つための「散水作業」を徹底します。このような日々の懸命な管理作業こそが、阪神競馬場の馬場コンディションを支える最大の秘密と言えるでしょう。
阪神競馬場の馬場から読むデータ分析
- 阪神競馬場の馬場傾向を脚質で分析
- 阪神競馬場のクッション値の見方
- 阪神競馬場の血統の狙い目
- 阪神競馬場の騎手の得意不得意
- 阪神競馬場の馬場攻略の総まとめ
阪神競馬場の馬場傾向を脚質で分析
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阪神競馬場の馬場を攻略する上で、「脚質」(逃げ、先行、差し、追い込み)の傾向を読み解くことは非常に重要です。しかし、阪神競馬場はコースの種類が豊富なため、「阪神は差しが決まる」といった単純な覚え方では対応できません。
同じ競馬場内であっても、芝とダート、内回りと外回り、そして距離によって、有利な脚質は大きく変わります。ここでは、インプットされたデータベース情報に基づき、特に傾向が顕著なコースをピックアップして、その馬場傾向を詳細に分析します。
芝コースの脚質傾向:内と外で逆転するセオリー
阪神芝コースにおける最大のポイントは、「内回り」と「外回り」で有利な脚質がほぼ逆転するという点です。同じ芝コースでも、レイアウトの違いがレース展開に決定的な差を生み出します。
芝・内回り (1200m, 2000m, 2200mなど)
内回りコースは、直線距離が356.5mと、JRAの主要4場(東京・中山・京都・阪神)の中では最も短い設定です。この短い直線の、しかもゴール手前に高低差1.8mの急坂が待ち構えています。つまり、後方の馬が加速するための平坦な「助走路」がほとんど存在しません。
このため、4コーナー出口の時点で先頭から大きく離されていると、物理的に差し切ることは非常に困難になります。結果として、コーナーをロスなく立ち回れる「機動力(器用さ)」と、そのまま押し切れる「先行力」が圧倒的に有利となります。大阪杯(2000m)や宝塚記念(2200m)といったG1レースがタフな消耗戦になりやすいのも、このタイトなレイアウトが要因です。
特に芝1200mは、スタートから最初の3コーナーまでの距離が約243mと非常に短いため、ポジション争いが激化します。外枠の馬はポジションを取るためにかなりの脚を使うか、終始外側を回らされる不利を被るため、内枠からスムーズに先行できる馬がセオリー通りの狙い目となります。
芝・外回り (1600m, 1800m, 2400mなど)
一方、2006年に新設された外回りコースは、内回りとは全く異なる性質を持ちます。直線距離は473.6mと非常に長く、JRA全場の中でも第3位の長さを誇ります。この長い直線のゴール手前に、前述の急坂が設置されています。
このレイアウトでは、単純な先行力だけでは押し切ることができません。なぜなら、長い直線で後続馬がじっくりと脚を溜めて加速する時間が十分にあり、さらに先行馬はゴール前の急坂でスタミナを試されるからです。
結果として、道中で脚を溜め、長い直線で末脚を爆発させることができる「差し・追い込み」馬の活躍が格段に目立ちます。ただし、求められるのは一瞬のキレ味(瞬発力)だけではありません。坂を駆け上がる「パワー」と、400m以上トップスピードを維持し続ける「持続力」が伴っていなければ、差し切ることはできません。桜花賞や阪神ジュベナイルフィリーズ(1600m)が、しばしば世代の真の能力を問うレースとなるのは、このためです。
注意点:馬場状態による傾向変化(A/Bコース)
ここまでの話はあくまで一般的な傾向です。馬場のコンディション次第で、このセオリーは覆ることがあります。
- 開幕週(Aコース):JRA馬場造園課によって完璧に整備された、芝の状態が非常に良い時期です。この時期は芝のクッション性が高く、馬がバテにくいため、「前が止まらない」と呼ばれる高速馬場になりがちです。こうなると、外回りコースであっても先行馬がそのまま粘り込むケースが増えます。
- 開催後半(Bコース):開催が進むと内側の芝が荒れ、Bコース(内ラチから4m外に柵を設置)に変更されます。この時期は、騎手が意図的に荒れた内側を避け、馬場の良い外側を通るようになります。こうなると、必然的に外から追い込む「差し馬」の台頭が目立ち始めます。
常に「開催何週目か?」「AコースかBコースか?」を意識し、傾向の変化を読み取ることが重要です。
ダートコースの脚質傾向:絶対的な「先行」有利の原則
芝コースが「内」と「外」で複雑な傾向を見せるのに対し、阪神ダートコースは非常にシンプルです。ゴール前に急坂があるにもかかわらず、全体的に「先行」馬が非常に有利というデータが明確に出ています。
なぜダートは先行馬が有利なのか?
理由は大きく分けて2つあります。
- キックバック(砂の被り):ダートレースでは、前を走る馬が蹴り上げる砂(キックバック)が後続馬の顔に直撃します。馬はこれを極端に嫌がる動物であり、砂を被った瞬間に走る気をなくしてしまう(戦意喪失する)ケースが多々あります。必然的に、砂を被らない前方のポジションが有利になります。
- 要求されるパワー:ダートは芝よりも脚抜きが悪く、走るためにより多くのパワーを必要とします。後方から追い込む場合、馬群全体を抜き去るために、芝レースの何倍ものパワーとスタミナを消耗します。このため、物理的に後方一気が決まりにくいのです。
この「先行有利」の原則を踏まえた上で、各距離の特徴を見ていきましょう。
| 距離 | 脚質傾向 | ワンポイント解説 |
|---|---|---|
| ダート1200m | 逃げ・先行有利 | スタートから緩やかな下り坂が続くため、必然的にハイペースになります。このスピードに乗って、そのままゴールまで押し切れるスピード持続力のある馬が強い傾向です。 |
| ダート1400m | 先行有利 (差しも注意) |
「芝スタート」で序盤のペースが非常に速くなりやすいため、逃げ馬が最後の急坂でバテて失速する展開も目立ちます。逃げ馬の直後で脚を溜められる先行馬や、ある程度の位置から差せる馬に妙味があります。 |
| ダート1800m | 先行馬が圧倒的有利 | スタートから最初の1コーナーまでの距離が約300mと短いため、外枠の馬はポジション取りに苦労します。さらに「2度の坂越え」という過酷なレイアウトが、後方からの追い込み馬のスタミナを奪います。結果として、内枠からスムーズに先行できる馬の勝率・連対率が非常に高くなっています。 |
| ダート2000m | 先行有利 | 「芝スタート」で、なおかつ1800m同様に「2度の坂越え」が求められるタフなコースです。ペースは1800mより落ち着きやすいですが、スタミナ消耗戦となるため、やはり後方から捲くるのは難しく、先行馬が優勢です。 |
阪神競馬場のクッション値の見方
- YUKINOSUKE
2020年の秋からJRAが全競馬場で公表を開始した「クッション値」は、それまでの「含水率」に加え、馬場状態を客観的に判断する新しい指標として注目されています。これは、「ゴーイングメーター」と呼ばれる専用の測定器(鉄のハンマーのようなもの)を馬場の数カ所に落とし、その沈み込み具合や反発力を測定して、馬場の「硬さ(クッション性)」を数値化したものです。
JRAの定義によれば、「数値が高いほど馬場の反発力が高く(=馬場が硬い)」「数値が低いほど反発力が低い(=馬場が軟らかい)」とされています。
この「硬い」という部分が、一般的に「馬の脚が沈み込まず、強い反発力を得られるため、時計が出やすい(高速馬場)」と短絡的に解釈されがちです。確かに、その傾向自体は間違いではありません。しかし、このクッション値の解釈には、特に阪神競馬場において、非常に重要な「落とし穴」が存在します。
クッション値のよくある誤解と2つの注意点
- 競馬場間での単純比較は非常に危険
まず大前提として、クッション値は競馬場間での単純比較ができません。データベース(TSUBA氏の記事)の分析によれば、「東京競馬場のクッション値9.5」と「阪神競馬場のクッション値9.5」は、必ずしも同じ馬場状態を意味しません。
なぜならば、各競馬場は路盤(馬場の基礎構造)や使用されている芝の種類(野芝、洋芝、オーバーシード)が全く異なるため、クッション値の平均値や分布の幅も競馬場ごとに大きく異なるからです。例えば、阪神競馬場は東京競馬場に比べてクッション値が10.0を超えることも珍しくありませんが、だからといって阪神の方が東京より常に高速馬場であるとは断言できないのです。 - 「馬場の硬さ」と「馬場の軽さ(時計)」は別物
次に、同じ競馬場であっても、クッション値と馬場の軽さ(時計)は「厳密には」比例しないという点です。統計的に見ても、同じ「クッション値9.3」と発表された日でも、実際のレース時計(馬場差)は大きく変動することがあります。
レースの時計は、馬場の硬さ(クッション値)だけで決まるわけではありません。当日の風向き(特に直線)、湿度、気温、さらには芝の長さ(刈高)など、無数の要因が複雑に絡み合って決定されます。クッション値はあくまで馬場の「硬さ」を示す一つの指標であり、レースの時計を決定づける唯一絶対の数値ではないことを理解する必要があります。
阪神競馬場におけるクッション値の特異性
そして、ここからが阪神競馬場を攻略する上で最も重要な点です。データベース(TSUBA氏の記事)で公開されている統計分析によると、非常に興味深いデータがあります。それは、阪神競馬場は、このクッション値と実際の馬場差(時計の軽重)の相関関係が、他の主要競馬場(特に東京競馬場や小倉競馬場)と比較して低いという結果です。
つまり、他の競馬場では「クッション値が高いから、今日は時計が速そうだ」という予測がある程度成り立つ場合でも、阪神競馬場ではその予測が裏切られやすい、ということです。
なぜ阪神競馬場は、クッション値が時計に結びつきにくいのでしょうか。そのヒントは、前述の「阪神競馬場 水はけの秘密」のセクションに隠されています。
前述の通り、阪神競馬場の路盤は、ベースとなる「山砂」に、保水性を高めるための「有機堆肥」を意図的に混合して造られています。この有機堆肥がスポンジのように機能し、高い「保水性」を持つことが阪神競馬場の馬場特性の一つです。
このため、クッション値の測定器が示す「表面的な硬さ」と、路盤内部が実際に保持している「水分量(=時計のかかり具合、重さ)」が、必ずしも一致しない可能性が考えられます。見た目(クッション値)は硬そう(数値が高い)でも、実際には路盤が水分を含んでいて、走ってみると時計のかかるタフな馬場になっている、というケースが他の競馬場よりも起こりやすいのです。
結論:阪神のクッション値は「参考程度」に留める
したがって、阪神競馬場の予想においては、「今日のクッション値が高いから高速馬場だ」「低いから時計がかかる」と、クッション値だけを見て短絡的に判断するのは特に危険です。
クッション値はあくまで「馬場の硬軟」を判断する参考情報の一つとして留めるべきです。それ以上に、当日の実際のレースラップ(特に前半と後半の時計のバランス)や、ゴール前で失速する馬の様子(バテ方)を注意深く観察し、「今日は本当に時計が速いのか、それとも見かけ倒しか」を総合的に判断する姿勢が、阪神競馬場の馬場攻略には不可欠と言えるでしょう。
阪神競馬場の血統の狙い目
- YUKINOSUKE
阪神競馬場のコース、特に芝外回りやダート1800mは、ゴール前に設置された急坂によって非常にタフなレイアウトとなっています。このコースを攻略するには、単なるスピードや近走の着順だけでなく、その馬が持つ血統的な背景、つまり「急坂を克服できるパワーやスタミナ」を父(種牡馬)や母系から受け継いでいるかが非常に重要になります。
インプットされたデータベース情報に基づき、阪神競馬場の芝コースとダートコースそれぞれで注目すべき血統(種牡馬)の傾向を、その理由と共に詳しく解説します。
芝コース:「瞬発力」と「パワー」の融合が鍵
阪神の芝コース、特にG1が多数行われる外回り(1600mなど)は、473.6mという長い直線が特徴です。ここで求められるのは、長い直線でトップスピードを発揮するための「瞬発力」と、ゴール前の急坂を失速せずに駆け上がる「パワー」という、相反する要素の両立です。
- ディープインパクト系
日本の競馬を代表する王道血統であり、その産駒(さんく)は瞬発力とスピード持続力に優れています。この能力は、阪神芝外回りの長い直線で末脚(すえあし:レース終盤のスピード)を爆発させる上で最大の武器となります。
ただし、注意点もあります。ディープインパクト系の特徴である「軽さ」が、パワーを要求される急坂では裏目に出ることもあります。このため、母系(母の父、BMS)にパワー型の血統(例えば米国のダート血統など)を取り入れている馬が、瞬発力と坂をこなすパワーを兼ね備えた「阪神巧者」となるケースが多く見られます。
- キングカメハメハ系 (ルーラーシップ・ドゥラメンテなど)
ディープインパクト系とは対照的に、「パワー」型の代表格と言える血統です。父であるキングカメハメハや、その父Kingmambo(キンカメ産駒の母父としても影響力が大きい)から受け継ぐ馬力は、まさに阪神の急坂を力強く駆け上がるためにあると言っても過言ではありません。
特に芝1800mや内回り2000mといった、スタミナとパワーが複合的に問われる距離での好走が目立ちます。また、雨が降って馬場が渋った際(稍重~重馬場)には、スピードタイプの血統が苦戦する中で、このパワー型血統の信頼度がさらに増します。
- ハーツクライ系・ステイゴールド系
これらは「スタミナ」と「持続力」に秀でた系統です。ハーツクライ産駒は、一瞬のキレ味で勝負するタイプよりも、4コーナーからゴールまでジリジリと長く良い脚を使い続ける展開を得意とします。ステイゴールド系(オルフェーヴル、ゴールドシップなど)は、スタミナと特有の勝負根性を武器に、タフな展開や荒れた馬場、消耗戦になった際に真価を発揮します。
これらの系統は、開幕週の高速馬場よりも、時計がかかり始めた開催後半や、スタミナが問われる中長距離戦で浮上する傾向があり、人気薄で波乱を演出することも多いため注意が必要です。
ダートコース:米国血統の「パワー」と「スピード」
阪神ダートコースは、ゴール前の急坂、そして1800m戦では「2度の坂越え」が求められる、JRA屈指のパワーコースです。このため、日本のダート界全体の傾向と同様に、タフなダート競馬の本場である米国の血統(種牡馬)が非常に強い傾向を示します。
- ヘニーヒューズ産駒
特にダート1400m戦で注目したい血統です。前述の通り、このコースは「芝スタート」であり、序盤のダッシュ力(先行力)が問われます。ヘニーヒューズ産駒は、父系(Storm Cat系)から受け継ぐスピード能力で芝スタートをこなし、ダートに入ってからもそのスピードを持続させる競馬を得意とします。
- シニスターミニスター産駒
阪神ダート1800mのような、タフな消耗戦でこそ強さを発揮する血統です。「2度の坂越え」が待ち受けるこのコースでは、先行力とレース後半までバテない持続力(しぶとさ)が不可欠です。シニスターミニスター産駒は、まさにこのタフな流れに対応できるスタミナとパワーを兼ね備えています。
- パイロ産駒
米国の名種牡馬エーピーインディ(A.P. Indy)の系統であり、豊富なスタミナと力強い差し脚が特徴です。阪神ダートは基本的に先行馬が有利ですが、芝スタートの1400m戦などでペースが速くなりすぎた場合、先行馬が最後の急坂で苦しくなる展開が生まれます。このような消耗戦において、後方でスタミナを温存していたパイロ産駒が、力強い末脚で差し切るパターンが見られます。
血統予想のポイント
阪神競馬場は、単に「前走で勝ったから」という理由だけでは通用しない、コース適性が明確に出る競馬場です。予想の際は、その馬の近走成績だけでなく、父や母の父が「阪神の急坂を克服できるパワーやスタミナ」を持っている血統かどうかをチェックすることが、的中への近道となります。
阪神競馬場の騎手の得意不得意
- YUKINOSUKE
競馬において、競走馬の能力が最も重要であることは言うまでもありません。しかし、その馬の能力を最大限に引き出すのは騎手(ジョッキー)の腕前です。特に阪神競馬場のような特徴的なコース(急坂、内回り・外回り)では、コースを知り尽くした騎手の存在が、馬券攻略の重要なセオリーとなります。
阪神競馬場は関西の主要開催場であるため、当然ながら栗東(関西)所属の騎手が中心となります。インプットされたデータベース情報(浅次郎氏の記事、馬の達人記事など)に基づくと、近年の阪神競馬場において、特に注目すべき騎手の傾向が存在します。
信頼度の高いトップジョッキー
ここでは、勝率や連対率(2着以内に入る確率)、複勝率(3着以内に入る確率)が極めて高く、人気馬に騎乗した際の信頼度が抜群の騎手を紹介します。
川田 将雅 騎手(芝・ダート問わず)
現在の関西競馬を代表するトップジョッキーであり、阪神競馬場では芝・ダートを問わず圧倒的な成績を誇ります。有力馬の騎乗依頼が集中していることも要因ですが、それを差し引いても、コースを熟知した騎乗技術は群を抜いています。
特に注目すべきは、その驚異的な複勝率です。データベース(浅次郎氏の記事)によれば、芝コースでの複勝率は58%超、ダートコースでも63%超という高い数値を記録しています。これは、人気馬に騎乗した際に、ほぼ確実に馬券圏内に持ってくる技術の高さを示しています。阪神の長い外回りコースでの仕掛けどころ、あるいは内回りでのロスない立ち回りなど、総合力が高く、阪神開催ではまず馬券の軸として検討しなければならない騎手です。
岩田 望来 騎手(特にダート)
近年急速に頭角を現し、勝利数でリーディング上位を争う若手騎手の一人です。阪神競馬場では特にダートコースでの成績が優秀で、芝コースよりも高い勝率・連対率を記録しているというデータがあります。
人気馬での取りこぼしが少ないだけでなく、人気薄の馬を上位に持ってくるケースも目立ちます。パワーが要求される阪神ダートにおいて、馬の力を引き出す騎乗が光るため、ダート戦では特に注目が必要です。
松山 弘平 騎手(ダートでの上昇度)
芝コースでもG1を勝利するなど安定した成績を残していますが、データ上、特に注目すべきはダートコースです。データベース(浅次郎氏の記事)によれば、芝コースの複勝率(30%台)に比べて、ダートコースでの複勝率が40%台へと大幅に上昇するという特徴があります。
このデータは、松山騎手が阪神ダートで人気以上の走りを見せている証拠です。芝のレースで凡走が続いていた馬が、松山騎手騎乗でダート替わり(芝からダートへの出走)となった際や、ダート戦で人気薄となっている際には、特に注意が必要な騎手と言えるでしょう。
馬券妙味のある「穴」騎手
勝率や複勝率だけでなく、「馬券的な妙味」つまり単勝回収率や複勝回収率(馬券を購入し続けた場合の利益率)が高い、いわゆる「穴騎手」にも注目です。人気馬に乗る機会はトップジョッキーより少なくても、人気薄の馬で好走するケースが目立つ騎手たちです。
回収率で注目したい騎手たち
- 鮫島 克駿 騎手(芝):データ上、特に芝コースでの回収率妙味があるとされています。中穴人気の馬に騎乗した際、巧みなコース取りで上位に食い込ませる技術が光ります。
- 岩田 康誠 騎手(ダート):ベテランらしい勝負強さが持ち味で、特にパワーが要求される阪神ダートでの好走が目立ちます。そのアグレッシブな騎乗スタイルが、阪神の急坂で馬の底力を引き出す要因となっていると考えられます。
- 吉田 隼人 騎手(芝・ダート):美浦(関東)所属の騎手ですが、関西圏での騎乗も多く、阪神では芝・ダート問わず安定した成績を残しています。関東の騎手がわざわざ乗りに来るということは、それだけ勝負気配が高い馬である可能性もあり、人気以上に警戒すべき存在です。
騎手データ利用時の注意点
騎手の得意不得意データは非常に有効ですが、注意点もあります。第一に、川田騎手のようにあまりにも信頼度が高い騎手は、当然ながら馬券も売れすぎる(過剰人気)傾向にあります。そのため、複勝率は高くても、単勝回収率や複勝回収率は100%を下回ることが常です。馬券の「軸」としては最適ですが、「儲ける」ための主力とするかは別の判断が必要です。
第二に、データは常に更新されるということです。ここで挙げた傾向は、あくまでインプットされたデータベース(過去3年程度)に基づくものです。騎手の成長やスランプによって、傾向は変化し続けるため、常に最新の情報を確認する姿勢が大切です。
阪神競馬場 馬場攻略の総まとめ
- YUKINOSUKE
この記事で解説してきた、阪神競馬場の馬場を攻略するために必要な全ての要点を、最後に改めて整理します。阪神競馬場の全てのコースレイアウトを貫く最大公約数は、「パワー」と「スタミナ」です。この点を無視して予想を組み立てることはできません。
なぜなら、前述の通り、阪神競馬場の最大の特徴は、ゴール前直線(芝は高低差1.8m、ダートは1.6m)に設置された急坂にあるからです。この坂が、スタミナのない馬やパワー不足の馬を容赦なくふるいにかけます。
この「坂」と「直線の長さ」の関係性によって、芝コースの傾向は明確に分かれます。芝外回りコースは、直線が約474mと非常に長いため、差し馬や追い込み馬がじっくりと脚を溜める時間があります。しかし、最後は急坂を駆け上がるパワーも求められるため、瞬発力と持続力、パワーを兼ね備えた総合力の高い馬が活躍します。
一方で、芝内回りコースは、直線が約356mと短くなります。このため、後方からの追い込みは物理的に非常に難しく、コーナーをロスなく立ち回れる器用さを持った先行馬が圧倒的に有利な傾向にあります。
ダートコースも、芝と同様にゴール前の急坂が待ち構えており、パワーが要求される点は共通しています。特に特徴的なのがダート1800mで、「2度の坂越え」が求められる過酷なレイアウトです。スタートから1コーナーまでの距離も短いため、先行馬が圧倒的に有利なコースとして知られています。また、ダート1400mは、スピードの出やすい「芝スタート」が採用されている特殊なコースであり、高いダッシュ力が求められる点も注意が必要です。
馬場状態を読み解く上でも、阪神ならではの注意点があります。阪神の路盤は「山砂」と「有機堆肥」をブレンドして造られており、排水性と保水性の両立を目指した構造です。このため、雨が降ると適度に水分を含み、時計のかかるタフな馬場になりやすい側面を持っています。
このような複雑な路盤特性のためか、クッション値の解釈には細心の注意を払わなければなりません。クッション値は競馬場ごとに基準が異なり、単純比較は危険です。特に阪神競馬場は、クッション値の数値と、実際のレース時計(馬場の軽重)との相関が低いというデータもあり、数値を鵜呑みにするのは禁物と言えるでしょう。
他にも、馬場管理はJRAの馬場造園課が主体となり、阪神園芸が芝張替などで協力している点や、開催が進むとAコースからBコースへ変更され、内側の荒れた馬場がカバーされる点も考慮すべきです。比較対象となる京都競馬場は、2023年の改修で「平坦」から「道中に坂がある」コースへと変貌しました。阪神は「ゴール前」の坂、京都は「道中」の坂、という特性の違いを理解することも重要です。
最終的な馬選びでは、このタフなコースをこなせる血統(芝はキングカメハメハ系などのパワー型、ダートはヘニーヒューズ産駒などの米国型)や、コースを熟知した騎手(芝ダート問わず信頼度が高い川田将雅騎手や、特にダートでの好成績が目立つ岩田望来騎手、松山弘平騎手など)に注目することが的中への近道となります。
阪神競馬場の馬場を攻略するには、これらの多様な要素を総合的に分析し、「パワー」という一貫したテーマを見つけ出すことが何よりも大切です。
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