こんにちは。YUKINOSUKEです。
夏競馬の函館開催、ついに始まりますね。普段は東京や阪神といった本州の広い競馬場で勝負していると、函館芝1200mの傾向があまりに独特すぎて、戸惑うことはありませんか。私自身、競馬を始めたばかりの頃は「たかが直線の長さが違うだけでしょ?」と軽く考えていて、痛い目を見た経験が何度もあります。特に、北海道特有の重い洋芝への適性や、JRAで最も短い直線がもたらす物理的なバイアスのせいで、いつもの予想法が通用せずに悔しい思いをした方も多いのではないでしょうか。
例えば、血統や種牡馬のデータをどう扱えばいいのか、雨が降って重馬場になったらどの馬を狙えばいいのか、悩みますよね。タイムの出方や逃げ馬の信頼度など、函館ならではの攻略ポイントを知っているかどうかで、夏競馬の回収率は大きく変わってきます。この記事では、私が徹底的にリサーチしてまとめたデータを基に、このコースのクセを多角的な視点から解説していきます。初心者の方からベテランの方まで、この記事を読むことで函館芝1200mの景色が少し変わって見えるはずです。
- 函館特有の「スパイラルカーブ」と「短い直線」がレース展開に与える物理的影響
- 「内枠有利」という定説に潜む罠と、データが示す本当に狙い目となる枠順
- モーリスやビッグアーサーなど、洋芝で激走する血統と種牡馬の具体的な条件
- 武豊騎手や横山武史騎手など、このコースを知り尽くした騎手の活用法
過去データから見る函館芝1200m傾向の真実
まずは、コースそのものの形状や過去の膨大なデータから、函館芝1200mという舞台が一体どんな特徴を持っているのかを紐解いていきましょう。イメージだけで「小回りだから内枠有利」と単純に予想すると、思わぬ落とし穴にハマることが多いコースなので、物理的なバイアスをしっかり頭に入れておくことが大切です。
スタート直後の坂がペースに与える影響
- YUKINOSUKE
「函館は小回りだし、平坦なコースでしょ?」
もしあなたがそう思っているなら、その認識は半分正解で、半分は致命的な間違いです。実は、函館競馬場の芝1200mコースには、高低差3.5mというビル2階分に相当する無視できない起伏が存在しており、これがレースの質を根本から決定づけています。
このセクションでは、多くのファンが見落としがちな「函館のアップダウン」が、具体的にどのようにレースペースや馬のスタミナに影響を与えるのか、物理的な視点から深掘りします。
「心臓破り」のロングクライム:スタートから3コーナーまで
まず、コースの断面図を頭に思い浮かべてください。芝1200mのスタート地点は、向正面のポケット奥、2コーナーを回った延長線上にあります。実はこの地点、競馬場全体の中で最も標高が低い場所なのです。
ゲートが開いた瞬間、競走馬たちを待ち受けているのは平坦な道ではありません。そこから3コーナーの頂上付近まで、約490m(レースの約4割)にわたってダラダラとした上り坂が続きます。
ここが過酷!
短距離戦のスタート直後は、各馬がポジションを取るために全速力で走る区間です。その「最も負荷がかかるタイミング」と「長い上り坂」が重なるため、見た目以上にスタミナの消耗が激しいコース設定になっています。
「スピード」より「トルク」が問われる選別区間
この「前半がずっと上り」というレイアウトは、単なるスピード自慢の馬にとっては地獄です。
- 平坦コースが得意な逃げ馬:スピード(回転数)だけで押し切ろうとしても、坂の負荷でトップスピードに乗れず、またたく間に脚を削がれます。
- パワー不足の馬:上り坂で推進力を維持するための「トルク(地面を蹴る力)」が足りないため、追走するだけで一杯になります。
つまり、函館1200mの前半ペースは、数字上のラップタイム以上に「パワー(登坂力)」のフィルターがかかっています。したがって、テンの速さだけでハナを切れると思ったら大間違い。ここで無理をした馬は、後半に余力を残せず脱落していく運命にあります。
3コーナー過ぎからの「重力アシスト」が追い込みを封じる
そして、このコースのもう一つの顔が、3コーナーの頂点を過ぎた後に現れます。約490mを登り切ると、今度は4コーナー、そしてゴールに向けて下り坂に転じるのです。
ここで何が起こるでしょうか?
前半の坂で脚を使わされた先行馬たちが、下り坂の慣性(重力)を利用して自然に再加速(息を入れることなくスピードアップ)できてしまうのです。これを私は「重力アシスト」と呼んでいます。
「前がバテてくれれば差せる」という差し馬の願いとは裏腹に、前の馬は下り坂でスピードを維持したまま、JRA最短の直線(262m)になだれ込みます。後方の馬がこれを差し切るには、物理的に不可能なほどの瞬発力が求められることになります。これが、函館で「行った行った(前に行った馬がそのまま残る)」の決着が多発する最大の物理的要因です。
【YUKINOSUKEの結論】予想に活かすバイアス読み
- 前走の「着順」より「場所」を見る:平坦な新潟や京都で好走してきたスピードタイプより、坂のある中山や中京、あるいはダート戦で先行力を見せていた「パワー型」を評価する。
- 馬体重と筋肉量をチェック:上り坂を苦にしない馬格(480kg〜500kg以上)がある馬や、トモ(後肢)の実が詰まっている馬が有利になりやすい。
- 逃げ馬の質を見極める:「軽いスピードで逃げる馬」は危険。「ガシガシ追って坂を登り切れる馬」こそが、函館の逃げ切り候補。
札幌との違いに見るコース特性
- YUKINOSUKE
夏の北海道シリーズといえば「函館」と「札幌」。どちらも同じ「洋芝」で、1200m戦が組まれているため、ひとくくりに「北海道適性」として処理されがちです。しかし、この2つのコースは、似ているのは直線の長さだけと言っても過言ではないほど、求められる能力が正反対です。
「札幌で好走したから函館も走るだろう」
この安易な考えが、夏競馬で養分になってしまう最大の原因です。ここでは、物理的なコース設計の違いから、なぜ適性が乖離するのかを徹底的に解剖します。
コーナーの「R(半径)」が決定的に違う
最大の違いは、コーナーの緩急です。数字で見ると、その差は歴然としています。
- 札幌競馬場:コーナー半径(R)が約167mと非常に大きい。全体的に丸みを帯びた「大回りコース」です。
- 函館競馬場:コーナー半径(R)が約127mと小さい。小回り特有の「急カーブ」です。
札幌はコーナーが緩やかであるため、スピードを落とさずに曲がることができます。これは、大飛び(ストライドが大きい)の馬や、エンジンの掛かりが遅い馬でも、勢いを殺さずに直線を迎えることができることを意味します。
一方で、函館の急カーブは、スピードに乗ったまま突入すると遠心力に耐えきれません。そのため、コーナーで一瞬減速して小さく回る「器用さ」や「機動力」が必須となります。ここで大飛びの馬は、脚を回転させるピッチが合わず、スムーズに回れずに苦戦することになります。
函館の魔物「スパイラルカーブ」の罠
さらに函館を厄介にしているのが、3コーナーから4コーナーにかけて採用されている「スパイラルカーブ」です。
これは、コーナーの入り口(3コーナー)が緩やかで、出口(4コーナー)がきつくなるように設計されたカーブのことです。理論上は、馬群をばらけさせて差し馬の進路を確保するための構造なのですが、函館の「直線の短さ(262m)」と組み合わさることで、逆に「先行・内枠絶対有利」のバイアスを生む凶器となります。
スパイラルカーブの力学
緩やかな3コーナーでスピードに乗った馬たちが、出口のきつい4コーナーに差し掛かると、急激なカーブに対応できず、強い遠心力によって外へ外へと振られます。
結果として、外を回そうとした差し馬は物理的に外に飛ばされ、内ラチ沿いを最短距離で回った先行馬との距離差が絶望的に広がってしまうのです。
対照的に、札幌競馬場にはスパイラルカーブが採用されていません(出典:JRA公式『札幌競馬場 コース紹介』)。コーナーの入り口から出口まで一定の角度であるため、外を回る馬もリズムを崩さずに加速しやすく、函館に比べれば「外差し」が決まりやすい土壌があるのです。
「不器用な強馬」が消える場所
以上の物理的特性を比較すると、両競馬場で求められる適性の違いが浮き彫りになります。
| 比較項目 | 函館芝1200m | 札幌芝1200m |
|---|---|---|
| コーナー形状 | 半径が小さく急 (スパイラルカーブあり) |
半径が大きく緩やか (スパイラルカーブなし) |
| 遠心力の影響 | 出口で外に振られやすい (距離ロス大) |
比較的スムーズに回れる (スピード維持容易) |
| 求められる能力 | 機動力・コーナリング性能 (小回り適性) |
持続的なスピード・絶対能力 (大箱に近い適性) |
結論として、札幌で「外から豪快に差して勝った馬」や「大味な競馬で好走した大型馬」が、函館に来て人気になった時こそが、馬券的な妙味が生まれる瞬間です。「能力はあるが不器用」な馬は、函館のスパイラルカーブと短い直線の餌食になりやすいからです。
YUKINOSUKEの狙い目
逆に、札幌ではキレ負けしていた「ピッチ走法(脚の回転が速い)」の馬や、ダート的な「パワーと先行力」を持つ馬が函館に替わると、水を得た魚のように激走するケースが多々あります。「札幌と函館は別競技」と割り切って予想することが、回収率アップへの近道ですよ。
タイム傾向と高速馬場の変化
「函館の洋芝は重いから、時計がかかる決着になるだろう」
もしあなたが、過去のイメージだけでこのように判断して予想を組み立てているなら、少し危険かもしれません。確かに洋芝は野芝に比べて水分量が多く、パワーを要する馬場であることは間違いありません。しかし、近年の函館芝1200mは、「時計の出方」そのものの質が劇的に変化しており、単純な「パワー勝負」や「消耗戦」という言葉だけでは片付けられない複雑な様相を呈しています。
ここでは、過去10年で起きた「馬場革命」とも言える管理技術の変化と、それが現代のタイム傾向にどう影響しているのかを詳しく解説します。
「コンクリート馬場」と呼ばれた2017年の衝撃
時計傾向の変化を語る上で、絶対に避けて通れないのが2016年〜2017年の異常事態です。当時の函館競馬場は路盤が極限まで硬く締め固められており、関係者の間では密かに「コンクリート馬場」と揶揄されるほどの高速状態でした。
その象徴的な出来事が、2017年の函館スプリントステークスです。このレースで記録された勝ちタイムは、なんと1分06秒8。これは当時のコースレコードであり、平坦で高速と言われる小倉や京都と遜色のない、異常なスーパーレコードでした。
「速い時計が出るなら、スピード馬を買えばいい」と思うかもしれませんが、問題はその副作用です。あまりに硬すぎる路盤は、着地時の衝撃を逃がすことができず、競走馬の脚元へ甚大なダメージを与えます。故障のリスクと引き換えに出る高速タイムは、決して健全な競馬とは言えませんでした。
2018年の転換点:エアレーションがもたらした「軟化」
この状況を重く見たJRAは、2018年以降、馬場管理の方針を大きく転換しました。導入されたのが、徹底的な「エアレーション(穴あけ)」と「シャタリング(破砕)」という作業です。
これは、専用の機械を使って馬場に無数の穴を開けたり、地中に刃を入れて固まった路盤を砕いたりする作業のことです。これにより、路盤の中に空気が入り込み、クッション性が劇的に向上します。
函館特有の事情:雪による圧密
北海道の冬は厳しく、コース上に積もった雪の重みで、春先には路盤がガチガチに固まってしまいます(圧密現象)。そのため、函館競馬場では他の競馬場よりも念入りに、3月末と5月中旬の「2回」にわたってエアレーション作業を実施しています。この「二度手間」こそが、現在のソフトな馬場を作る鍵なのです。
現在の「標準タイム」と求められる能力
この馬場管理革命により、現在の函館芝1200mは極端な高速決着が減少し、適度な時計のかかり具合に落ち着いています。
具体的には、良馬場における勝ちタイムの標準ゾーンは以下の通りです。
| 馬場状態 | 想定勝ちタイム | 求められる能力 |
|---|---|---|
| 高速(開幕週など) | 1分07秒後半 〜 1分08秒前半 | 絶対的なスピード能力+後半の粘り |
| 標準(良馬場) | 1分08秒後半 〜 1分09秒台 | 洋芝をこなすパワー+持続力 |
| タフ(開催後半) | 1分10秒台 〜 | 重馬場適性・スタミナ・底力 |
以前のような「1分06秒台」が出ることは稀になり、基本的には1分08秒台後半〜1分09秒台での決着がメインとなります。このタイム帯は、単なるスピードだけでは押し切れず、かといって鈍足のパワータイプでは追走に苦労する、非常に絶妙なバランスの上に成り立っています。
開幕週の「疑似高速馬場」に注意
ただし、一つだけ例外があります。それは「開幕週」です。
エアレーションで馬場はソフトになっていますが、開幕週は芝の根張り(ルートマット)が完璧な状態であり、路盤の凹凸も皆無です。そのため、馬の蹄がスムーズに抜けやすく、結果として「時計は出るが、脚への負担は少ない」という理想的なコンディションになります。
YUKINOSUKEの攻略メモ
開幕週に限っては、持ち時計のない馬を軽視するのは危険です。近年の傾向では、開幕週はJRAの公式データ(出典:JRA公式サイト『函館競馬場 コース紹介』)等で確認できる過去の平均タイムよりも速くなるケースが増えています。「パワーが必要」という先入観を持ちすぎず、ある程度のスピード裏付けがある馬(1200mで1分08秒台の経験がある馬など)を素直に評価するのが、的中の近道ですよ。
逃げ馬の回収率が示す圧倒的有利
- YUKINOSUKE
函館芝1200mにおいて、私が最も信頼しており、かつ初心者の方にも最初におすすめしたい「最強の攻略法」があります。それは、小細工なしに「逃げ馬を狙う」というシンプルかつ強力な戦略です。
「逃げ馬が有利なのは短距離戦の常識でしょ?」と思われるかもしれませんが、函館のそれは次元が違います。現代競馬の常識を覆すほどの偏った数値が出ており、もはや「コースのバグ」と言っても過言ではないレベルです。ここでは、なぜ函館の逃げ馬がこれほどまでに強いのか、そしてなぜそれが高い回収率に繋がるのか、そのメカニズムを徹底解説します。
「2回に1回」は馬券に絡む異常事態
まず、以下のデータをご覧ください。これは函館芝1200mにおける「逃げ馬」の成績を大まかに示したものです(集計期間によって多少前後しますが、傾向は常に一定です)。
| 項目 | 函館芝1200m(逃げ) | 一般的なコース(逃げ) |
|---|---|---|
| 勝率 | 約 25.0% | 約 15 – 18% |
| 複勝率 | 約 50.0% | 約 30 – 35% |
| 単勝回収率 | 100%超え多数 | 100%未満が一般的 |
特筆すべきは、複勝率が50%前後で推移しているという点です。つまり、「逃げた馬の2頭に1頭は馬券圏内に残る」という計算になります。未勝利戦などの下級条件に限らず、重賞の函館スプリントステークスにおいてもこの傾向は変わりません。
なぜ「バレている」のに回収率が高いのか?
通常、これほど有利な傾向があれば、多くのファンが逃げ馬に投票するためオッズが下がり、回収率(儲け)は低くなるはずです(オッズの歪みの解消)。しかし、函館の逃げ馬は依然として高い回収率を維持しています。これには明確な理由があります。
それは、「重い洋芝」と「スタートの上り坂」という2つの要素が、ファンの心理にブレーキをかけるからです。
- 「洋芝はタフだから、最後はバテて差し馬が飛んでくるだろう」
- 「スタートから上り坂だから、前半で脚を使って潰れるだろう」
多くの競馬ファンは無意識にこう考え、差し馬や追い込み馬に過剰な期待(馬券投票)をしてしまいます。しかし、前述の通り、函館は「3コーナーから下り坂」であり、前の馬はバテるどころか重力で再加速してしまいます。この「ファンのイメージ」と「物理的な現実」のギャップこそが、逃げ馬のオッズを美味しく維持させている正体なのです。
「物理的」に追い上げ不可能なセーフティーリード
函館の直線距離はJRA最短の262.1mです。これを時間に換算すると、トップスピードで駆け抜ければわずか15秒足らずの出来事です。
物理的に考えて、4コーナーを回った時点で5馬身以上の差をつけられている後方馬が、残り200mちょっとで前の馬を全てごぼう抜きにするのは、ディープインパクト級の能力差がない限り不可能です。逃げ馬が多少ハイペースで飛ばしても、後ろの馬が届く前にゴール板が来てしまう。これが函館名物「行った行った(前に行った2頭で決まること)」のカラクリです。
狙い撃つべき「逃げ馬」の具体的条件
では、どの逃げ馬を買えばいいのでしょうか?私が推奨する「鉄板パターン」は以下の2つです。
1. 「距離短縮」の逃げ馬
前走で1400mや1600mを使っていた馬が、今回1200mに距離を短縮してきた場合です。長い距離を走っていたスタミナがあるため、前半の上り坂を苦にせず登り切ることができ、かつ1200mのペースでは楽にハナを奪えるスピードを持っています。
2. 「前走も逃げて好走した」馬
ひねる必要はありません。前走で逃げて馬券に絡んでいる馬は、調子が良い証拠であり、ここでもハナを切れる可能性が高いです。特に「前走で函館・札幌以外の競馬場で逃げ粘った馬」は、洋芝替わりで更にパフォーマンスを上げる可能性があります。
注意点:追い込み馬の誘惑を断ち切れ
逆に、どんなに上がり3ハロンのタイムが優秀でも、「追い込み一辺倒」の脚質であれば、評価を下げて疑ってかかる勇気が必要です。函館では「上がり最速の脚を使って届かず4着」というのが、人気馬の典型的な負けパターンです。
迷ったら「逃げ馬の単複」。これが函館芝1200mにおける、最もシンプルにして最強の投資戦略と言えるでしょう。
内枠有利の定説と枠順の死角
- YUKINOSUKE
「函館芝1200mはJRAで最も直線が短い。だから、距離ロスのない内枠(1枠・2枠)を買っておけば間違いない」
このロジックは、物理的には100%正しいです。しかし、馬券収支という観点で見ると、これは「養分」への入り口になりかねない危険な思考です。多くの競馬ファンが陥るこの「内枠信仰」の裏には、データだけでは読み取れない、レースの中での致命的なリスク(死角)が潜んでいるからです。
このセクションでは、なぜ「内枠有利」と言われながらも絶対的な正解ではないのか、そのメカニズムと、私が実戦で狙い撃ちしている「本当の好枠」について解説します。
内枠が抱える「どん詰まり」の恐怖
確かに、過去のデータを紐解くと、内枠(1~2枠)の複勝率(3着以内に来る確率)は優秀な数値を残しています。しかし、勝率や単勝回収率を見ると、決して突出しているわけではありません。
なぜでしょうか?その答えは「包まれるリスク(被されるリスク)」にあります。
函館芝1200mはスタートしてから3コーナーまでの距離が短く、外枠の先行馬も積極的にポジションを取りにきます。ここで内枠の馬が、スタートで少しでも後手を踏んだり、二の脚がつかずに中団の位置取りになってしまった場合、どうなるでしょうか。
- 前には逃げ馬がいる。
- 横には外枠から切れ込んできた馬がいる。
- 後ろからも馬が押し寄せる。
こうして四方を馬に囲まれるポケットに入ってしまった瞬間、その馬の勝機はほぼ消滅します。広い東京競馬場なら直線で外に持ち出す時間もありますが、直線が262mしかない函館では、進路を探して右往左往している間にゴール板が通過してしまうのです。「脚はあったのに追えなかった」という消化不良の負け方が最も多いのが、このコースの内枠差し馬です。
【危険な人気馬のパターン】
「テンのスピードが遅い差し・追い込み馬」が「1枠」に入った時です。オッズは「内枠だから」という理由で過剰人気しますが、リスクは最大級。私はこういう馬をバッサリ消して、高配当を狙うことが多いです。
「6枠」こそが勝利へのスイートスポット
では、どの枠が最も狙い目なのでしょうか。私が長年のリサーチと実戦経験から導き出した答え、それは「6枠(馬番で言うと11番~12番あたり)」を中心とした中枠~外枠のゾーンです。
複数のデータソース(直近数年の傾向など)を参照しても、6枠の勝率が11%~12%を超え、複勝率も安定して高い数値を示す期間が多く見られます。なぜ6枠が良いのか、それには明確な理由があります。
- 内の状況を見ながら運べる:スタート直後、内の馬が出遅れたのか、行きたいのかを横目で見ながら、自分のポジションを柔軟に決められます。
- 包まれるリスクが低い:外に壁を作られにくいため、勝負所で「動きたい時に動ける」自由度が高いです。
- 距離ロスが許容範囲:大外(8枠)ほど外を回らされるわけではなく、コースのバイアスを受けにくい絶妙な位置です。
つまり、6枠は「内枠の距離メリット」と「外枠の自由度メリット」のいいとこ取りができる、まさにスイートスポットなのです。
外枠(7・8枠)も決して「死に枠」ではない
最後に、外枠についての誤解も解いておきましょう。「函館の8枠は消し」と決めつけていませんか?
確かにコーナーでの距離ロスは痛いですが、現代の馬場管理(エアレーション)により、外からの差しも決まるケースが増えています。特に注目すべきは以下の2パターンです。
| 狙える外枠の条件 | 理由 |
|---|---|
| 馬体重500kg以上の大型馬 | とびが大きく不器用なタイプは、内で窮屈な競馬をするより、外枠で自分のリズムで走らせた方が、スムーズに加速でき能力を発揮しやすい。 |
| 揉まれ弱い気性難の馬 | 他馬と接触したり砂を被ったりするのを嫌う馬にとって、外枠はストレスフリーな環境。能力全開で一変する可能性がある。 |
YUKINOSUKEの結論
枠順予想の鉄則は以下の通りです。
①内枠(1-2枠):逃げ・先行力があるなら買い。差し馬なら疑う。
②中枠(3-6枠):特に6枠はフラットに評価して信頼度アップ。
③外枠(7-8枠):大型馬やスムーズさを重視する馬なら、人気落ちで美味しい配当になるチャンス。
函館芝1200m傾向を攻略する血統と騎手
後半は、予想の精度をさらに高めるための「人」と「血」の話です。特殊な環境である函館コースだからこそ、得意な血統や騎手が偏る傾向にあります。ここを押さえておくだけで、馬券の組み立てがグッと楽になりますし、思わぬ穴馬を見つけるヒントにもなるでしょう。
洋芝適性が高い血統と種牡馬
- YUKINOSUKE
「洋芝適性」という言葉、競馬新聞や予想番組で耳にタコができるほど聞かされますよね。でも、具体的に何が違うのか、言語化できている人は意外と少ない印象です。
本州の競馬場(野芝)が「反発力のある陸上トラック」だとすれば、北海道の洋芝(ケンタッキーブルーグラスなど)は「力の要るサッカーの天然芝」のようなイメージです。葉が柔らかく水分を多く含んでいるため、着地した蹄がグッと深く沈み込みます。そこから脚を引き抜く際に、野芝以上の「トルク(パワー)」が必要になるのです。
この物理的な違いが、血統による適性の差を残酷なまでに浮き彫りにします。私が函館芝1200mで「神」と崇めている種牡馬と、扱い注意の種牡馬について、データを交えて解説しましょう。
函館の王様「モーリス」の破壊力
まず、このコースで絶対に逆らってはいけないのがモーリス産駒です。現役時代はマイル~中距離の王者というイメージが強かったため、「1200mは短いのでは?」と敬遠されがちですが、それが美味しい配当を生んでいます。
データを見ると、勝率は17.4%、単勝回収率は驚異の172.6%(※直近の集計期間による)を記録しています。なぜこれほど走るのか。それは、モーリスが受け継いだ「グラスワンダー系(ロベルト系)」特有の、無尽蔵のパワーとスタミナが、タフな函館の洋芝と完璧にマッチするからです。
YUKINOSUKEの狙い目
特に「距離短縮」でここに使ってきたモーリス産駒は激熱です。1400mや1600mで先行できるスピードと、1200m戦のハイペースでもバテない心肺機能。この2つが揃ったモーリス産駒は、函館の坂を物ともせずに駆け上がってきます。
モーリス産駒についてはこちらの記事モーリス産駒の特徴【血統データ分析】で詳しく解説していますので参考にして下さい。
札幌はダメでも函館なら買える「ビッグアーサー」
次に紹介するのは、典型的な「函館専用機」とも言えるビッグアーサー産駒です。父はサクラバクシンオーの後継種牡馬ですが、産駒の成績には奇妙な偏りがあります。
あるデータ期間では、札幌芝1200mで【0勝】なのに対し、函館芝1200mでは【5勝】と、成績が天と地ほど違いました。これは、前述した「コーナー形状」の違いが影響していると考えられます。ビッグアーサー産駒は、ピッチ走法で加減速が得意なタイプが多く、函館の「急カーブ+短い直線」というレイアウトでこそ、その機動力が最大限に活きるのです。
「札幌で惨敗したから弱い」と判断されて人気が落ちたビッグアーサー産駒が、函館に替わった途端に激走する。このパターンは夏のドル箱なので、絶対に覚えておいてください。
ロードカナロアの「回収率」に潜む罠
一方で、リーディング上位の常連であるロードカナロア産駒には注意が必要です。勝利数そのものは多いのですが、人気になりやすいため、単勝回収率は40~50%程度に留まることが多いのです。
「とりあえずカナロアを買っておけば安心」という思考は、函館では危険です。馬券的な妙味(期待値)を追及するなら、あえて評価を下げ、代わりにミッキーアイル産駒を狙うのが面白いでしょう。ミッキーアイル産駒は、複勝率(3着内率)が非常に高く、先行して粘り込むスタイルがコースバイアスと合致しています。
| 種牡馬 | 函館適性 | 馬券戦略 |
|---|---|---|
| モーリス | S | 単勝・馬単の頭で積極的に狙う。回収率の王様。 |
| ビッグアーサー | A+ | 函館替わりで一変する穴馬候補。札幌凡走後は狙い目。 |
| ミッキーアイル | A | 複勝率が高い。3連系の軸や相手として優秀。 |
| ロードカナロア | B | 勝つが人気過剰。オッズを見てトリガミにならないよう注意。 |
ロードカナロア産駒については、ロードカナロア産駒の未勝利戦攻略!ダート適性と血統の狙い目を解説で詳しく解説していますので参考にして下さい。
キンシャサノキセキ産駒の苦戦
ここで一つ、意外なデータを紹介しましょう。短距離血統として一時代を築いた「キンシャサノキセキ」ですが、函館芝1200mでは少し評価を慎重にする必要があります。
キンシャサノキセキ産駒は、直線での爆発的な瞬発力やスピードの持続力に優れていますが、どうやら「小回りの急コーナー」や「アップダウンによるペース変化」への対応を苦手とする傾向があるようです。データを見ても、勝率や複勝率が他のトップ種牡馬に比べてやや見劣りするケースが散見されます。
特に、「距離短縮」で臨んでくるキンシャサノキセキ産駒には注意が必要です。ペースが速くなる1200m戦で、コーナーでの機動力が問われる函館だと、追走に苦労してエンジンの掛かりが遅れ、直線の短さに泣いて脚を余して負けるパターンをよく見かけます。人気馬であっても、過信は禁物かなと思います。もちろん個体差はありますが、基本的には「割引材料」として捉えておくと、冷静な判断ができるでしょう。
重馬場で浮上するパワータイプ
「今日の函館は雨か…。荒れそうだな」
朝起きて天気予報を見たとき、多くの競馬ファンは不安を感じるかもしれません。しかし、私たちのようなデータ派にとっては、雨こそが「高配当への招待状」です。函館の洋芝が水分を含んで「重馬場」や「不良馬場」になったとき、コースの傾向はガラリと一変します。
良馬場であれば多少のスピードで誤魔化せた部分が、道悪になると一切通用しなくなります。素軽いフットワークで走る「高速巡航型」の馬がノメリ気味に失速する横で、泥臭い「パワー特化型」の馬が水を得た魚のように突き抜ける。ここでは、そんな劇的な逆転現象を見抜くための血統戦略を解説します。
「ダート的なパワー」が支配する世界
雨の函館を攻略するキーワード、それはズバリ「ダート適性」です。
水分を含んだ洋芝は、想像以上に脚を取られます。タイヤで例えるなら、舗装路を走るスリックタイヤ(スピード血統)ではスリップしてしまい、オフロードタイヤ(パワー血統)でなければ前に進まないような状態です。そのため、芝のレースであっても、血統背景に「ダートでの実績」や「ダート向きの種牡馬」を持つ馬が急浮上します。
私が道悪になった瞬間に評価を爆上げする種牡馬は以下の通りです。
| 種牡馬 | 道悪での特徴・推奨理由 |
|---|---|
| サトノアラジン | 重馬場でのパフォーマンス上昇度が異常に高いです。データ期間によっては勝率40%超えを記録することもあり、タフな馬場になればなるほど他馬との差を広げます。母父ストームキャットの影響か、悪路を苦にしない心身の強さがあります。 |
| ジョーカプチーノ | 産駒数は多くありませんが、函館1200mとの相性が抜群。特に時計のかかる馬場では無類の強さを発揮し、単勝回収率が跳ね上がります。「一発あるならこの血統」と覚えておいて損はありません。 |
| クロフネ | 既にベテラン種牡馬の域ですが、その「パワー遺伝子」は健在です。母父に入ってもその影響力は強く、全体的に時計がかかる消耗戦になった時に、馬力でねじ伏せるシーンを何度も目撃しています。 |
欧州の重厚な血が「再生」をもたらす
次に注目すべきは、血統表の奥(母父や祖母の父など)に眠る「欧州血統」です。
日本の高速馬場では「重すぎてスピード負けする」と敬遠されがちな、サドラーズウェルズ系(Sadler’s Wells)やノーザンダンサー系(Northern Dancer)、あるいはロベルト系といった重厚な血統。これらが、雨の函館では最強の武器に変わります。
【YUKINOSUKEの「再生」理論】
普段、東京や京都の高速馬場で「上がり34秒台」しか使えず、キレ負けして大敗している馬がいませんか?もしその馬の血統に欧州系の重い血が入っていれば、雨の函館は絶好の「再生工場」となります。
周りの馬が36秒かかるところを、自分だけ普段通りのパフォーマンスで走れば相対的に「最速」になる。このパラドックスを狙うのが、道悪攻略の極意です。
過去のデータが示す「スタミナ×ダート」の法則
少し古いデータになりますが、かつて函館の道悪で猛威を振るったのがジャングルポケットやアグネスデジタルといった種牡馬でした。
- ジャングルポケット:東京2400m(ダービー)を勝つスタミナとトニービンの持続力。
- アグネスデジタル:芝・ダート兼用の万能性とパワー。
この傾向は現代にも通じています。つまり、求められているのはスプリント能力だけでなく、「中距離を走り切れるスタミナ」と「ダートをこなせるパワー」の複合能力なのです。
現代の種牡馬で言えば、キズナ(パワー型ディープ系)やドレフォン(ダート血統だが芝もこなす)などがこの系譜に近い働きをします。「1200mのスピード勝負」という固定観念を捨て、「1200mの泥んこ耐久レース」という視点で予想を組み立てると、今まで見えなかった穴馬(バイアスに愛された馬)が浮かび上がってくるはずですよ。
騎手ごとの成績と回収率の癖
- YUKINOSUKE
「函館は騎手で買え」
古くからの格言ですが、これは現代のデータ競馬においても色褪せない真実です。直線わずか262mという極小コースでは、道中のポジション取りやコーナーでの進路取りが勝敗の8割を決定づけます。広いコースなら直線の豪脚で挽回できても、函館では「仕掛け遅れ」が即「敗北」に直結するからです。
ここでは、函館芝1200mの「コースバイアス(偏り)」を熟知し、馬の能力を限界まで引き出すことができる4人の「函館マイスター」を紹介します。迷った時は、彼らが跨っているという理由だけで買い目に入れる価値があります。
【レジェンドの最適解】武豊騎手
まず筆頭に挙げたいのが、競馬界のレジェンド武豊騎手です。全盛期ほどの勝利数はなくとも、函館芝1200mにおける彼の騎乗技術は、今なお「芸術」の域に達しています。
彼の真骨頂は、恐怖を感じるほどの「イン突き」です。
函館のスパイラルカーブは、スピードに乗った馬を外へ外へと振る遠心力が働きます。多くの騎手がそれを嫌って安全な外を選びたがる中、武豊騎手は馬場の悪い内ラチ沿いを、まるで定規で引いたように最短距離で回ってきます。「外を回して届かず」という凡走が極端に少なく、距離ロスを極限まで削るその騎乗スタイルは、直線の短いこのコースで驚異的な回収率を叩き出します。
| 項目 | 武豊騎手(函館芝1200m) | 特徴 |
|---|---|---|
| 勝率 | 約 20.0% ~ 23.6% | 5回に1回は勝利。人気薄でも頭で来る。 |
| 複勝率 | 40% ~ 55% | 2回に1回は馬券圏内。軸としての信頼度も抜群。 |
| 単勝回収率 | 120% ~ 150%超 | 過剰人気しにくく、妙味が非常に高い。 |
データを見ても単勝回収率が100%を大きく超えている期間が多く、これは「世間の評価以上に勝たせている」証拠です。特に内枠に入った武豊騎手は、黙って買いの一手です。武豊騎手についてはこちらの記事武豊騎手 騎乗停止 なぜ?2025年斜行とスマホの真相で詳しく解説していますので参考にして下さい。
【積極策の申し子】横山武史騎手
近年の函館リーディング争いの常連であり、このコースで最も「勝つ確率が高い」のが横山武史騎手です。
彼の最大の武器は、迷いのない「積極性(ポジショニング)」にあります。スタート直後の上り坂で他馬が躊躇する中、彼はガシガシと馬を押して、強引にでも好位を取りに行きます。函館芝1200mが「先行有利」である以上、このスタイルは理にかなっており、結果として複勝率(3着内率)は脅威の50%オーバーを記録し続けています。
YUKINOSUKEの攻略メモ
横山武史騎手が「逃げ・先行馬」に乗った時は、逆らわないのが賢明です。多少強引なペースでも、馬を持たせて粘り込ませる腕力は現役屈指。特に1番人気~3番人気の上位人気馬に騎乗した時の信頼感は盤石です。
【若き穴メーカー】佐々木大輔騎手
「人気薄だけど、この馬3着に来ないかな…」
そんな穴党の淡い期待を現実にしてくれるのが、若手のホープ・佐々木大輔騎手です。デビューから短期間で函館2歳ステークス(G3)を制するなど、このコースとの相性は抜群です。
彼の特徴は、若手らしからぬ「腹の据わった騎乗」です。減量特典を活かして積極的にハナを奪ったり、インでじっと脚を溜めて一瞬の隙を突いたりと、人気薄の馬を馬券圏内に持ってくるケースが多々あります。単勝回収率はムラがありますが、複勝率や期待値の面ではベテラン勢を凌駕するポテンシャルを秘めており、高配当を狙うなら彼の騎乗馬は外せません。
【安定感の仕事人】鮫島克駿騎手
最後に紹介するのは、派手さはなくとも確実に仕事をする鮫島克駿騎手です。
彼は「馬の能力を邪魔しない」騎乗に定評があります。無理なコース取りや博打のような騎乗をせず、馬のリズムを守ってスムーズに直線を向く技術が高いため、力のある馬に乗った時の取りこぼしが非常に少ないのが特徴です。
- 軸馬選びに最適:大崩れが少ないため、3連複やワイドの軸として信頼できます。
- 人気馬での安定感:変な穴馬を持ってくるというよりは、人気馬をしっかり馬券圏内に残す「計算できる騎手」です。
函館芝1200mは、一瞬の判断ミスが命取りになるコースです。だからこそ、コースの形状とバイアスを身体で覚えているこれらの騎手を重視することで、運の要素を減らし、的中に近づくことができるのです。
トラックバイアスを学ぶおすすめの本
ここまで函館芝1200mの傾向を、コース形状、血統、騎手といった様々な角度から解説してきました。しかし、これらはあくまで「過去の傾向」であり、実際の競馬は生き物です。毎週のように変化する馬場状態(トラックバイアス)や、天候によるコンディションの変化をリアルタイムで読み解く力がなければ、勝ち続けることは難しいでしょう。
特に函館のような特殊なコースでは、「なんとなく」の感覚予想は通用しません。そこで、私が普段からバイブルとして愛読しており、皆さんの予想レベルを底上げしてくれること間違いなしの「おすすめ書籍」を3冊紹介します。これらを読むことで、私がこの記事で語った内容の「根拠」がより深く理解できるはずです。
1. 『勝ち馬がわかる 血統の教科書2.0』(亀谷敬正 著)
血統予想の第一人者である亀谷敬正氏の著書です。私がこの記事で解説した「洋芝適性」や「欧州型血統の重要性」といった概念は、この本がベースになっていると言っても過言ではありません。
この本の素晴らしい点は、血統を単なる「記号」としてではなく、「能力の方向性(適性)」を示す地図として解説しているところです。例えば、「なぜサンデーサイレンス系は高速馬場に強いのか」「なぜロベルト系やサドラーズウェルズ系はタフな洋芝で浮上するのか」といった疑問に対し、物理的かつ論理的な答えを提示してくれます。
函館攻略への活用法
本書を読めば、函館芝1200mで「モーリス産駒」や「ビッグアーサー産駒」がなぜ強いのか、そのメカニズムが明確になります。単に種牡馬名を暗記するのではなく、「こういう馬場ならこの系統が走るはずだ」という応用力が身につくため、重馬場や開催後半の荒れた馬場で、思わぬ穴馬を見つけ出す力が養われます。
2. 『有利な馬がすぐわかる 競馬場コース事典』(馬ノスケ 著)
コース解説のスペシャリスト、馬ノスケ氏による一冊です。この本の最大の特徴は、全101コースを「立体的な視点」で解説している点にあります。
記事の前半で「函館はスタート直後から上り坂」「3コーナーから下り坂」といった高低差の話をしましたが、文字情報だけではイメージしづらい部分もあるかと思います。この本では、詳細なコース断面図やコーナーの角度などが視覚的に分かりやすく図解されており、「なぜここでペースが落ちるのか」「なぜここで加速するのか」が直感的に理解できます。
ここがポイント!
函館特有の「スパイラルカーブ」と「短い直線」の関係性も、図解を見ることで一目瞭然です。「逃げ馬が止まらない物理的な理由」が腹落ちすれば、迷いなく逃げ馬の馬券を買えるようになるはずです。コースの物理法則を味方につけるための必読書です。
3. 『Track Bias トラックバイアス 競馬の教科書』(玉嶋亮 著)
最後におすすめするのは、馬場状態(トラックバイアス)の読み方に特化した専門書です。「内枠有利」「外枠有利」「逃げ有利」「差し有利」といったバイアスが、なぜ発生するのか、そしてどうやってそれを見抜くのかが体系的にまとめられています。
函館開催は6週間という短い期間ですが、その間にも「開幕週の高速馬場」から「開催後半のタフな馬場」へと、馬場状態は劇的に変化します。また、エアレーション作業や天候の影響で、週ごとに有利な進路(トラックバイアス)が変わることも珍しくありません。
この本では、馬場造園課の作業内容や、路盤の状態が競走馬に与える影響まで深く掘り下げられています。これを読めば、「先週は内が伸びたから今週も内枠を買おう」という安易な思考から脱却し、「今の馬場状態なら、外枠の差し馬が届くはずだ」といった、一歩先を行く予想要素を取り入れることができるようになります。
| 書籍名 | 学べる主な要素 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 血統の教科書2.0 | 血統ごとの適性・能力の方向性 | 「洋芝適性」や「重馬場」の正体を知りたい人 |
| 競馬場コース事典 | コース形状・物理的バイアス | コース図を見ながら展開予想を組み立てたい人 |
| トラックバイアス 競馬の教科書 | 馬場状態の変化・読み解き方 | 当日の馬場傾向をいち早く掴んで勝ちたい人 |
競馬予想は、情報戦です。これらの本で基礎知識(武器)を手に入れておくと、週末の予想が単なるギャンブルから、根拠のある「投資」へと変わっていきます。ぜひ手に取って、函館芝1200m攻略の糧にしてください。
函館芝1200m傾向のまとめ
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。ここまでの内容を、週末の予想の直前にパッと確認できる「勝利への最終チェックリスト」として凝縮してまとめます。
函館芝1200mは、JRA全10場の中でも極めて特異な物理的特性を持つコースです。「洋芝の重さ」「高低差3.5mのアップダウン」「スパイラルカーブ」、そして「JRA最短の直線」。これらすべての要素が絡み合い、独特のバイアスを生み出しています。何となくの感覚で馬券を買うのではなく、以下の4つの鉄則を心に刻んで予想を組み立ててみてください。
【YUKINOSUKE式】函館芝1200m攻略・4つの鉄則
- 1. 「位置取り」が命運を分ける
直線262mという物理的制約の前では、どんな豪脚も届きません。4コーナーを回った時点で「5番手以内」にいなければ、勝負権はないと思ってください。予想の第一歩は、能力比較よりも先に「逃げ・先行馬の特定」から始めるのが正解です。 - 2. 「内枠信仰」を捨て、「枠の並び」を見る
「内枠=有利」は真実ですが、「内枠=絶対買い」ではありません。出足の鈍い馬が内に入ると、包まれて終了する「死に枠」になり得ます。最も安全度が高いのは「中枠(4~6枠)からスムーズに先行できる馬」か、「ロケットスタートを切れる内枠の逃げ馬」です。 - 3. 「洋芝適性」はパワーと種牡馬で判断
高速馬場の時計勝負に強いタイプよりも、少し時計がかかる馬場でしぶとさを発揮するタイプを重視しましょう。モーリスやビッグアーサー産駒は、このコースの最適解です。雨が降って重馬場になれば、ダート血統や欧州血統の出番。迷わず「パワー型」へシフトしてください。 - 4. 迷ったら「函館マイスター」に乗れ
コースの形状を熟知し、一瞬の判断で勝機を掴める騎手は限られています。イン突きの武豊騎手、積極策の横山武史騎手、穴をあける佐々木大輔騎手。彼らが乗っているというだけで、その馬の期待値は数割増しになります。
函館競馬は、たった6週間という短い開催ですが、その中にも「開幕週のスピード馬場」から「開催後半のタフな馬場」へとドラマチックな変化があります。
常に「洋芝」「短い直線」「高低差」という3つのキーワードを頭の片隅に置き、その週の馬場状態(トラックバイアス)に合わせて柔軟に狙い馬を変えていくこと。これこそが、夏の北海道シリーズを勝ち抜くための唯一の攻略法です。
この記事が、皆さんの週末の予想に少しでも役立ち、爽快な的中のお手伝いができることを願っています。ぜひ、函館ならではの熱いレースを楽しんでくださいね!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
※本記事のデータや見解は筆者独自の調査に基づくものです。馬券の購入は自己責任でお願いいたします。正確な情報はJRA公式サイト等をご確認ください。
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