「競馬生活で月収300万円」この言葉には、好きな競馬だけで生計を立て、時間に縛られずに優雅に暮らす、まさに夢のような響きがあります。多くの方が一度はこうした生活を想像するかもしれません。しかし、現実は非常に厳しく、「競馬は稼げない」という声が大多数を占めるのもまた事実です。実際に競馬で生活してる人が、どのようにして収益を上げ、生計を維持しているのか、その具体的な手法や日常は、外部からはほとんど見えてきません。
中には、統計学やAIを駆使する「競馬で生計を立てる天才東大生」のような、特別な分析能力を持つ存在がメディアで取り上げられることもあります。一方で、たとえ一定の収益を上げていたとしても、「競馬で生活してるけど、実は精神的なプレッシャーや社会的な信用の面でかなり厳しい」という、成功の裏にある切実な現実も存在します。
もちろん、全ての人が月収300万円という極端な目標を掲げているわけではありません。本業の傍らで「副業競馬で月50万生活」という高い目標を目指す方や、まずは現実的なステップとして「競馬で毎月5万円稼ぐ方法」を地道に模索している方も増えています。果たして、競馬を収入源として「生活費」を安定的に稼ぎ出すことは、本当に可能なのでしょうか。
この記事では、データベースに基づいた客観的な情報を用い、その夢と現実のギャップを徹底的に解明します。例えば、一見堅実に見える「競馬で複勝生活」という手法は本当に成り立つのか、長期的に利益を出す「競馬で勝ってる人の買い方」にはどのような共通点があるのかを深掘りします。さらに、時間が限られた多忙な方でも実践しやすい「サラリーマンが競馬で稼ぐ一番簡単な方法」は存在するのか、様々な角度から検証していきます。月収300万円という目標がどれほど現実味を帯びているのか、その実態を探っていきましょう。
- 競馬で月収300万円を目指すことの現実性
- 競馬で生計を立てるのが難しいとされる理由
- 月5万円から副業として稼ぐための具体的な戦略
- 安定収益を目指すための買い方やマインドセット
競馬生活で月収300万円は可能なのか
- 競馬は稼げないと言われる理由
- 競馬で生活してる人のリアルな声
- 競馬で生活してるけどという実態
- 生活費は安定しないのか
- 競馬で生計を立てる天才東大生の実例
競馬は稼げないと言われる理由
多くの競馬ファンが「競馬で生活したい」と夢を見ながらも、その大半が実現に至らない背景には、個人の予想技術だけでは克服が難しい、いくつかの構造的な理由が存在します。これらを正確に理解することは、競馬生活という目標の現実性を客観的に測る上で不可欠です。
主に、競馬で安定的に稼ぐことを困難にしている要因は4つ挙げられます。
1. 控除率(テラ銭)という名の絶対的な壁
まず、競馬はJRA(日本中央競馬会)や地方自治体が主催する公営競技です。これは、参加者が投じた馬券の売上総額(プール)から、必ず一定の割合が主催者の取り分(運営費や国庫納付金など)として「控除」されることを意味します。一般的に「テラ銭」とも呼ばれます。
そして、この控除を差し引いた残りの金額(払戻率)が、的中者への払戻金として分配される仕組みです。
この控除率は馬券の券種によって異なっており、JRAが定める払戻率は以下の通りです。(出典:JRA公式サイト「馬券のルールについて」)
券種 | 払戻率(ファンへの還元) | 控除率(主催者の取り分) |
---|---|---|
単勝・複勝 | 80% | 20% |
枠連・馬連・ワイド | 77.5% | 22.5% |
馬単・三連複 | 75% | 25% |
三連単 | 72.5% | 27.5% |
WIN5 | 70% | 30% |
購入した瞬間に価値が目減りする
例えば、最も控除率が高い三連単(27.5%)の場合、あなたが10,000円を投資した時点で、その10,000円はレースが始まる前に7,250円の価値しか持たないことになります。競馬で勝つとは、この目減りした7,250円を、他の参加者と奪い合い、10,001円以上にして取り戻す行為なのです。
長期的に利益を出すためには、常に「回収率100%」を超える必要があります。しかし、この100%というのは、あくまでトントン(収支ゼロ)のラインです。「生活する」レベルの利益を求めるならば、105%や110%といった回収率を、何年にもわたって安定的に維持し続けなければなりません。これは、他の大多数の参加者よりも常に優れた予想を継続し、この「手数料の壁」を上回り続けることを意味し、極めて難易度が高いことがわかります。
2. 「動物」が主役であることの不確定要素
- YUKINOSUKE
競馬の最大の特性であり、他の公営競技やカジノゲームと一線を画すのが、馬という「動物」が主役の競技である点です。人間のアスリートとは異なり、馬は言葉で意思疎通ができません。そのため、当日のコンディションを100%正確に把握することは誰にも不可能です。
どれだけ過去のデータを徹底的に分析し、完璧な予想を立てたつもりでも、以下のような予測困難な不確定要素によって、結果は簡単に覆ります。
競馬特有の不確定要素
- 馬のコンディション:当日の気分、体調の微細な変化(風邪気味、軽度のケガなど)、パドックでの「入れ込み」(興奮状態)、発汗の多さなど。
- レース展開:スタートの出遅れ、騎手の判断ミス、レースの「ペース」(速いか遅いか)の読み違え、他馬からの不利(進路妨害、前が壁になり抜け出せないなど)。
- 外的要因:天候の急変による馬場状態の変化(良馬場想定が急な雨で不良馬場になるなど)。また、競馬場ごとの「トラックバイアス」(例:内側の馬場だけが伸びる)の発生。
データ上、圧倒的な1番人気馬の勝率(単勝)は約33%、3着以内率(複勝率)ですら約63%程度とされています。つまり、1番人気馬は3回に2回は負け、10回に4回近くは馬券圏外(4着以下)に沈むのです。
この不確定要素の多さこそが、時に万馬券という夢のある高配当を生み出す源泉ですが、同時に、安定した収入源として期待するにはあまりにも不安定な要因となります。
3. 扱うべき情報量の膨大さ
前述の不確定要素を少しでも減らすために、プロの予想家や熱心なファンは、膨大な情報を収集・分析します。しかし皮肉なことに、その情報量が多すぎることも、かえって予想の難易度を上げています。
競馬予想に必要な情報は、まさに多岐にわたります。
(例:過去の全レース成績、走破タイム、血統背景とコース適性、騎手の乗り替わりと馬との相性、調教(追い切り)タイムと動きの評価、厩舎の仕上げ、パドックでの気配、オッズの時系列変動など)
これら全ての情報を網羅し、それぞれに「今回はどの要素が最も重要か」という適切な重み付けをして、期待値の高い買い目を選び続ける作業は、人間の情報処理能力の限界に近いものがあります。「分析しすぎて、逆に何を買えばいいか分からなくなった」という「分析麻痺」の状態に陥ることも少なくありません。
4. 利益を蝕む「税金」の問題
仮に、これら全ての壁を奇跡的に乗り越えて多額の利益を出せたとしても、最後に「税金」という最大の関門が立ちはだかります。競馬で得た利益は、原則として「一時所得」として課税対象となります。(出典:国税庁タックスアンサー No.1490 一時所得)
一時所得は、年間で50万円を超える利益(特別控除額)が出た場合、確定申告が必要です。ここで最大の問題となるのが、原則として「ハズレ馬券」の購入費用は経費として認められない点です。
年間収支マイナスでも課税される「税金の落とし穴」
例えば、ある人が年間トータルで500万円の馬券を買い、400万円の払戻金しか得られなかった場合、実際の収支は100万円のマイナスです。
しかし、もしその400万円の払戻が「1レースで100円が400万円になった」というものだった場合、税務上の計算は異なります。
的中レース単体で見ると、利益は3,999,900円です。税務上の計算では、他のレースで外した(経費と認められない)馬券代は考慮されず、この的中による利益(約400万円)から特別控除50万円を引いた額(約350万円)の、さらに1/2(約175万円)が、その年の課税対象所得として上乗せされる可能性があるのです。
つまり、手元の現金は100万円減っているにもかかわらず、高額な所得税や住民税の支払い義務が発生するという、理不尽なケースがあり得ます。
※近年、馬券の購入が営利目的の継続的行為(専用ソフトでシステマティックに購入し続けるなど)と認められた場合に限り、経費(ハズレ馬券代)を認める「雑所得」扱いとなる判例も出ていますが、一般の競馬ファンがこの認定を受けるハードルは極めて高いとされています。
これらの理由から、競馬は「稼げない」と言われることが多く、趣味として楽しむ分には最高のレジャーですが、安定した収支を前提とする「生活の糧」とすることの難易度が非常に高いことがわかります。
競馬の税金については、こちらの記事【競馬の税金、バレないは嘘!申告しないとどうなる】でも詳しく解説しています。
競馬で生活してる人のリアルな声
- YUKINOSUKE
「競馬で生活してる人」と聞くと、多くの人がノートパソコン一つを片手に、G1レースのような華やかな舞台で高額配当を次々と的中させる、自由で刺激的なイメージを持つかもしれません。しかし、その現実はそうしたイメージとはかけ離れた、地道な研究と厳しい自己管理に支えられています。
実際に継続して利益を上げている人々は、趣味として週末のレースに一喜一憂するのとは全く異なるアプローチを取っています。彼らの日常は、むしろ「データアナリスト」であり「孤高の個人事業主」に近いものです。彼らにとって競馬はエンターテイメントではなく、自身の資本を投じてリターンを得るための「事業」となっています。
その事業活動は、レースが開催される週末だけではありません。むしろ、レースが行われていない平日の過ごし方にこそ、プロとアマチュアの決定的な違いが現れます。
- 月曜日:先週末の全レースの映像を徹底的に見返し、分析します。注目すべきは勝った馬ではなく、「なぜ人気馬が負けたのか」「不利がなければ勝てた馬はどれか」という敗因の分析です。
- 火曜~水曜日:今週末の特別登録馬(出走予定馬)が発表され、過去のデータと照らし合わせながら、出走馬の能力比較や適性の分析を開始します。
- 木曜~金曜日:枠順が確定し、調教(トレーニング)の映像やタイム、馬場状態、週末の天気予報など、全ての変数を加味して最終的な予想と買い目(投資戦略)を構築します。
趣味の競馬では「この馬が好きだから」「前走惜しかったから」という情緒的な理由が動機になることも楽しみの一つです。しかし、プロの世界では全ての行動が収支に直結するため、一切の妥協や感情の介入が排除されます。
このように、競馬生活者のリアルな姿は、以下の4つの柱によって支えられています。
競馬生活を支える4つの柱
- 膨大なデータ分析とアクティブな映像研究 前述の通り、プロは膨大な時間を分析に費やします。特に重要なのは、レース映像の「見方」です。単に結果を眺めるのではなく、「なぜその馬が負けたのか」を徹底的に分析します。例えば、「スタートで出遅れた」「道中で前が壁になりスムーズに加速できなかった」「騎手が仕掛けるタイミングを誤った」など、能力以外の要因で負けた馬を見つけ出すことが、次のレースで過小評価された(オッズが美味しい)馬券を的中させる鍵となります。
- 感情の完全な排除 人間は「前回的中したから次も当たるはず」といった認知バイアス(思い込み)に陥りやすいものです。しかし、プロは自分なりの分析とデータを信じ、たとえ世間の評価が低くても(人気がなくても)期待値が高いと判断すれば投資し、逆にどれだけ人気があっても期待値が低いと判断すれば見送ります。「好きな馬」や「応援したい騎手」といった私情を挟む余地は一切ありません。
- 強靭な精神力(資金管理) どれだけ優秀な予想法やAIモデルでも、必ず不調の波(ドローダウン=連敗による資金の目減り)は訪れます。アマチュアは5連敗、10連敗もすれば資金が底をつくか、精神的に耐えきれずに予想法を捨ててしまいます。しかし、プロは「この手法を続ければ長期的にはプラスになる」という統計的な裏付けに基づき、連敗中も動揺せず、事前に定めた資金管理ルール(例:1レースの投資額は総資金の2%まで)を機械のように守り抜きます。
- 領域の特化(ニッチ戦略) 年間3,000以上行われる全てのレースで勝ち続けることは不可能です。多くのプロは、自分の予想法が最も通用する領域、つまり自分が他人より優位性を持てるニッチな分野に特化しています。例えば、「ダートの短距離戦専門」「2歳新馬戦専門」「特定のローカル競馬場専門」などです。G1のような注目度が高いレースはオッズも効率的(妙味が少ない)になりがちですが、一般のファンがあまり分析しないニッチなレースにこそ、期待値の高い馬券が眠っているのです。
プロが活用するデータ
こうした高度な分析を行うため、多くのプロはJRAが提供する公式データサービス「JRA-VAN」などを契約し、過去数十年分の詳細なデータをダウンロードして、独自のデータベースを構築・分析しています。スポーツ新聞の情報だけでは、このレベルの分析は不可能です。
このように、競馬生活のリアルな姿は、運や直感に頼る一攫千金を狙うギャンブラーではありません。それは、「運」や「情熱」ではなく、「論理」と「規律」によって収益を追求し続ける、極めてストイックなビジネスであると言えるでしょう。
競馬で生活してるけどという実態
- YUKINOSUKE
仮に、前述したような厳しい分析と自己管理を徹底し、競馬で一定の収益を上げられるようになったとします。念願の競馬生活をスタートできたとしても、「競馬で生活してるけど、実は想像以上に厳しい」という側面が現実問題として立ちはだかります。これは、単なる経済的な浮き沈み(収入の変動)の問題だけではなく、社会的な側面が大きく影響してきます。
一般的な企業に勤めて得る給与とは異なり、競馬による収入は「不安定な所得」であり、その源泉が「公営競技による利益」と見なされがちです。この社会的な評価が、日常生活を送る上で様々な目に見えない障壁となります。
社会的な信用の低さ
競馬生活者が直面する最も大きな問題の一つが、この社会的な信用の獲得が非常に難しいという点です。日本では、収入の多寡以上に「どこに所属し、どのようにして安定した収入を得ているか」が個人の信用を測る大きな指標となっています。
例えば、公的な書類や金融機関の申込書にある「職業欄」に、事実として「プロ馬券師」や「競馬生活者」、あるいは「投資業(競馬)」と書いた場合、金融機関や不動産会社からは「安定した職業」とは決して見なされません。
具体的には、以下のような場面で深刻な不利益を被るケースが報告されています。
社会的信用が得られない具体例
- クレジットカードの新規発行審査 たとえ十分な預金残高を提示できたとしても、「安定した職歴・勤務先」がないという理由だけで、ゴールドカードどころか一般カードの発行さえ見送られることがあります。
- 各種ローン契約(住宅・自動車など) 金融機関が最も重視するのは「収入の継続性・安定性」です。数千万円単位の融資となる住宅ローンは、競馬による収入では審査の土俵に上がることさえ極めて困難です。自動車ローンやフリーローンといった比較的少額の融資であっても、審査通過は非常に難しいのが実情です。
- 賃貸物件の入居審査 大家や家賃保証会社から見れば、「来月の収入がゼロになるかもしれない人」に部屋を貸すのは大きなリスクです。そのため、入居審査が通らないケースが多発します。これを回避するには、家賃の数年分を前払いする、あるいは法人を設立して「役員報酬」という形にするなどの特別な対策が必要になることがあります。
たとえ月収300万円を稼ぐ月があったとしても、その「源泉」が競馬であるというだけで、社会的な信用を得るハードルは格段に上がってしまうのです。
絶え間ない将来への不安と精神的孤独
- YUKINOSUKE
会社員であれば、万が一病気や怪我で働けなくなっても、傷病手当金や有給休暇といったセーフティネットがあります。しかし、競馬生活者にはそうした社会保障は一切ありません。「自分が倒れたら、その瞬間に収入はゼロになる」という不安が常につきまといます。
しかし、それ以上に恐ろしいのが「予想法の陳腐化」というリスクです。
「勝てる手法」は永遠ではない
競馬は、参加者同士が限られたパイ(控除率を引かれた払戻金)を奪い合うゲームです。もし「絶対に勝てる手法」が見つかったとしても、その手法が広まれば、誰もが同じ馬券を買うようになります。その結果、オッズ(配当)は下がり、その手法の優位性(期待値)はすぐに失われてしまいます。
近年はAIによるオッズ分析やデータ解析が急速に進んでおり、市場は常に「効率化」されています。かつて有効だった単純なデータ分析はもはや通用しません。「昨日まで勝てていた手法が、明日も通用するとは限らない」という恐怖の中、常に自分の手法を疑い、アップデートし続けなければならないプレッシャーは計り知れないものがあります。
さらに、こうしたプレッシャーや悩みを共有できる相手がいないという「精神的な孤独」も深刻な問題です。特殊な世界で生きているため、周囲の友人や家族に仕事の内容を正確に理解してもらうことは困難です。
- 勝った場合:「すごいね(=運が良かったね)」と、努力や分析の結果ではなく、単なる運の産物として扱われる。
- 負けた場合:「だから言ったのに」「ギャンブルだから」と、事業の失敗ではなく、単なるギャンブルの負けとして一蹴される。
自分の知的な努力やリスク管理といった「仕事」としての側面が評価されず、結果(勝ち負け)のみで判断されることへのストレスは、想像以上に大きいものです。
経済的な成功の裏側で、こうした社会的な孤立や絶え間ない不安と一人で戦い続けているのが、競馬生活者のもう一つの実態であると言えます。
生活費は安定しないのか
- YUKINOSUKE
結論から言えば、競馬だけで競馬 生活費(家賃、光熱費、食費など)を毎月安定的に稼ぎ出すことは、極めて困難であると言わざるを得ません。その最大の理由は、収入の源泉が「確率」に基づく不安定なものであり、「安定」とはまさに対極にある性質を持っているからです。
毎月決まった日に引き落とされる「固定支出」を、いつプラスになるか分からない「変動収入」で賄おうとすることは、事業運営の観点からも非常に危険な行為です。
月30万円を稼ぐことの難易度
例えば、「月収300万円」という非常に高い目標ではなく、より現実的に「手取り月30万円」を競馬で稼ぐ目標を立てたとします。これを、開催日が土日に限られる中央競馬(月に約8日間)だけで達成しようとすれば、どうなるでしょうか。
単純計算で、1開催日(土曜または日曜)あたり37,500円の「純利益」を、一度も休まず、毎週必ず出し続ける必要があります。
この「必ず」という部分が、競馬生活の最大の壁となります。競馬の収益は、たとえ長期的にプラスになる優れた手法(プラスの期待値)を持っていたとしても、短期的には平均値の周りを激しく上下します(これを「分散」または「ブレ」と呼びます)。
平均と現実のギャップ
1日で10万円勝つ日もあれば、次の日には5万円負ける日もあります。月間トータルで平均して30万円の利益になっていたとしても、家賃の支払い日である「25日」の時点で収支がマイナス域にあれば、その瞬間に生活は破綻してしまうのです。
重要なのは「一発当てること」ではなく、「マイナスになる日をいかに少なくし、月単位で確実にプラス収支を維持し続けるか」です。プロ野球の世界でさえ、3割打てれば一流のバッターとされるように、勝率が変動する世界で常に勝ち越すことは至難の業なのです。
破産を避けるための資金管理
前述の通り、プロの競馬生活者は、この収益のブレ(分散)を乗り切るために、徹底した資金管理を実践します。例えば、「総資金100万円に対し、1レースに投じる金額は最大でも2万円(総資金の2%)まで」といった厳格なルールを設けます。
これは、どれだけ優秀な手法でも必ず訪れる連敗期(ドローダウン=一時的な資金の落ち込み)で、全資金を失う「破産」を避けるためです。
逆に言えば、生活費を稼ぐためには、この資金管理ルールを守りながら利益を出せるだけの、潤沢な「余剰資金(総資金)」が生活費とは別に必要になることを意味します。生活費そのものを賭け金に回すことは、このルールに真っ向から反する行為です。
「生活」が懸かることによる精神的プレッシャー
そして何よりも深刻なのが、生活費を競馬で賄おうとすることによる、計り知れない「精神的プレッシャー」です。
「趣味」や「余剰資金での投資」として競馬に取り組んでいる場合、「今週は自信のあるレースがないから、勝負は見送ろう(ケンしよう)」という、最も合理的で重要な判断(=損失の回避)を冷静に下すことができます。
しかし、ひとたび「生活」が懸かると、その思考は一変します。
冷静な判断を失うプロセス
「今月の家賃(あと5万円)を稼がなければならない」 「今日の負け(3万円)を取り返さなければ、食費が足りない」
このような焦りが生じると、「自信はないけれど、稼ぐために無理やり勝負する」「負けを取り返そうと、ルールを破って賭け金を上げる(追い上げ)」といった、破滅に直結する行動を引き起こしやすくなります。
このような状態は、もはや冷静な投資判断ではなく、典型的なギャンブル依存症の兆候です。(参考:厚生労働省のギャンブル等依存症対策に関する情報)生活が懸かっているからこそ、冷静さを失い、かえって安定しないという深刻なジレンマに陥るのです。
結論として、競馬を生活費の柱とすることは、その確率的な不安定さ、必須となる巨額の余剰資金、そして破滅に直結しかねない精神的負荷と依存症のリスクから、非常に危険かつ非現実的な選択であると言わざるを得ません。
競馬で生計を立てる天才東大生の実例
- YUKINOSUKE
メディアで時折取り上げられる「競馬で生計を立てる天才東大生」という存在は、従来の競馬ファンとは全く異なるアプローチで収益化を試みている象徴的な例と言えます。彼らの最大の武器は、長年の勘や経験則、あるいは「馬を見る目」といった主観的なものではなく、高度な数学的・統計的な分析能力です。
彼らのアプローチの根本は、競馬を「運否天賦のギャンブル」としてではなく、「統計的な投資対象」として客観的に捉え直している点にあります。この手法は、金融工学の世界でアナリスト(クオンツ)が株価の適正価値を算出したり、現代のデータサイエンティストが膨大なデータから未来の傾向を予測したりする作業に極めて近いものです。
「期待値」の徹底的な追求
彼らが最も重視する指標は「的中率」ではありません。なぜなら、たとえ的中率が80%を超えるような堅い馬券(例:1番人気の複勝)であっても、配当が低すぎれば、前述の「控除率の壁」によって長期的には必ずマイナス収支になることを知っているからです。
彼らが唯一の指標とするのは「期待値」です。期待値とは、その馬券を何度も(理論上は無限回)買い続けた場合に、1回の購入あたりでどれだけのリターン(利益または損失)が見込めるかを示す平均値です。
期待値に基づく投資判断の例
- 【期待値プラスの例】 ある馬の本来の実力(モデルが算出した勝率)が10%(10回に1回勝つ)だとします。もし、この馬の単勝オッズ(配当倍率)が11倍ついていれば、期待値は「10% × 11倍 = 1.1」となり、1を上回ります。これは、100円を買い続ければ平均110円のリターンが見込めることを意味し、「投資対象として有利である」と判断されます。
- 【期待値マイナスの例】 逆に、どれだけ強い人気馬でも、モデルが算出した勝率が60%のところに、オッズが1.5倍しかついていなければどうでしょうか。この場合、期待値は「60% × 1.5倍 = 0.9」となり、1を下回ります。これは100円買い続けると平均90円しか戻ってこないことを意味し、「投資対象として不利(買うべきではない)」と判断されます。
彼らは、このオッズ(市場全体の評価)と、自ら算出した本来の実力(モデルの評価)との間に生じる「歪み」、すなわち「市場が間違って過小評価している馬」をシステマティック(体系的)に見つけ出し、そこに資金を投じることを繰り返します。
AIや統計モデルによる分析(実行手段)
この「期待値の高い馬券」を人間が主観で探し続けるのは非効率であり、バイアス(思い込み)も入ります。そこで、彼らはプログラミング言語(主にPythonなどが用いられます)を駆使し、独自の予測モデル(アルゴリズム)を構築・運用します。
そのプロセスは、主に以下の3段階に分かれます。
予測モデル構築の3ステップ
- データ収集と加工 JRAが提供する公式データサービス(JRA-VANなど)から、過去数十年分に及ぶ膨大なレースデータを取得します。データには、着順、タイム、血統、馬体重、騎手、調教師、斤量(ハンデ)、枠順、馬場状態、通過順位、上がり3ハロンのタイムなど、文字通り数百の項目が含まれます。これらをそのまま使うのではなく、例えば「タイムを馬場状態で補正する」といった「データの加工・クレンジング」を行い、分析しやすい形に整理します。
- 予測モデルの構築 次に、統計学の手法(重回帰分析など)や、近年ではAI(機械学習)を用います。これは、「レース結果(勝敗)に影響を与える要因(変数)が何十、何百もある中で、どの要因がどれだけ勝率に影響するかを数学的に導き出す」作業です。これにより、各出走馬の客観的な「予測勝率」や「予測走破タイム」を算出するモデルを作ります。
- バックテスト(過去検証) モデルが完成してもすぐには使いません。そのモデルを、まだ学習させていない過去のレースデータに適用し、「もし過去10年間にこのモデル通りに馬券を買い続けていたら、実際に利益が出ていたのか(回収率は100%を超えていたか)」を徹底的に検証します。この検証作業(バックテスト)で十分な収益性が見込めなければ、モデルの改良を何度も繰り返します。
アプローチの強みと継続的な課題
このアプローチの最大の強みは、人間の主観や感情(「この馬が好き」「前走惜しかった」「そろそろ勝つはず」)を完全に排除できる点にあります。たとえ10連敗したとしても、モデルが「期待値プラス」と算出すれば、精神的に動揺することなく、ルール通りに冷静な投資判断を実行できます。
ただし、この手法は一度確立すれば永遠に稼ぎ続けられる「打ち出の小槌」ではありません。
継続的なメンテナンスの必要性
競馬のルール変更、馬場の改修、新しい血統のトレンド、騎手の技術変化などに合わせて、市場(オッズ)も常に変化し続けます。昨日まで有効だったモデルの優位性が、明日には失われているかもしれません。
そのため、モデルを常に最新のデータで学習させ、そのパフォーマンスを監視し、必要に応じて改良し続ける「継続的なメンテナンス作業」が不可欠です。この手法を確立し、さらに維持し続けるには、高度な専門知識と膨大な試行錯誤の時間が求められるため、誰もが簡単に成功できるわけではないこともまた事実です。
競馬生活で月収300万円を目指す戦略
- 競馬で毎月5万円稼ぐ方法とは
- 副業競馬で月50万円生活の可能性
- 複勝生活は成り立つのか
- 競馬で勝ってる人の買い方の共通点
- サラリーマンが競馬で稼ぐ一番簡単な方法
- 競馬生活で月収300万円の総括
競馬で毎月5万円稼ぐ方法とは
- YUKINOSUKE
月収300万円という非常に高い目標をいきなり目指す前に、まずは現実的な第一歩として「競馬で毎月5万円稼ぐ方法」を考えることが重要です。この段階で最も大切なのは、その位置づけです。競馬を生活の柱(本業)にするのではなく、あくまで本業の収入を補完する「副業」や「お小遣い稼ぎ」として明確に線引きすることが、精神的な安定につながります。
実際に、本業を持つサラリーマンをしながら、毎月5万円程度のプラス収支を目標にし、上手く競馬と付き合っている人は存在します。データベースの情報によれば、当初は勘に頼って負けていたものの、独自のオッズ理論などを確立して安定的に稼げるようになったという事例もあります。彼らの多くに共通するのは、本業に支障が出ない範囲で、時間をかけずに実践できる効率的な戦略を立てている点です。
月5万円の副収入を目指すための、現実的なアプローチを3つの柱で紹介します。
1. 徹底したレース厳選(「買わない」勇気)
本業を持つ人が競馬に割ける時間は限られています。土日の全レース(最大72レース)を詳細に分析することは物理的に不可能です。そこで、1日に参加するレースを1~2レース、多くても数レース程度に厳選することが鉄則となります。
例えば、「自分なりの分析基準をクリアした馬が出走するレース」や「オッズに妙味がある(市場が過小評価している)馬がいるレース」だけに限定します。「G1だから参加する」「最終レースだから取り返したい」といった、「なんとなく」での馬券購入を徹底して避けることが、マイナス収支を減らすための第一歩です。
G1レースを避ける戦略
G1などの注目度が高いレースは、普段競馬をしない層も多く参加するためオッズが歪むこともありますが、同時に情報量も膨大で分析に時間がかかります。あえてそうしたレースを避け、分析が手薄になりがちな条件戦やローカル開催に絞るのも、副業としては賢明な戦略の一つです。
2. 継続可能な「簡潔な理論」の確立
勘に頼るのではなく、自分なりの分析基準や戦略(ルール)を持つことが、安定した収益への鍵となります。ただし、前述の「天才東大生」のような複雑なAIモデルを構築する必要はありません。副業として行う以上、「継続可能性」が最も重要であり、ルールは簡潔であるべきです。
- 得意条件への特化 例:「東京ダート1600m戦だけは徹底的に研究する」と決める。こうすることで、分析対象が絞られ、枠順の有利不利(例:外枠が有利)、特定の血統(種牡馬)の傾向、得意な騎手など、浅く広い知識ではなく「狭く深い知見」を蓄積できます。
- 簡潔なオッズ理論の構築 例:「単勝オッズは5番人気だが、複勝オッズは2番人気並みに売れている(=複勝だけを買う層が何らかの理由で評価している)」馬を探すなど、自分なりのパターンを見つけ、過去データで検証します。
- シンプルなデータ分析 例:「追い切り(調教)タイムが坂路で自己ベストを更新した馬」と「過去に同じコースで3着以内に入った実績がある馬」が重なった時だけ買う、など、誰でも調べられる簡潔なデータの組み合わせでルールを作ります。
3. メンタルを守る「堅実な券種」の選択
副業として行う上で、本業のパフォーマンスに悪影響を及ぼさないことは絶対条件です。もし、週末の競馬で大負けし、そのイライラや落ち込みを引きずったまま月曜日の重要な会議に臨むようでは、本末転倒です。
そのため、高配当を狙える三連単やWIN5といったハイリスク・ハイリターンな券種は、精神的なダメージが大きくなりがちです。副業であれば、的中率を重視した複勝やワイドを中心に、コツコツと利益を積み上げる戦略が有効です。当たりの回数を増やすことで、「今月もプラスで終えられた」という精神的な安定と自信を得やすくなり、冷静な判断を継続することにつながります。
明確な資金管理ルールの設定
これら3つの柱を支える土台として、「資金管理」が不可欠です。「月5万円稼ぐ」という目標と同時に、「月の馬券予算は2万円まで」といった明確な上限を必ず設定してください。この予算内で、回収率250%を目指す、といった具体的な数値目標を持つことが、冷静さを保つために役立ちます。
毎月5万円であっても、年間では60万円の利益になります。これは生活を大きく変えるものではありませんが、旅行に行ったり、新しい趣味を始めたりするには十分な「ゆとり」を生み出します。まずは大きな負けをせず、自分で決めたルールを守って「小さな成功体験」を積み重ねることが、競馬と長く健全に付き合っていくための最も重要な秘訣です。
副業競馬で月50万円生活の可能性
- YUKINOSUKE
「副業競馬で月50万円生活」は、前述した月5万円のステージからさらに一歩進んだ、非常に魅力的な目標です。年間に換算すれば600万円の利益となり、本業の収入を大きく上回る可能性さえあります。しかし、その目標達成のハードルは、月5万円の時とは比較にならないほど格段に上がります。
理論上は可能ですが、これを「副業」として、つまり本業の傍らで安定して達成し続けるには、もはや副業の域を超えるレベルの専門知識、分析時間、そして何よりも潤沢な軍資金が求められます。月5万円が「お小遣い稼ぎ」の範疇であるならば、月50万円は完全に「事業」の領域です。片手間で出し続けることは、現実的には極めて困難と言わざるを得ません。
その主な理由は、以下の3つの巨大な障壁があるためです。
1. 必要となる莫大な「投資額(軍資金)」
まず、月50万円の純利益を得るためには、相応の投資額(軍資金)が必要になります。例えば、プロの馬券師でも達成が難しいとされる年間回収率120%を、あなたが毎月安定して維持できたと仮定しましょう。その場合でも、利益50万円を出すためには、以下のような計算になります。
回収率120%で月50万利益を出すシミュレーション
(投資額 × 1.20 (回収率)) – 投資額 = 500,000円 (利益)
0.20 × 投資額 = 500,000円
必要な月間投資額 = 2,500,000円
つまり、毎月250万円もの馬券を購入し、かつ120%という極めて高い回収率を維持し続ける必要があります。重要なのは、この250万円は生活費とは別枠の「リスクマネー(失っても生活が破綻しない余剰資金)」でなければならない点です。
本業を持つサラリーマンが、これだけの余剰資金を確保し、さらにそれを毎月リスクに晒し続ける精神的なプレッシャーは計り知れません。
もし回収率が110%なら?
回収率120%は非常に高い目標です。仮に、それでも十分に優秀な「回収率110%」で月50万円の利益を目指す場合、必要な月間投資額は500万円に跳ね上がります。
2. 高度な戦略と「投資効率」の問題
なぜ、これほど高額な投資が必要になるのでしょうか。それは「投資効率」の問題があるからです。
前述の月5万円レベルであれば、複勝やワイドといった的中率重視の堅実な券種で、コツコツと利益を積み上げる戦略も有効です。しかし、月50万円の利益をこの手法で得ようとすると、必要な投資額が天文学的な数字になってしまいます(例:オッズ1.1倍の複勝だけで月50万円の利益を出すには、月500万円の投資が必要)。
したがって、必然的に馬連や三連複、時には三連単といった、より的中難易度が高く、一撃で大きなリターンが期待できる券種で、高配当を戦略的に仕留める高度な予想技術が不可欠となります。これは同時に、連敗が続くリスク(ドローダウン)も大きくなることを意味します。
3. 副業の枠を超える「膨大な時間的コスト」
この高度な戦略を維持するためには、膨大な「時間的コスト」を支払わなければなりません。週末のG1レースを数時間かけて分析する、といった趣味の延長線上のレベルでは、年間600万円もの利益を生み出す「期待値」を積み上げることは不可能です。
期待値の高い(オッズに妙味がある)レースは、G1のような注目度の高いレースよりも、むしろ一般のファンが分析を手薄にしがちな平日の地方競馬(南関東、門別など)や、土日の午前中に行われる未勝利戦・条件戦にこそ眠っています。
つまり、月50万円を目指すには、これらのレースも含めてほぼ全てのレースを監視・分析する体制が実質的に必要となります。これを「副業」として行うことは、以下のような事態に直結します。
- 平日の夜は、本業の疲れを押して地方競馬の分析に充てられる。
- 土日も早朝から深夜までレース分析に追われ、家族サービスや休息の時間が犠牲になる。
- 睡眠時間を削ることで、本業のパフォーマンスが著しく低下する。
結論:「第二の本業」としての覚悟
「副業競馬 月50万生活」は不可能ではないかもしれませんが、それはもはや「副業」と呼べるような生易しいレベルではありません。それは、専門知識、潤沢な資金、そして何よりも私生活の多くを犠牲にするほどの膨大な時間を要求される、「第二の本業」あるいは「本業」レベルのコミットメントを必要とする、極めて難易度の高い挑戦であると結論付けられます。
複勝生活は成り立つのか
- YUKINOSUKE
「競馬で複勝生活」という戦略は、その「的中率の高さ」から、一見すると最も堅実でリスクが低い手法のように思えます。競馬の券種の中で、選んだ馬が3着以内に入れば的中となる「複勝」は、当然ながら最も当てやすい馬券です。特に競馬初心者が「まずは複勝から」と推奨されることも多く、この手堅さを突き詰めれば、安定した生活が送れるのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。
この戦略の根拠となるのが、1番人気の複勝率(3着以内に入る確率)です。データによれば、中央競馬における1番人気の馬が3着以内に入る確率は、約60%~63%とされています。この「10回に6回は当たる」という数字だけを見ると、安定した収入源として期待できるかもしれません。
1番人気の複勝に関しては、こちらの記事【競馬の1番人気の複勝で回収率は上がる?データで徹底解説】でも詳しく解説しています。
しかし、この戦略で「生活」を成り立たせる、つまり安定した生活費を稼ぎ出そうとすると、二つの致命的な課題に直面します。
1. 極端な低配当と「ハイリスク・ローリターン」の矛盾
複勝の最大のデメリットは、的中しやすい反面、当然ながら配当(オッズ)が非常に低くなる点です。特に、的中率の高い人気馬であればあるほどオッズは下がり、元本がわずか10%~20%増えるだけの1.1倍~1.2倍といったことも珍しくありません。
仮に、オッズ1.2倍(100円が120円になる)の複勝レースで、「10万円」の利益を得ようとした場合、いくら投資する必要があるでしょうか。
(投資額 × 1.2倍) – 投資額 = 100,000円 0.2 × 投資額 = 100,000円 必要な投資額 = 500,000円
たった10万円の利益を得るために、50万円もの大金をたった1レースに投じる必要があるのです。そして最も恐ろしいのは、前述の通り、1番人気馬であっても「10回に約4回は馬券圏外(4着以下)に沈む」という事実です。つまり、50万円という大金を投じても、約40%の確率でその全額を失うリスクを背負うことになります。
投資として最悪の構造
これは、投資の世界で最も避けるべきとされる「ハイリスク・ローリターン」の典型です。「投じる金額(リスク)は非常に大きいのに、成功した時の見返り(リターン)は極めて小さい」という、投資として全く釣り合わない構造になっています。月の手取りが25万円の人が、生活費の2ヶ月分をたった1レースに投じるようなものであり、これを「安定した生活術」と呼ぶことはできません。
2. 「複勝転がし」という確率的な幻想
「それなら、少ない資金から雪だるま式に増やせばいい」と考えるのが、「複勝転がし(コロガシ)」という手法です。これは、例えば1万円からスタートし、的中した払戻金(例:1万2千円)の全額を、次のレースに再投資していく方法です。確かに5回、10回と連続で成功すれば、資金は数十万円に膨れ上がります。
しかし、これもまた「1回の不的中で全ての資金がゼロになる」という点で、生活を支える安定した手法とは到底言えません。
仮に、的中率60%(1番人気を選び続けるのと同じ確率)のレースを選び続けたとしても、その成功確率は以下のようになります。
- 5回連続で成功する確率:0.6の5乗 = 約7.8%
- 10回連続で成功する確率:0.6の10乗 = 約0.6%
10回連続で成功する確率はわずか0.6%しかなく、これは100回挑戦しても1回成功するかどうかというレベルの低い確率です。どこかで必ず失敗(=全損)する構造になっており、これを生活の基盤とすることは不可能です。
「止め時」が存在しない構造的欠陥
複勝転がしのもう一つの問題は、「どこで利益を確定(利確)するか」という判断が極めて難しい点です。10回成功して資金が100万円になったとしても、「次の1回で失敗したらゼロになる」という恐怖と、「もう1回成功すれば120万円になる」という欲望が天秤にかかります。この手法は、継続するほど破産確率が100%に近づいていくのです。
結論として、複勝は「馬券を当てる」という体験をするためには最適な券種ですが、それだけで生活費を稼ごうとすると、矛盾した高額投資を強要されるか、確率的に必ず破綻する手法に頼らざるを得ません。これはもはや堅実な投資ではなく、極めてハイリスクなギャンブルであり、安定した生活を築くための現実的な戦略とは言い難いでしょう。
競馬で勝ってる人の買い方の共通点
- YUKINOSUKE
競馬で長期的に利益を上げ続けている、いわゆる「競馬 勝ってる人」の買い方には、いくつかの明確な共通点が見られます。驚くべきことに、それは「どの馬を選ぶか」という神がかり的な予想技術そのものよりも、その前段階である資金管理とマインドセット(思考法)に関する部分が非常に大きいのです。
彼らは「どうやって高配当を当てるか」ということ以上に、「どうやって負けをコントロールし、破産せずにこのゲームに参加し続けるか」という、サバイバルの視点を徹底的に考えています。感情的に「勝つこと」を目指すのではなく、合理的に「負けないこと(=生き残ること)」を最優先するのです。
その合理的な思考は、主に以下の3つの具体的な行動となって現れます。
1. 厳格な資金管理(破産しないためのルール)
これは、全ての勝者に共通する最も重要な点です。彼らは自分の感情(「今日はツイている」「絶対の自信がある」)に流されることなく、自ら定めた厳格なルールを、まるで機械のように遵守します。
具体的な資金管理ルール
- 投資額の固定(定率投資) 1レースに投じる金額を、総資金(馬券用の口座残高)の1%~2%以内など、必ず一定の割合に固定します。例えば、総資金が100万円なら、1レースの投資上限は1万円~2万円です。これは、仮に10連敗という最悪の不調期が訪れたとしても、失う資金は全体の10%~20%程度に収まり、再起不能なダメージを避けられるからです。たとえどれだけ自信があるレースでも、このルールを曲げて資金を5%も10%も投じることはありません。
- 「追い上げ」の絶対的厳禁 負けが込んだ時に、それを取り返そうと次のレースの賭け金を倍に、さらに倍にと増やしていく行為(マーチンゲール法などに代表される「追い上げ」)は、破産への最短ルートであると理解しています。なぜなら、連敗が続けば必要な賭け金が指数関数的に増大し、どれだけ潤沢な資金があっても理論上は必ず破産するからです。特に「生活費が懸かっている」というプレッシャーは、この危険な行動を誘発しやすいため、彼らは自らを律します。
- 明確な「利確」と「損切り」 1日の利益目標額や損失許容額をあらかじめ決めておきます。そして、そのラインに達したら、たとえその日の最終レースに絶好の狙い馬がいたとしても、きっぱりとその日の勝負を終えます。人間は心理的に「利益は早く確定したがり、損失は取り返そうと先送りする」傾向がありますが、その本能に逆らう規律こそが、長期的な利益を守ることにつながります。
2. 戦略的なレース選定(「ケン」する勇気)
勝っている人は、年間に3,000以上行われる全てのレースに参加するような無謀なことはしません。彼らは、自分のリソース(時間・知識・資金)が限られていることを知っており、そのリソースを最も期待値が高いと判断できるレースだけに集中させます。
得意な条件(エッジ)に特化する
G1のようなメジャーレースは情報も多く分析しやすい反面、多くの人が注目するためオッズが「効率的」(=実力通りで妙味が少ない)になりがちです。むしろ、一般ファンが分析を手薄にしがちな「午前中の未勝利戦」「ローカル競馬場(例:福島、新潟)の条件戦」「ダートの短距離戦」など、自分の予想法が最も通用する(=他人より優位性を持てる)ニッチな条件に特化しているプロは少なくありません。
そして、最も重要なスキルの一つが「見(ケン)=参加しない」という勇気を持つことです。少しでも分析に自信が持てないレースや、荒れそうで予測困難だと判断したレースは、迷わず見送ります。
なぜなら、馬券を買わなければ損失はゼロ(回収率100%)だからです。「期待値がマイナスと判断したレースに参加しないこと」こそが、トータルの回収率を100%以上に引き上げるための絶対的な土台となります。
3. 買い目の最適化(「トリガミ」の徹底回避)
多くの負けている人は、「とにかく当てたい」という心理から、不安に駆られて買い目(馬券の組み合わせ)をむやみに広げてしまいがちです。しかし、的中率を上げようと点数を増やしすぎると、たとえ的中しても払戻金が投資額を下回る「トリガミ」になるリスクが高まります。
トリガミが危険な理由
トリガミは、「予想は当たったのに、お金は減る」という最悪の結果の一つです。これは単に資金を減らすだけでなく、「自分の予想は合っていたのに負けた」という強烈なストレスを生み出します。このストレスが、その後の「取り返そう」という焦りにつながり、冷静な判断を狂わせる大きな原因となるのです。
勝っている人は、自分の予想法に基づき、的中率と回収率のバランスが取れた最適な券種と点数を選択します。むやみに的中率だけを追わず、かといって回収率だけを追って無謀な大穴狙いに終始することもなく、「期待値」が最も高くなる買い方を追求します。
例えば、本命馬(軸)には自信があるが相手が絞りきれない場合は、三連単で手広く買うのではなく、軸馬からの「馬連」や「三連複」で点数を絞って投資し、トリガミのリスクを徹底的に排除します。
これらの共通点は、全て感情的なギャンブルを排除し、長期的な視点で収支をプラスに維持するという、極めて合理的かつストイックな思考に基づいています。
トリガミに関しては、こちらの記事【競馬のトリガミとは?意味と防止策、買い方のコツを解説】でも詳しく解説しています。
サラリーマンが競馬で稼ぐ一番簡単な方法
- YUKINOSUKE
本業で平日の大半が拘束され、週末も家族サービスや休息が優先となる多忙なサラリーマンにとって、競馬で副収入を得る道は非常に限られています。前述の通り、競馬で安定した収益を追求するには、膨大な過去データの分析、全レースの映像確認、調教(トレーニング)の評価、そして当日の馬場状態の把握など、専門家が膨大な時間を投下するプロセスが不可欠です。
これをゼロから自分で行おうとすれば、睡眠時間を削るか、本業のパフォーマンスを犠牲にするしかありません。現実的に、このアプローチは継続不可能でしょう。
そこで、最も合理的かつ「簡単」な方法として浮上するのが、「すでに結果を残しているプロの予想や、高性能なAI予想を参考にすること」です。これは、自分が最も苦手とする、あるいは最もリソース(時間)を割けない「分析作業」そのものを、信頼できる外部に委託するという考え方です。
この手法には、時間が限られたサラリーマンにとって計り知れないメリットがあります。最大の利点は、圧倒的な情報収集の手間が省ける点です。自分では到底追い切れないような、全出走馬の調教チェック、難解なレースの過去データ分析、さらには関係者コメントの精査といった膨大な作業を、専門家が代行してくれます。
結果として、時間的コストの劇的な削減につながります。あなたが行う作業は、週末に公開された予想の中から、自分の予算や考え方(例えば、堅実に狙うのか、穴を狙うのか)に合うものを選び、馬券を購入する、という最終判断だけになります。これならば、通勤時間や昼休みといった隙間時間でも完結させることが可能です。
このように、仕事と競馬の両立が容易になる点も大きな魅力です。平日は本業に100%集中し、週末だけプロの知見を「参考」にして競馬に参加する、というメリハリの効いたスタイルが実現できます。
ただし、ここで絶対に誤解してはならない点があります。それは、「プロの予想に丸乗りすれば、誰でも簡単に月収300万円を達成できる」というわけでは決してない、ということです。競馬に「絶対」は存在しません。
しかし、全くの知識ゼロから自分で試行錯誤を繰り返し、貴重な資金と時間を失い続けるリスクを考えれば、すでに検証され、結果を出している手法を「参考にする」ことは、遥かに効率的に収益を上げられる可能性を高めるアプローチであることは間違いありません。
AI予想に関しては、こちらの記事【チャットgpt競馬データ分析で勝率アップ!やり方解説】でも詳しく解説しています。
注意点:玉石混交の「情報源」を見極める
この戦略を採用する上で、最大の障壁となるのが「信頼できる情報源の選定」です。インターネット上には、それこそ星の数ほどの競馬予想サイトや情報(noteやSNSを含む)が溢れていますが、残念ながらその大半は玉石混交です。
中には、非現実的な的中実績(例:「帯封連発!」)を謳い、高額な情報料を請求するだけで、実際には何の根拠もない予想を提供している悪質なサイトも少なくありません。
安易な有料情報に手を出さない
「今週のG1は鉄板です」といった甘い言葉に誘われ、いきなり高額な有料情報に手を出すのは最も危険な行為です。
信頼できる情報源を見極めるためには、まず「無料予想」が充実しているサイトを探し、その予想の「結果」だけではなく「根拠(なぜその馬を選んだのか)」が示されているかを確認することが重要です。
そして、実際に馬券を買わずに、その無料予想の成績を長期間(最低でも1ヶ月、できれば3ヶ月)記録し続けます。その結果、安定して回収率が100%を超えている(あるいは、そうでなくても根拠に一貫性がある)と判断できた場合にのみ、少額での利用を検討すべきです。
時間的リソースが絶対的に不足しているサラリーマンにとって、他者の優れた知見を活用すること、すなわち「時間を買う」という発想は、副業として競馬に取り組む上で、最も合理的かつ「簡単」な第一歩と言えるでしょう。
時間の上手な使い方については、こちらの記事【競馬予想にかける時間は無駄?時短と精度の両立するコツ】でも詳しく解説しています。
競馬生活で月収300万円の総括
- YUKINOSUKE
最後に、この記事で解説してきた「競馬生活で月収300万円」を目指すことの現実性と、そこに至るまでの戦略について、重要なポイントを総括します。この目標がいかに困難であり、どのようなアプローチが考えられるかを理解するためのまとめです。
- 競馬生活で月収300万円の達成は理論上ゼロではないものの、現実的には極めて困難な目標である
- この目標達成には1日10万円、中央競馬のみなら1日40万円もの利益をコンスタントに稼ぎ出す必要がある
- 競馬が稼げないと言われる最大の理由は「控除率(テラ銭)」と「税金(一時所得)」という構造的な壁の存在
- 馬券は購入時点で主催者に約20%~30%が控除され、残りの約70%~80%のパイを参加者同士で奪い合うゲームである
- 利益は原則「一時所得」扱いとなり、年間収支がマイナスでもハズレ馬券を経費計上できず課税される理不尽なリスクがある
- 競馬で生活してる人は感情を排し、地道なデータ分析と厳格な自己管理を徹底する「孤高の事業主」に近い存在である
- 生活を懸けると「ローンの審査が通らない」といった社会的信用の低さや、予想法が陳腐化する将来への絶え間ない不安に直面する
- 天才東大生に代表される一部の層は、統計学やAIを用いて「期待値」がプラスになる馬券(市場が過小評価した馬券)のみを買い続ける
- 高額目標の前に、まずは副業として「競馬で毎月5万円稼ぐ」ことを現実的なステップとして推奨
- 副業で月50万を目指すには、仮に回収率120%でも月250万円の投資額が必要な場合があり、もはや副業の域を超える
- 「競馬 複勝 生活」は的中率こそ高いが、低配当ゆえに高額投資が必須となり、一度の外れで破綻するハイリスク・ローリターンな手法である
- 「競馬 勝ってる人 買い方」の共通点は、予想技術以前に「厳格な資金管理」と「自信のないレースは勇気を持って見(ケン)する」規律である
- 負けを取り返そうとする「追い上げ」行為は破産への最短ルートであり、それを絶対にしない強靭なメンタルが不可欠
- 多忙なサラリーマンが競馬で稼ぐ一番 簡単な方法は、分析時間を買い、プロや高性能AIの予想を「参考」にすること
- 競馬生活は大きな夢やロマンがある一方、本記事で解説したように生活を破綻させかねない非常に高いリスクを伴うことを理解すべき
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