外れ馬券を経費として扱う即パットの税務判断

競馬を愛する者にとって、永遠のテーマであり、同時に最大の不公平感を感じるのが「外れ馬券は経費になるのか」という問題ですよね。私も、年間のトータル収支がマイナスなのに、たまたま高額配当が当たったせいで税金が発生するという理不尽な状況について詳しく調べたときは、正直「えっ、そんなのあり?」と驚きを隠せませんでした。仕事柄、数字の変化には敏感な私ですが、この税務上のルールだけは競馬ファンとしてなかなか納得がいかない部分でもあります。

現在の日本の税制において、競馬の払戻金は原則として「一時所得」に分類されます。この一時所得の計算において、経費として認められるのは所得税法第34条第2項の規定により、「その収入を得るために直接要した費用の額」に限られています。これを競馬に当てはめると、残念ながら「的中した馬券そのものの購入代金」だけを指すことになります。つまり、1レースで10点購入して、そのうち1点だけが的中した場合、当たった100円分は経費になりますが、外れた残りの900円分は、税金の計算上は「なかったこと」にされてしまうのです。

なぜ外れ馬券は経費にならないの?
税務上の考え方では、外れ馬券は「払戻金を得るために直接役立ったもの」とはみなされません。あくまで「外れた結果」としての支出であり、的中に貢献していないという判断がなされるためです。ファンとしては、外れ馬券も含めて一つの「勝負」なのですが、法的には非常にシビアな線引きがなされています。

世間を騒がせた「外れ馬券裁判」の歴史と現在地

この厳しい現実に一石を投じたのが、過去に数億円単位の利益を上げた納税者たちが起こした一連の裁判です。特に有名なのが「大阪の卍氏事件(平成27年最高裁判決)」や「北海道の事件(平成29年最高裁判決)」ですね。これらのケースでは、納税者側が「競馬の利益は一時所得ではなく、雑所得である」と主張しました。雑所得として認められれば、外れ馬券を含めた全馬券の購入代金を経費として差し引くことができるため、税額が数億円単位で変わることになります。

結論から言うと、これらの裁判では、特定の極めて限定的な条件下において、外れ馬券の経費算入が認められました。最高裁が判断基準としたのは、馬券購入が「営利を目的とする継続的行為」であるかどうかです。具体的には、独自の数理モデルや自動購入ソフトを用い、中央競馬のほぼ全レースを対象として、長期間にわたり機械的・網羅的に馬券を買い続けるような「投資」や「業務」と言える実態がある場合に限って、雑所得としての性質が認められたのです。

項目 一般ファン(一時所得) プロ・投資的(雑所得)
購入方法 自身の意思や予想で選択 ソフト等で機械的・網羅的
経費の範囲 的中馬券の代金のみ 外れ馬券を含む全馬券代
最高裁判決の傾向 原則こちらに該当する 極めて例外的な認定
節税効果 低い(特別控除はある) 高い(外れ馬券が引ける)

私たちが「雑所得」で申告する際のリスク

最高裁判決を受けて、国税庁も通達を改正しましたが、そこには依然として「一般の競馬愛好家については、従来どおり一時所得に該当する」という旨が明記されています。私たちのように即パットでレースを選び、予想を楽しみながら馬券を買っているスタイルでは、どれだけ頻繁に購入していても「雑所得」と認められる可能性は限りなくゼロに近いのが現状です。

(出典:国税庁『競馬の馬券の払戻金に係る課税について』)

もし、自分勝手な判断で「トータルでは負けているから」と外れ馬券を全額経費にして申告した場合、後日の税務調査で「所得隠し」とみなされるリスクがあります。その場合、本来の税金に加えて、重加算税などの重いペナルティが課されることになり、生活に大きな支障をきたす可能性も否定できません。

即パットの利用履歴はデジタルデータとして税務署が容易に確認できるものですから、曖昧な処理は絶対に避けなければなりません。仕事でも私生活でも、誠実さが一番だと考えている私としては、まずは現行の「一時所得」のルールに従って正しく収支を管理し、もし高額的中によって判断に迷うようなことがあれば、独断で進めず必ず税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。それが、大切なお金と大好きな競馬ライフを守るための最善策かなと思います。