競馬の期待値は意味ない?実態と3つの壁を徹底解説

競馬の知識
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こんにちは。YUKINOSUKEです。

あなたは今、「競馬の期待値なんて意味ないんじゃないか?」という強烈な疑問を抱いて、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。必死に計算式を覚えて、期待値が高いと判定された馬を買い続けても、収支は一向にプラスにならない。それどころか、的中率が下がって資金が減っていくスピードばかりが早くなる。そんな経験を繰り返していれば、理論そのものを疑いたくなる気持ちは痛いほどよく分かります。

実際、私自身も「期待値信者」としてデビューした当初、全く同じ壁にぶち当たりました。「数値上は勝てるはずなのに、なぜ現実はこうも残酷なのか」と。

しかし、そこで諦めて「やっぱり運が全てだ」と直感勝負に戻ってしまうのは少し待ってください。実は、あなたが感じている「意味がない」という感覚は、半分は正解で、半分は誤解なのです。オッズの変動、控除率という高い壁、そして人間の心理バイアス。これらが複雑に絡み合い、単純な理論を無力化しているのが現代競馬の実態です。

ここでは、なぜ多くの人が期待値理論に挫折してしまうのか、その構造的な「3つの壁」を徹底的に解剖します。そして、その壁を乗り越え、理論を「机上の空論」から「実戦の武器」に変えるための思考法について、私の経験と最新のデータを交えながらお話ししていきたいと思います。

この記事を読むことで理解できること

  • 期待値理論がJRAの現場で通用しないと感じてしまう「構造的な理由」
  • 計算式だけでは見抜けない、オッズと勝率の間に潜む「情報の非対称性」
  • リスクを管理しながら資産を守り抜くための「プロ仕様の資金管理術(ケリー基準)」
  • AI時代において、理論を味方につけて競馬を楽しみながら勝つための「学習リソース」

ここからは、なぜ多くの人が「期待値なんて意味がない」と感じてしまうのか、その実態と私たちが乗り越えるべき3つの壁について、詳しく解説していきます。

  1. 競馬で期待値は意味ない?実態と3つの壁
    1. 期待値は実際どうなの?理論と現実の乖離
    2. 勝率とオッズを用いた期待値の計算方法
    3. 計算ツールやアプリは本当に役立つのか
    4. 控除率の壁とオッズ変動が招く無意味さ
      1. 第一の壁:25%という暴力的手数料(控除率)
      2. 第二の壁:AIによる「期待値の蒸発」とオッズの嘘
    5. 本命と穴馬に潜むバイアスの正体
      1. 世界共通の現象「本命-大穴バイアス」
      2. 最終レースの罠「ブレークイーブン効果」
  2. 競馬の期待値は意味ないを覆す勝ち方
    1. 1番人気は危険?データが示す真の妙味
      1. 「勝つ確率が高い」と「儲かる」は全くの別物
      2. 大衆が「嫌悪するデータ」にこそ、黄金が眠る
        1. 1. 馬体重の「激変」を恐れるな
        2. 2. コース形状による「枠順バイアス」
        3. 3. 開幕週の「前残り」は想像以上
    2. 破産しないための資金管理とケリー基準
      1. 伝説の数式「ケリー基準」とは?
      2. なぜ「フルケリー」は競馬で自殺行為なのか
        1. 1. 勝率(p)はあくまで「推定」に過ぎない
        2. 2. メンタルを破壊するボラティリティ
      3. プロが実践する「フラクショナルケリー」の守り方
    3. AI予想と最新技術が変える市場の未来
      1. 「効率的市場」のジレンマ:AIが普及すると勝てなくなる?
      2. 人間に残された最後の聖域:「アナログ情報」
      3. 「データ派だから映像は見ない」は時代遅れになる
    4. 理論を学ぶためのおすすめの本と書籍
      1. 1. 確率思考のバイブル:『馬券億り人』
      2. 2. 期待値の”ありか”を言語化:『穴パターン事典』
      3. 3. 基礎なくして応用なし:『勝ち馬がわかる競馬の教科書』
    5. 結論:競馬の期待値は意味ないわけではない
      1. 「意味がない」と言われる本当の理由
      2. それでも「意味がある」と言い切れる理由
      3. 期待値は「魔法の杖」ではなく「羅針盤」
      4. 今日から始める「投資家」への第一歩

競馬で期待値は意味ない?実態と3つの壁

「理論通りに買えば勝てるはず」そう思って始めた期待値投資が、なぜうまくいかないのか。まずはその背景にある構造的な問題を、3つの視点から紐解いていきます。これを理解しないまま馬券を買うのは、目隠しをして高速道路を歩くようなものです。

期待値は実際どうなの?理論と現実の乖離

「期待値」という言葉には、どこか魔力があります。「これさえ知っていれば勝てる」「数学的な正解がある」と聞けば、誰だって飛びつきたくなりますよね。私自身、初めてこの概念を知ったときは、「これでJRAをATMにできる!」と本気で興奮したのを覚えています。

数学的な定義だけで言えば、期待値とは「1回の試行で得られるリターンの平均値」のこと。これが1.0(100%)を超え続けていれば、理論上、資産は右肩上がりに増えていくはずです。しかし、いざ競馬という泥臭い現場にこの綺麗な理論を持ち込むと、想像を絶する「厄介な現実」が牙を剥きます。

具体的に、ある「超優秀な穴馬」の例を見てみましょう。

【例】期待値1.5(回収率150%)の馬

  • 単勝オッズ:30.0倍
  • 推定勝率:5.0%(20回に1回勝つ計算)
  • 期待値:30 × 0.05 = 1.5

期待値「1.5」というのは、投資の世界ではあり得ないほどの高水準です。間違いなく「買い」のサインです。しかし、ここで冷静になって「勝率5%」の意味を噛み締めてみてください。

これは、「20回走って1回勝つかどうか」という確率です。裏を返せば、「95%の確率で外れる」ということです。確率の偏りを考慮すれば、30連敗、40連敗することだって日常茶飯事です。

「計算上は儲かるはずだ」と頭では分かっていても、来る日も来る日も馬券が紙屑に変わっていく現実に、あなたは耐えられるでしょうか?

「もしかして、計算が間違っているんじゃないか?」
「この理論は、机上の空論(オカルト)だったんじゃないか?」
「八百長があるんじゃないか?」

10連敗を超えたあたりから、人間のメンタルは正常な判断力を失います。そして、疑心暗鬼に陥った挙句、ついに大穴が激走する直前で「もう期待値なんて意味がない!」と叫んで馬券を買うのをやめてしまうのです。これが、理論と現実の間に横たわる最大の乖離です。

また、多くの人が誤解しているのが、「的中率」と「期待値」の残酷なトレードオフ関係です。この2つは、あちらを立てればこちらが立たず、というシーソーの関係にあります。

視点 的中率重視(ファン心理) 期待値重視(投資家心理)
狙い 「当てたい」「外したくない」 「増やしたい」「儲けたい」
買う馬 1番人気や実力馬
(オッズ低め)
過小評価された穴馬
(オッズ高め)
精神状態 よく当たるので楽しい。
ドーパミンが出る。
全然当たらないので苦痛。
孤独との戦い。
結末 ジリジリ負けていく
(控除率の壁)
耐え抜けば資産が増える
(理論の収束)

的中率を求めると、どうしてもみんなが買う「当たりそうな馬(オッズが低い馬)」を買うことになり、期待値は下がります。逆に、期待値を求めると、みんなが買わない「当たりそうにない馬(オッズが高い馬)」を買う必要があり、的中率は劇的に下がります。

「期待値を追求する」ということは、この孤独な「不的中の期間(ドローダウン)」に耐え抜く覚悟を持つことと同義なのです。

多くの人が「期待値は意味ない」と言って脱落していくのは、理論そのものが間違っているからではありません。理論が正しく機能するまでの「負け続ける期間」の精神的苦痛に耐えられず、心が折れてしまうからです。まずは、「正しいことをしていても負け続ける時期がある」という事実を受け入れること。それが、期待値投資のスタートラインだと私は思います。

勝率とオッズを用いた期待値の計算方法

「期待値を計算する」と聞くと、何か複雑な数式や高度な数学が必要だと思われるかもしれません。しかし、そのロジック自体は拍子抜けするほどシンプルです。まずは基本となる計算式を見てみましょう。

期待値(EV)の基本計算式

期待値 = ( 推定勝率 × オッズ ) - 1

  • 推定勝率:あなたが予想する「この馬が勝つ確率」(例:20%なら0.2)
  • オッズ:JRAが発表している確定オッズ(例:5.0倍)
  • -1:元本(掛け金)を引くための処理

※算出された数値がプラス(0以上)であれば、理論上は「買えば買うほど儲かる馬券」となります。

この式を見て、何か違和感を覚えませんか? そうです。変数はたった2つしかありません。「オッズ」と「勝率」です。

「オッズ」は簡単です。スマホでJRAの公式サイトやアプリを開けば、誰でもリアルタイムで正確な数字(10.5倍など)を知ることができます。しかし、もう一つの変数である「推定勝率」は、競馬新聞のどこを探しても、JRAのホームページのどこを見ても、絶対に書いてありません。

ここが、サイコロやルーレットなどの「カジノゲーム」と「競馬」の決定的な違いであり、多くの人が期待値計算で挫折する最大の落とし穴です。

ゲームの種類 確率の性質 期待値計算の難易度
サイコロ・ルーレット 客観的確率
(サイコロの1が出る確率は誰が何と言おうと1/6)
非常に簡単
(誰が計算しても同じ答えになる)
競馬・株式投資 主観的確率
(勝つ確率は予想する人の分析力によって変わる)
極めて困難
(計算する人によって答えがバラバラになる)

競馬において、期待値計算をするということは、単に式に数字を当てはめる作業ではありません。「神のみぞ知る『真の勝率』を、いかに正確に見積もるか」という、答えのないクイズに挑むことと同義なのです。

もし、あなたの勝率の見積もりが甘かったらどうなるでしょうか? ここで一つのシミュレーションを見てみましょう。

【シミュレーション】単勝10倍の穴馬を見つけた場合あなたは「この馬は調子が良いから、5回に1回は勝てる(勝率20%)」と予想しました。

  • あなたの計算:20% × 10倍 - 1 = +1.0(超お宝馬券!)

しかし、実際にはその馬の実力は低く、神の視点で見れば「20回に1回しか勝てない(勝率5%)」馬だったとします。

  • 真実の期待値:5% × 10倍 - 1 = -0.5(買えば買うほど破産する馬券)

恐ろしいことに、計算式自体は間違っていません。しかし、入力したデータ(勝率)が間違っているため、出力された期待値は「あなたを破産させるための偽の信号」になってしまっています。

データ分析の世界には、「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れれば、ゴミが出てくる)」という格言があります。どれだけ高価な計算ソフトを使っても、どれだけ完璧に数式を暗記しても、最初に入力する「勝率」という素材が腐っていれば、出来上がる料理(期待値)もまた、食べられないものになるのです。

「期待値なんて計算しても意味がない」と感じてしまう人の正体は、実は期待値という理論そのものの欠陥ではなく、自分自身の「勝率見積もりの甘さ(主観的確率のズレ)」に振り回されている状態だと言えるでしょう。この「ズレ」を修正しない限り、どんな計算も徒労に終わってしまいます。

あわせて読みたい:競馬の回収率の平均は?計算式と100%を超える方法を解説

計算ツールやアプリは本当に役立つのか

「手計算は面倒だし、自分の予想に自信がないから」と、期待値計算ができる便利なツールやアプリに頼る方も多いでしょう。私自身も、JRA公式データの『JRA-VAN DataLab.』で提供されているソフトや、競馬ファンなら誰もが知る『TARGET frontier JV』などを長年愛用してきました。

結論から言えば、これらのツールは間違いなく強力です。人間が電卓を叩いていては一生かかっても処理しきれない数万レース分のデータを、わずか数秒で解析し、「期待値Aランク」「スピード指数1位」といった明確な答えを提示してくれます。これを使わない手はありません。

しかし、ここに多くの人が気づいていない、市場原理に根差した「自己破壊的なパラドックス」が存在します。ツールを使えば使うほど、逆に勝てなくなるという恐ろしい現象です。

【警告】人気ツールのパラドックス
市販の有名ツールやダウンロード数が多いアプリが、「この馬は期待値が高い!(激熱)」と表示した瞬間、何が起きるでしょうか?答えは、「全国のユーザーが一斉にその馬を買う」です。その結果、オッズはまたたく間に急降下します。購入しようとした時点(あるいは朝の段階)では「単勝20倍」で期待値がプラスだった馬が、多くのツール利用者の投票によって、レース発走時には「単勝10倍」まで買われ、期待値がマイナス(損失ゾーン)に転落してしまうのです。

これを経済学や社会学の用語で「自己破壊的予言(Self-Defeating Prophecy)」と呼びます。「予言(=ツールによる高期待値の判定)が公表されることによって、人々が行動を変え、結果として予言が外れてしまう」という現象です。

具体的なオッズの動きを見てみると、その残酷さがよく分かります。

時間帯 オッズ 推定勝率 期待値(EV) 状態
朝 10:00
(ツール判定時)
15.0倍 10% 1.50 超優良
(ツールは「買い」と推奨)
発走 5分前
(大衆の投票後)
12.0倍 10% 1.20 優良
(まだギリギリ買える)
確定オッズ
(AI・大口介入後)
8.0倍 10% 0.80 損失
(控除率の壁に負ける)

多くのユーザーは、朝や昼の段階でツールが示した「期待値1.50」という数値を信じて投票します。しかし、実際の結果(リターン)は確定オッズの「0.80」に基づいて決まります。

「ソフトの通りに買ったのに負けた」「AI指数の上位を買い続けているのに回収率が上がらない」という嘆きは、ツールが間違っているわけではありません。あなたが(そして他の大勢が)その馬を買ったことによって、期待値が市場から消滅した結果なのです。

ツールを「毒」にしないための正しい付き合い方

  • 答えではなく「時短」として使う:全頭のデータを精査するのは不可能です。ツールはあくまで「調べる価値のある馬」をピックアップするためのスクリーニング(絞り込み)機器として使いましょう。
  • 最終オッズは自分の目で確認する:ツールが「買い」と出しても、締め切り直前のオッズが下がっていれば、勇気を持って「見(ケン)」をする判断が必要です。
  • マイナーな条件設定を探す:デフォルト設定の「おすすめ」はみんなが見ています。自分なりに条件をカスタマイズし、他人と被らない「隙間」を探す工夫が不可欠です。

ツールはあくまで「補助輪」であり、ハンドルを握ってアクセルを踏むのは人間です。「なぜその数値が出ているのか」というロジックを理解せず、画面の数値を盲信するだけでは、養分になることから逃れられません。便利な道具に使われるのではなく、使いこなす側の思考を持つことが重要です。

控除率の壁とオッズ変動が招く無意味さ

私たちが「競馬で勝つこと」を難しく感じ、時に「期待値なんて計算しても無駄だ」と絶望してしまう最大の理由。それは、個人の予想力不足ではなく、競馬というゲームそのものが抱える構造的な欠陥にあります。ここでは、プレイヤーの前に立ちはだかる「2つの巨大な壁」について、その残酷な実態を包み隠さずお話しします。

第一の壁:25%という暴力的手数料(控除率)

投資の世界では、手数料が0.1%違うだけで「高い」と敬遠されます。しかし、私たちが戦っている競馬というフィールドでは、あり得ないほど高額な手数料が徴収されています。それがJRAの「控除率(テラ銭)」です。

JRAは「パリミュチュエル方式」を採用しており、集まった馬券の売上から主催者の取り分(約20〜30%)を差し引き、残ったお金(約70〜80%)を的中者だけで山分けします。これは、馬券を買った瞬間に、私たちの期待値が自動的に「0.75〜0.80」に強制設定されることを意味します。

具体的に、どの券種がどれくらい不利なのか、JRAの公式データを基に整理しました。

投票法(券種) 払戻率(還元率) 控除率(手数料) 難易度
単勝・複勝 80.00% 20.00%
馬連・ワイド 77.50% 22.50%
馬単・3連複 75.00% 25.00%
3連単 72.50% 27.50% 超高
WIN5 70.00% 30.00% 極悪

(出典:JRA公式サイト『勝馬投票法ごとの払戻率』

数学的な絶望
期待値を1.0以上(=プラス収支)にするためには、平均的なプレイヤーよりも「控除率の分だけ」優れた予想をする必要があります。
例えば3連単(払戻率72.5%)で勝つためには、市場平均よりも約1.38倍(1 ÷ 0.725)高い精度で馬を選ばなければなりません。このハードルの高さが、中途半端な知識を持つ層を駆逐し、「結局何をやっても意味がない」という無力感を醸成しています。

第二の壁:AIによる「期待値の蒸発」とオッズの嘘

控除率以上に厄介なのが、現代競馬特有の「オッズの流動性」です。

あなたは、「朝見たときは単勝15倍で期待値抜群だったのに、レースが終わってみれば8倍まで下がっていた」という経験はありませんか? これこそが、多くの期待値投資家を引退に追い込む「期待値の蒸発」現象です。

かつては、締め切り直前のオッズ変動は大口の個人投資家によるものでしたが、現在は状況が異なります。高度なアルゴリズムを搭載した「AI自動投票システム」が市場を監視しているのです。

AIが期待値を消し去るメカニズム

  1. 監視:AIが全レースのオッズをリアルタイムで監視し、「実力に対してオッズが甘い馬(期待値が高い馬)」を探知します。
  2. 待機:一般ファンが投票を終えるのを待ち、オッズが確定する直前(締め切り1〜5分前)までじっと待ちます。
  3. 急襲:締め切り直前に、期待値がプラスの領域ギリギリまで大量の資金を自動投入します。
  4. 結果:私たちが購入した時点で「美味しい」と思っていたオッズは、発走時には「適正価格(美味しくないオッズ)」まで修正されてしまいます。

つまり、私たちがモニターで見ているオッズは、あくまで「仮の姿」に過ぎません。本当の答え合わせは、馬券を買えなくなった後に行われるのです。

このように、「最初から25%の手数料を取られる」うえに、「美味しいオッズはAIに後出しジャンケンで奪われる」という二重苦。これが、「競馬の期待値は意味ない」と言われる背景にある、残酷な市場の真実です。

しかし、絶望する必要はありません。この厳しい環境下でも、AIが手出しできない「隙間」は必ず存在します。次の章では、その隙間に潜む「人間の心理バイアス」について解説していきます。

本命と穴馬に潜むバイアスの正体

期待値が歪む(=オッズと実力に乖離が生まれる)最大の要因は、AIでも競走馬でもなく、実は馬券を買っている「私たち人間の心理」にあります。もし全てのファンが冷徹な機械のように合理的な判断をするなら、全ての馬の期待値は「0.80(控除率分引かれた状態)」に収束し、誰も勝てないゲームになるはずです。

しかし、現実はそうなりません。人間は感情の生き物であり、行動経済学で証明されている特定の「認知バイアス(思考の偏り)」に支配されているからです。このバイアスの正体を知ることこそが、期待値理論を「意味のあるもの」に変える第一歩です。

世界共通の現象「本命-大穴バイアス」

競馬市場において、国や時代を問わず観測される最も有名な歪みが「本命-大穴バイアス(Favorite-Longshot Bias)」です。これは、大衆心理がオッズに与える影響を端的に表しています。

タイプ ファンの心理状態 期待値への影響
大穴馬
(Longshot)
  • 「一発逆転で大金を得たい」
  • 「100円が1万円になる夢を見たい」

※当選確率(1%以下など)を過大に見積もる傾向がある。

実力以上に馬券が売れてオッズが下がるため、
期待値はマイナス(0.7以下)になりやすい。
本命馬
(Favorite)
  • 「配当が安すぎてつまらない」
  • 「リスクを負って2倍を取りに行くのは割に合わない」

※確実性よりも変動性(ワクワク感)を好む。

嫌われて投票が手薄になるため、
実力以上にオッズがつき(期待値が高く)なりやすい。

つまり、多くの人が「期待値が高い」と信じて狙っている穴馬こそが、実は数学的には「最も損をする選択肢」であるケースが多いのです。これを理解せずに「穴狙いが正義」という固定観念で馬券を買い続けることは、自ら進んでカモになりに行くようなものです。

最終レースの罠「ブレークイーブン効果」

さらに恐ろしいのが、このバイアスはレースが進むにつれて強化されるという点です。これを「ブレークイーブン効果(Break-even Effect)」と呼びます。

朝から馬券を買っているファンの多くは、メインレースが終わる頃には収支がマイナスになっています。すると、人間の心理はどう働くでしょうか?

「今日の負けを、最終レースで一気に取り戻したい」

こう考えた時、オッズ2.0倍の堅実な本命馬は選択肢から消えます。なぜなら、2倍では負けを取り戻せないからです。その結果、普段なら買わないような単勝50倍、100倍といった大穴馬に、起死回生の願いを込めて投票が集中します。

最終レースのパラドックス
負けている人たちが一斉に穴馬に群がるため、最終レース付近の穴馬は「異常なほど過剰人気(低期待値)」になります。
逆に、誰も見向きもしない本命馬や中穴馬が放置され、美味しいオッズで決着することが多々あります。

実際に、日本の大学で行われた研究においても、統計的な有意差までは断定されていないものの、「後半のレースほど本命馬券の回収額が高くなる(穴馬の過剰人気が進む)」という傾向が示唆されています。

(出典:高知工科大学『競馬における「本命-大穴バイアス」は後半のレースほど大きくなるか』

「競馬の期待値は意味ない」と嘆く人の多くは、自身の「負けを取り戻したい」という感情に流され、無意識のうちに期待値が枯れ果てた穴馬を買わされている可能性があります。

期待値投資で勝つためには、この熱狂から一歩引き、「みんなが夢を見ている時に、現実(本命や不人気な実力馬)を買う」という、心理的に逆の行動を取り続ける強いメンタルが必要なのです。

競馬の期待値は意味ないを覆す勝ち方

ここまで、期待値理論が通用しない「絶望的な理由」ばかり並べてきましたが、ここからは希望の話をしましょう。期待値理論は、単に教科書通り計算するだけでは機能しません。しかし、市場の歪み(エラー)を意図的に突くことで、その真価を発揮します。

ここからは、逆転の発想で「意味のある」投資にするための具体的な戦略を見ていきましょう。

1番人気は危険?データが示す真の妙味

「競馬で勝つためには、とりあえず1番人気を買っておけばいい」
あるいは逆に、「1番人気なんて配当が安すぎて旨味がないから、絶対に見向きもしない」

あなたは、このどちらかの考えに囚われていませんか? はっきり申し上げますが、そのどちらも「思考停止」と言わざるを得ません。期待値投資の神髄は、人気順そのものではなく、その裏にある「大衆心理の歪み」を見抜くことにあります。

ここでは、2024年の最新JRAデータを基に、多くのファンが陥る「人気の罠」と、逆に大多数がゴミ箱に捨ててしまっている「黄金のデータ」について解説します。

「勝つ確率が高い」と「儲かる」は全くの別物

まず、残酷な現実を直視しましょう。2024年のJRA全レースにおける1番人気の成績をご覧ください。

  • 勝率:約34.5%(3回に1回以上は勝つ)
  • 単勝回収値79円

勝率は確かに優秀です。しかし、回収値は「79円」。これはJRAの控除率(約20%)が引かれた後の数値(80円)とほぼ一致します。つまり、何も考えずに「強いから」という理由だけで1番人気を買い続ける行為は、「胴元に手数料を払い続けるだけのボランティア活動」に他なりません。

特に注意が必要なのが、クリストフ・ルメール騎手のようなトップジョッキーです。

ルメール・パラドックス(2024年データ)

  • 勝率:29.8%(極めて高い信頼度)
  • 単勝回収値73円(1番人気平均の79円すら下回る)

なぜ、日本一上手い騎手を買って負けるのか? それはファン全員が「ルメールなら何とかしてくれる」「この馬は強いはずだ」と盲信し、実力以上に過剰投票(Overbet)してしまうからです。オッズが下がりきった結果、勝ってもリターンが見合わない「期待値マイナス」の状態が常態化しています。

大衆が「嫌悪するデータ」にこそ、黄金が眠る

では、私たちは何を狙えばいいのでしょうか? 期待値の「歪み(=儲かるチャンス)」は、綺麗な馬柱の馬にはありません。むしろ、多くの競馬ファンが「汚い」「買えない」「意味ない」と判断して捨ててしまうデータの中にこそ隠されています。

私が実際にデータ分析をして衝撃を受けた「3つの歪み」を紹介します。

1. 馬体重の「激変」を恐れるな

パドック解説で「プラス20kg、これは太め残りですね」と言われた瞬間、多くのファンはその馬を買い目から外します。しかし、データは逆の真実を語っています。

現象 一般的なファンの心理 実際のデータと期待値(2023年)
+20kg以上の
大幅増
「調整失敗だ」「重くて走れない」と決めつけ、即座に消す。 実は「成長分」であることも多い。オッズの割に好走するため、単勝回収値が118円を超えるプラスゾーン。
(勝率は11.5%と意外に高い)
-20kg以上の
大幅減
「ガレている」「体調不良だ」と心配して買わない。 過剰反応でオッズが跳ね上がる。勝率(3.7%)は低いが、一発激走した時のリターンが大きく、こちらも単勝回収値118円を記録。
2. コース形状による「枠順バイアス」

「枠順なんて運でしょ?」と思っていませんか? 特定のコースでは、枠順が物理法則のように勝敗を左右します。

例えば、阪神芝1200m(2020-2024年)のデータを見てみましょう。

  • 3枠:単勝回収値 249円(勝率8.6%)
  • 8枠:単勝回収値 48円(勝率5.2%)

内枠有利のコース形状にもかかわらず、ファンは「外枠の不利」を過小評価し、「内枠の有利」を完全にはオッズに織り込めていません。その結果、3枠を買い続けるだけで回収率が200%を超えるという異常な歪みが発生しています。

3. 開幕週の「前残り」は想像以上

「東京競馬場は直線が長いから差しが決まる」という常識も、開幕週には通用しません。2024年の東京芝・開幕週における位置取り別成績では、「4コーナー4番手以内」の馬の単勝回収値が161円だったのに対し、「5番手以下」は44円と壊滅的でした。

多くのファンは「末脚が切れる馬」や「上がり3ハロンが速い馬」を好みますが、現実には「前に行って粘り込む地味な馬」の方が、期待値はずっと高いのです。

人の逆を行く勇気を持て
「競馬 期待値 意味ない」と嘆く人の多くは、みんなと同じように新聞の印を見て、みんなと同じように綺麗な馬柱の馬を買っています。
期待値が高い馬とは、「能力はあるのに、何らかの理由(大幅な馬体重増減、地味な脚質、特定の枠順など)で不当に嫌われている馬」のことです。ゴミ箱に捨てられた馬の中にこそ、ダイヤの原石が落ちているのです。

破産しないための資金管理とケリー基準

どれだけ高精度なAIを使い、どれだけ期待値の高い穴馬を見つける能力があっても、資金管理(マネーマネジメント)ができなければ、あなたは明日にも競馬場から退場することになります。

厳しい言い方になりますが、競馬で負ける人の9割は「予想が外れて負ける」のではありません。「賭け金を間違えて自滅する」のです。逆に言えば、資金管理さえ徹底していれば、一時的な不調期(ドローダウン)が来ても市場から退場することなく、次のチャンスを待つことができます。

ここでは、投資の世界で「資産を最大化する最強の公式」として知られる「ケリー基準(Kelly Criterion)」について、その威力と競馬における危険な罠、そしてプロが実践する正しい活用法を解説します。

伝説の数式「ケリー基準」とは?

ケリー基準は、1956年にベル研究所の科学者ジョン・L・ケリー・ジュニアによって考案された数式です。元々は通信ノイズに関する研究でしたが、後にギャンブルや投資において「複利で資産を増やすスピードを最大化する賭け金比率」を導き出す公式として有名になりました。

数式と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、ロジックはシンプルです。

ケリー基準の基本公式

f* = ( (b × p) – q ) / b

  • f*:適正賭け金率(所持金に対する割合)
  • b:オッズから1を引いた実質倍率(例:2.5倍なら1.5)
  • p:勝率(勝利する確率)
  • q:敗率(1 – p)

例えば、単勝オッズ2.0倍の馬がいるとします。あなたが分析した結果、この馬の勝率は60%あると確信しました。期待値は「1.2(120%)」という絶好の投資機会です。

この時、所持金の何%を賭けるのが数学的に正解でしょうか? ケリー基準に当てはめてみましょう。

  • b = 1.0(2.0倍 – 1)
  • p = 0.6(60%)
  • q = 0.4(40%)

$$f* = ((1.0 \times 0.6) – 0.4) / 1.0 = 0.2$$

答えは「所持金の20%」です。もし手元に100万円あれば、この1レースに20万円を賭けるのが、資産を最も速く増やす手だと数学は教えています。

なぜ「フルケリー」は競馬で自殺行為なのか

「なるほど、この式通りに賭ければ億万長者になれるのか!」

そう思った方は、少し冷静になってください。この算出された20%という比率をそのまま賭けることを「フルケリー(Full Kelly)」と呼びますが、競馬においてこれを実践するのは自殺行為に等しいです。

その理由は主に2つあります。

1. 勝率(p)はあくまで「推定」に過ぎない

コイン投げなら「表が出る確率は50%」と確定していますが、競馬の勝率は誰にも分かりません。もし、あなたが「勝率60%」と見積もった馬が、実際には「勝率45%」しかなかったらどうなるでしょうか?

本来なら賭けるべき金額はもっと少ない(あるいは賭けてはいけない)のに、公式は「20%賭けろ!」と命令してきます。これを繰り返せば、期待値がマイナスの状態で過剰なリスクを取り続けることになり、数学的帰結として破産(Ruin)します。

2. メンタルを破壊するボラティリティ

仮に勝率の見積もりが正しくても、フルケリーは資産の変動(ボラティリティ)が激しすぎます。勝率60%でも、3連敗する確率は6.4%あります。もしフルケリーで3連敗すれば、資産は半分近くまで溶けてしまいます。

フルケリーの恐怖
一度大きく資産を減らすと、元の金額に戻すためには倍以上の利益が必要になります(50%失ったら、残りを100%増やさないと元に戻らない)。このプレッシャーの中で、冷静な予想を続けることは不可能です。

プロが実践する「フラクショナルケリー」の守り方

では、どうすれば良いのか。賢明な投資家たちが実践しているのが、算出された比率をあえて減らす「フラクショナルケリー(Fractional Kelly)」という手法です。

具体的には、ケリー基準で出た数値の「半分(ハーフケリー)」や「4分の1(クォーターケリー)」を上限として賭けるのです。

戦略名 賭け金比率 特徴 推奨度
フルケリー 100% 成長スピードは理論上最大だが、破産リスクも最大。推定誤差に弱い。 危険
ハーフケリー 50% 成長率はフルの75%を維持しつつ、ボラティリティを大幅に抑制。 中級者向
クォーターケリー 25% 成長率は落ちるが、破産確率はほぼゼロ。精神的に非常に安定する。 推奨

先ほどの例(推奨20%)で言えば、クォーターケリーなら「所持金の5%」を賭けることになります。これなら、もし見積もりが甘くても致命傷にはなりません。

「期待値は追うけれど、絶対に退場はしない」

この安全マージンこそが、長く勝ち続けるための命綱です。「期待値通りに買ったのに破産した」という人の9割は、アクセルの踏み込みすぎ(オーバーベット)が原因です。まずはクォーターケリー、あるいはそれ以下から始めて、自分の勝率精度のブレを確認することをお勧めします。

資金管理の具体的なルール作りや、パンクしないための口座管理術については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

あわせて読みたい:競馬の勝ち逃げルールを徹底解説!資金管理とやめどきの極意

AI予想と最新技術が変える市場の未来

近年、競馬予想の世界には「黒船」とも言える技術が到来しました。それが、SIVAやRingo、あるいは個人のエンジニアが開発した高度なAI(人工知能)による予想サービスです。

AIは、過去数十年分のレース結果、血統、タイム、ラップ、天候など、人間が一生かかっても処理しきれない膨大な変数を一瞬で解析し、極めて精度の高い「勝率」を弾き出します。「これを使えば、私たちも遂に勝ち組になれるのではないか?」そんな期待を抱くのも無理はありません。

しかし、私の見解は少し冷酷です。AI技術が進化すればするほど、私たち個人投資家が勝つのは難しくなる——。現実は、そんな皮肉な未来を指し示しています。

「効率的市場」のジレンマ:AIが普及すると勝てなくなる?

ここで、投資の世界にある「効率的市場仮説」という考え方を借りて説明しましょう。これは簡単に言えば、「あらゆる情報はすぐに価格(オッズ)に反映されるため、誰も市場を出し抜くことはできない」という理論です。

もし、世界中の誰もが「完璧なAI」を使って正確な勝率を知ることができるようになったら、何が起きるでしょうか?

AI普及による「期待値消滅」のシナリオ

  1. 発見:全員がAIを使って「実力に対してオッズが甘い馬(=期待値が高い馬)」を一瞬で見つけます。
  2. 集中:全員がその馬の馬券を購入します。
  3. 適正化:その馬のオッズは適正価格(期待値1.0以下)まで急速に下がります。
  4. 消滅:結果として、市場から「美味しい歪み」が完全に消え失せます。

つまり、AIが普及して市場が「効率的」になればなるほど、オッズは実力を完璧に反映するようになります。そうなると、期待値理論を使って他人より有利に立つことは、今よりも格段に難しくなります。

将来的には、タイムや血統といった「数値化できるデータ」だけで戦うのは、スーパーコンピューター同士が将棋を指すような高度な消耗戦となり、個人の入り込む余地は完全になくなるでしょう。データ派にとって、今は「終わりの始まり」かもしれないのです。

人間に残された最後の聖域:「アナログ情報」

では、私たちは指をくわえてAIに駆逐されるのを待つしかないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。AIには決定的な弱点があります。それは、「数値化できない定性情報(アナログ情報)」を理解するのが苦手だという点です。

これからの時代、AIを出し抜いて期待値を稼ぐために重要になるのは、以下のような「現場の生きた情報」です。

AIが見落とす「3つのアナログ領域」

  • パドックでの「気配」と「発汗」
    AIは馬体重の増減は分かりますが、「入れ込み(興奮)」と「気合」の違いや、発汗が「暑さ」によるものか「恐怖」によるものかを映像から完璧に判別することはまだ困難です。当日の馬の精神状態は、人間にしか見抜けない情報です。
  • 騎手の「心理」と「人間関係」
    「この騎手は前のレースで落馬したから慎重になるかも」「調教師と騎手の関係が悪化しており、無理をさせない指示が出ているかも」。こうした泥臭い人間ドラマや心理的プレッシャーは、データとして数値化されにくいため、オッズに織り込まれません。
  • 馬場造園課の「作業」と「トラックバイアス」
    JRAの馬場造園課が朝に行った散水や、芝刈りの方向、あるいは直前のゲリラ豪雨による微妙な馬場の変化。これらは公式発表される数値データだけでは読み取れず、現場の映像や騎手のコメントから推測するしかありません。

「データ派だから映像は見ない」は時代遅れになる

かつては「データ派だからレース映像やパドックは見ない」というスタイルが、効率的でクールだとされた時代もありました。しかし、これからの時代にそのスタイルを貫くことは、AIの劣化コピーになることを意味します。

これからの競馬予想の最適解は、「AI(データ)をベースにしつつ、最後は人間(アナログ)で補正する」というハイブリッドな思考です。

  • AIの役割:過去の傾向から、買うべき候補馬をリストアップする(スクリーニング)。
  • 人間の役割:リストアップされた馬の中から、当日の気配や騎手の心理を読み解き、AIが計算できない「当日のノイズ」を加味して最終決断を下す。

「競馬の期待値は意味ない」と嘆く前に、AIが拾いきれない情報の海に飛び込んでみてください。そこにはまだ、誰にも気づかれていない黄金の期待値が転がっているはずです。

ちなみに、競馬予想AIについては、私のブログ内の記事競馬予想AIをPythonで自作!回収率を上げる開発手順と本でも詳しく解説しています。「競馬予想AI」をもっと深く知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

理論を学ぶためのおすすめの本と書籍

ここまで、期待値の重要性や市場の歪みについてお話ししてきましたが、「もっと深く、体系的に期待値の考え方を学びたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。Web上の記事(私のブログも含めて)は、どうしても情報が断片的になりがちです。

本気で「勝ち組」への階段を上りたいのであれば、一度立ち止まって、プロが書いた書籍を読み込むことを強くおすすめします。1冊1,500円〜2,000円程度の投資ですが、適当な馬券を買って外す2,000円に比べれば、その期待値は無限大です。

ただし、書店には「誰でも楽に100万稼げる!」といった、射幸心を煽るだけの怪しい本も溢れています。ここでは、私が実際に読み込み、思考のベース(土台)を鍛えるのに役立ったと断言できる「良書」を3冊厳選してご紹介します。

1. 確率思考のバイブル:『馬券億り人』

基本情報

  • 著者:真田 理
  • 推奨レベル:中級〜上級
  • 学ぶべきテーマ:確率論、ストイックな資金管理

もしあなたが、「競馬=ロマン」ではなく「競馬=投資」として割り切りたいなら、この本は避けて通れません。著者は元スロットプロ(パチプロ)出身で、競馬を完全に「数字のゲーム」として捉えています。

この本が優れているのは、「過小評価されている馬(期待値が高い馬)を見抜くプロセス」を、精神論ではなく論理的なアプローチで解説している点です。多くの人が陥る「当てたい」という欲求をいかに排除し、「儲かる」馬券だけを機械的に買い続けるか。そのためのメンタルセットと具体的なノウハウが詰まっています。

読むと「競馬が楽しくなくなる(作業になる)」という副作用があるかもしれませんが、勝つための思考回路(脳のOS)を入れ替えるには最適な一冊です。

2. 期待値の”ありか”を言語化:『穴パターン事典』

基本情報

  • 著者:メシ馬
  • 推奨レベル:初級〜中級
  • 学ぶべきテーマ:パターンの認識、妙味の言語化

期待値が高い馬(穴馬)を見つけるには、計算式だけでなく「相場観」が必要です。この本は、どのような条件が揃ったときに穴馬が激走しやすいのか、そのパターンを体系化しています。

例えば、「前走大敗しているが、不利な枠順だっただけ」「ハイペースに巻き込まれて自滅した逃げ馬の次走」など、大衆が嫌う要素(ノイズ)と、買うべき要素(シグナル)の選別方法が見事に言語化されています。

「なんとなくこの穴馬が来そう」という直感を、「〇〇という敗因があったから、今回はオッズ以上の期待値がある」という論理に変える力を養うことができます。著者のメシ馬さんは言語化能力が非常に高く、読むだけで予想の解像度が上がります。

3. 基礎なくして応用なし:『勝ち馬がわかる競馬の教科書』

基本情報

  • 著者:鈴木 和幸
  • 推奨レベル:完全初心者〜初級
  • 学ぶべきテーマ:競馬の仕組み、レースの構造理解

「期待値とか難しい計算の前に、そもそも競馬の仕組みがよく分からない」という方は、まずこの本に戻りましょう。ベテランの競馬専門紙トラックマンが書いた、まさに「教科書」と呼ぶにふさわしい一冊です。

なぜこの本を勧めるかというと、正確な期待値計算には「正確な勝率見積もり」が不可欠だからです。 「コース適性」「展開」「血統」「パドック」といった基礎的なファクターを正しく理解していなければ、勝率の予測精度は上がりません。基礎がおろそかな状態で期待値理論を使っても、それは「砂上の楼閣」です。

長く読まれているロングセラーであり、辞書のように手元に置いておくだけでも価値があります。

YUKINOSUKEからのアドバイス
本を読むときは、「予想に乗る」ために読むのではなく、「著者の思考プロセスを盗む」つもりで読んでください。
「なぜ著者はこの馬を選んだのか?」「なぜこのデータを重視したのか?」
その背景にあるロジックこそが、あなたが一生使える資産になります。

結論:競馬の期待値は意味ないわけではない

長い記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。ここまで、耳の痛い話や少し難しい数字の話もしてきましたが、最後にこの記事の核心となる結論をお伝えします。

「競馬の期待値は意味ない」

この言葉は、半分は残酷な真実であり、もう半分は大きな誤解です。この2つの側面を正しく理解することこそが、あなたが「養分」と呼ばれる側から脱出し、「投資家」へと進化するための最後のステップになります。

「意味がない」と言われる本当の理由

まず、なぜ多くの人が「意味がない」と感じてしまうのか。それは、現代競馬の市場環境が、一昔前とは比較にならないほど高度化しているからです。

  • 競馬新聞の「◎印」を信じて買うこと
  • 市販のツールやアプリが表示する「期待値ランク」を鵜呑みにすること
  • 「単勝オッズ〇倍以上なら買い」といった単純なルールで機械的に買うこと

はっきり言いますが、これらの「素朴な期待値論」は、AIが0.1秒単位で最適解を出し続ける現代の厳しい市場では、もはや通用しません。これらを実践しても、控除率(25%の手数料)の壁に跳ね返され、資金をじわじわと削られるだけです。その意味において、「中途半端な期待値理論は意味がない」というのは、紛れもない事実です。

それでも「意味がある」と言い切れる理由

しかし、だからといって「直感や運がすべてだ」と結論付けるのは早計です。私たちが戦っているのは、カジノのルーレットのような完全確率のゲームではありません。人間という「感情を持った生き物」がオッズを作っているゲームです。

そこに人間がいる限り、必ず「歪み」が生まれます。

期待値が機能する瞬間

  • 過剰反応:「前走大敗した」「馬体重が増えた」というだけで、実力以上に嫌われてオッズが跳ね上がる瞬間。
  • 心理バイアス:「負けを取り戻したい」という焦りから、最終レースで大穴馬が売れすぎて、本命馬の期待値が上がる瞬間。
  • 情報の非対称性:AIが学習しにくい「パドックの微妙な気配」や「騎手の心理状態」を、あなただけが察知した瞬間。

こうした歪みを、ケリー基準を応用した適切な資金管理で狙い撃つ。この高度な運用ができたとき初めて、期待値は「机上の空論」から「強力な武器」へと変わります。

ちなみに、オッズの歪みについては、私のブログ内の記事競馬のオッズの歪みとは?儲かる見つけ方と活用法を解説でも詳しく解説しています。「オッズの歪み」をもっと深く知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

期待値は「魔法の杖」ではなく「羅針盤」

私が一番お伝えしたいのは、期待値に対するスタンスの転換です。

多くの人は、期待値を「振れば必ず当たる魔法の杖」だと思っています。だから、計算通りに買って外れると、「この杖は壊れている(期待値は意味ない)」と捨ててしまいます。

しかし、正しくは「不確実な海を渡るための羅針盤」です。

羅針盤を持っていても、嵐(連敗)には遭います。波に揉まれて、吐きそうなほど苦しい時期(ドローダウン)も必ず訪れます。でも、羅針盤を持たずに航海に出れば、嵐が過ぎ去った後に自分がどこにいるのか分からなくなり、最終的には必ず遭難(破産)します。

「今は嵐だけど、針路は正しい。このまま進めば必ず目的地に着く」

そう信じて舵を取り続けられる人だけが、トータルプラスという新大陸に到達できるのです。

今日から始める「投資家」への第一歩

これからの競馬ライフでは、予想の仕方を少しだけ変えてみてください。

思考のシフトチェンジ

  • ×「この馬は来るか? 来ないか?」(未来予知)
  • 〇「このオッズは高いか? 安いか?」(価格判断)

「なぜこの馬はこんなに人気がないのだろう?」「みんなは何を見落としているのだろう?」と、オッズの向こう側にいる大衆心理を想像する癖をつけてみてください。そうすれば、ただの数字の羅列だったオッズ画面から、これまで見えなかった「意味のある馬券」が浮かび上がってくるはずです。

期待値という概念は、時には残酷で、時には退屈です。しかし、それを使いこなした先には、単なるギャンブルでは味わえない、知的でエキサイティングな「投資としての競馬」の世界が待っています。

あなたの競馬ライフが、今日を境により深く、より豊かなものになることを願っています。

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